看取り直後のグリーフケア
看護師国家試験 第110回 午後 第66問 / 地域・在宅看護論 / 在宅療養生活を支える看護
国試問題にチャレンジ
Aさん( 69歳、女性)は、主治医、訪問看護師とともに、母( 91歳)を自宅で看取った。死亡確認の直後、Aさんは涙ぐみながら「母のためにもっとできることがあったのではないかと申し訳なく思います」と話した。 このときに訪問看護師が行うAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
- 1.遺族の会を紹介する。
- 2.母への思いを傾聴する。
- 3.遺品を整理することを勧める。
- 4.新たなことに取りかかるよう促す。
対話形式の解説
博士
Aさんはお母様を看取った直後、『もっとできることがあった』と話しておる。
アユム
とても辛い場面ですね。どう声をかけたらよいでしょうか。
博士
悲嘆反応の急性期じゃ。まず何を優先する?
アユム
傾聴でしょうか。
博士
正解じゃよ。Wordenの悲嘆4課題、第1・第2課題の時期じゃ。
アユム
第1は喪失の事実の受容、第2は悲嘆の苦痛を味わうですね。
博士
そうじゃ、感情を抑え込ませてはいかんぞい。
アユム
遺族の会の紹介はどうですか。
博士
有用じゃが今ではない、四十九日以降が目安じゃ。
アユム
遺品整理は?
博士
本人のペースで、悲嘆が落ち着いてからじゃな。
アユム
新しいことを勧めるのは?
博士
第4課題の時期で、いまは早すぎるぞ。
アユム
沈黙も大事だと聞きました。
博士
無理に言葉を埋めず、共に居る姿勢が力になるのじゃ。
アユム
自責感を否定しないことも重要ですね。
博士
そう、『十分頑張られましたね』という共感的言葉も適切じゃ。
POINT
本問は看取り直後のグリーフケアの原則を問います。急性悲嘆期では遺族は自責感や後悔、混乱を抱えており、感情の表出と傾聴・共感が最優先されます。Wordenの悲嘆4課題の第1・2段階にあたり、遺族の会紹介や遺品整理、新しい活動への誘いは後の段階で時期を見て行うべき介入です。看護師は沈黙も含めて『共に居る』姿勢で寄り添い、遺族が自分のペースで悲嘆作業を進められるよう支援します。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:Aさん( 69歳、女性)は、主治医、訪問看護師とともに、母( 91歳)を自宅で看取った。死亡確認の直後、Aさんは涙ぐみながら「母のためにもっとできることがあったのではないかと申し訳なく思います」と話した。 このときに訪問看護師が行うAさんへの対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。死亡確認直後は悲嘆反応の急性期で、遺族は強い喪失感・自責感・混乱状態にあります。この時期のグリーフケアは助言や行動促進ではなく、遺族の思いに寄り添い傾聴することが最優先です。感情を表出させることが悲嘆作業(グリーフワーク)の第一段階となります。
選択肢考察
-
× 1. 遺族の会を紹介する。
遺族の会(セルフヘルプグループ)は有用な社会資源ですが、看取り直後はまだ現実を受け止める段階で、情報提供の優先度は低いです。時期を見て紹介することが適切です。
-
○ 2. 母への思いを傾聴する。
感情の表出を受け止め傾聴することは、急性悲嘆期における最も基本的で重要な看護介入です。自責感や後悔を否定せず寄り添うことで悲嘆作業が進みます。
-
× 3. 遺品を整理することを勧める。
遺品整理は故人との別れを受容していくプロセスの一部ですが、看取り直後の段階で勧めるのは早すぎます。悲嘆が落ち着いてから本人のペースで進めるべきです。
-
× 4. 新たなことに取りかかるよう促す。
悲嘆を抑え込み新しい活動を強いることは、感情処理の機会を奪い複雑性悲嘆を招く恐れがあります。再適応の時期は遺族自身が決めるものです。
Wordenの悲嘆の4課題では、(1)喪失の事実の受容(2)悲嘆の苦痛を味わう(3)故人のいない環境への適応(4)新たな人生への再投資、が示されています。死亡直後は課題1・2の段階であり、傾聴・共感・沈黙の共有が中心となります。遺族の会の紹介は通常四十九日以降が目安です。
急性悲嘆期の遺族に対するグリーフケアの原則(傾聴と共感が最優先)を理解しているかを問う問題です。
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