独居高齢者の訪問看護支援
看護師国家試験 第103回 午前 第90問 / 地域・在宅看護論 / 在宅療養生活を支える看護
国試問題にチャレンジ
Aさん(85歳、女性)は、1人で暮らしており、高血圧症(hypertension)がある。物忘れがあり、要支援2の認定を受け、通所介護と訪問看護を利用している。Aさんの長女は他県に住んでいる。 Aさんの健康状態を維持するために訪問看護師が行う支援で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1.服薬管理の支援を行う。
- 2.水分の摂取状況を把握する。
- 3.入浴は控えるよう助言する。
- 4.Aさんの長女に同居を勧める。
- 5.1人で買い物に行かないように助言する。
対話形式の解説
博士
今日はAさんの事例じゃ。85歳女性、独居、高血圧症と物忘れあり、要支援2で通所介護と訪問看護を利用しておる。長女は他県在住じゃ。
アユム
博士、訪問看護師が健康維持のためにできる支援は何ですか?
博士
まず最優先は服薬管理じゃ。高血圧症で降圧薬を飲んでおるはずで、物忘れがあると飲み忘れや重複服薬のリスクが高い。一包化、服薬カレンダー、訪問時の残薬確認が基本じゃな。
アユム
選択肢1は正解ですね。次に2番の水分摂取状況の把握は?
博士
これも正解じゃ。高齢者は口渇感が鈍くなり脱水しやすい。脱水は血液濃縮で血圧変動や脳梗塞、熱中症のリスクを高める。一方で過剰摂取は心不全を招くから、適切な量の把握が大切なんじゃ。
アユム
目安はどのくらいですか?
博士
食事以外で1日1000〜1500mLが目安、夏は特に注意じゃ。
アユム
3番の入浴を控えるよう助言は?
博士
これは不適切じゃ。要支援2でADLは保たれておる。血圧異常の情報もない。むしろ安全な入浴方法、湯温やかけ湯、家族や事業者との連携での見守りを支援するのが正解じゃな。
アユム
4番の長女に同居を勧めるは?
博士
同居の判断は家族の生活全体を踏まえるもので、現在通所介護と訪問看護で支援が機能しておる段階で訪問看護師が一方的に勧めるのは越権じゃ。必要なら地域包括支援センターのケアマネジャーと連携することじゃな。
アユム
5番の1人で買い物に行かないようにというのは?
博士
これも不適切じゃ。Aさんの自立と自己決定を尊重すべきで、買い物制限はQOL低下や活動量低下、認知機能低下の悪循環を生む。むしろ安全に買い物が続けられるよう支援するのが訪問看護じゃ。
アユム
制限ではなく自立支援が原則なんですね。
博士
その通りじゃ。在宅看護の本質は「できることを奪わず、リスクを最小化する」こと。本人のストレングスを活かす視点が大切じゃ。
POINT
独居・物忘れのある高齢者では、服薬管理支援と水分摂取状況の把握が健康維持の最優先課題です。要支援2でADLが保たれている段階で入浴や買い物を一律に制限するのは不適切で、自立とQOLを尊重した支援が原則です。家族の同居勧奨は訪問看護師の役割を超えるため、地域包括支援センターと連携した検討が望まれます。
解答・解説
正解は 1 ・ 2 です
問題文:Aさん(85歳、女性)は、1人で暮らしており、高血圧症(hypertension)がある。物忘れがあり、要支援2の認定を受け、通所介護と訪問看護を利用している。Aさんの長女は他県に住んでいる。 Aさんの健康状態を維持するために訪問看護師が行う支援で適切なのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 1 と 2 です。Aさんは独居・高齢・高血圧・物忘れありという状況で、訪問看護師は健康状態の維持を目的に在宅生活を支える役割を担います。物忘れがあるため降圧薬の飲み忘れ・誤薬を防ぐ服薬管理支援と、高齢者の脱水予防・血圧コントロールに直結する水分摂取状況の把握は最優先課題です。
選択肢考察
-
○ 1. 服薬管理の支援を行う。
高血圧症で降圧薬を服用している可能性が高く、物忘れによる飲み忘れ・重複服薬を防ぐため一包化や服薬カレンダー等での支援が必要です。
-
○ 2. 水分の摂取状況を把握する。
高齢者は口渇感が低下しやすく脱水リスクが高い一方、過剰摂取は心負荷を増やすため、適切な水分管理が血圧と全身状態の維持に不可欠です。
-
× 3. 入浴は控えるよう助言する。
要支援2でADLは保たれており、血圧異常もない情報下で一律に入浴制限を勧めるのは不適切です。安全な入浴方法を支援するのが正解です。
-
× 4. Aさんの長女に同居を勧める。
同居の判断は家族の生活全体を踏まえて行うべきで、現在通所介護・訪問看護で支援が機能している段階で訪問看護師が一方的に勧めるのは不適切です。
-
× 5. 1人で買い物に行かないように助言する。
Aさんの自立や自己決定を尊重すべきで、買い物の制限は社会参加・QOLを低下させ、認知機能低下を加速させる懸念もあります。
在宅高齢者の支援では、本人の自立とQOLを最大限尊重しつつリスクを最小化することが原則です。服薬管理は一包化、お薬カレンダー、訪問時の残薬確認が有効。水分摂取は1日1000〜1500mLを目安に、夏期は特に注意。要支援2はIADLの一部に支援が必要なレベルで、地域包括支援センターによるケアマネジメントが行われます。
独居高齢者の在宅支援において、健康維持の優先課題(服薬・水分管理)と、過剰な生活制限・家族介入の不適切さを判断できるかを問う問題です。
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