人工呼吸器装着者の災害対策、何を備える?
看護師国家試験 第111回 午前 第70問 / 地域・在宅看護論 / 地域・在宅看護における安全と健康危機管理
国試問題にチャレンジ
気管切開下で人工呼吸器を装着している利用者に対して、訪問看護事業所が災害に備えて行うことで適切なのはどれか。
- 1.人工呼吸器の予備の回路を預かる。
- 2.災害時の個別支援マニュアルを作成する。
- 3.医療機関から非常用の人工呼吸器を借りる。
- 4.事業所内に利用者が避難できる場所を確保する。
対話形式の解説
博士
今日は在宅人工呼吸器装着者への訪問看護事業所の災害対策について学ぶぞ。
アユム
博士、人工呼吸器装着者は災害時に特別な対策が必要ですよね。
博士
その通りじゃ。電源喪失や医療機器故障が直接生命リスクに直結するから、最も綿密な対策が必要な「要配慮者」じゃ。
アユム
選択肢1の「予備の回路を預かる」は?
博士
予備回路は緊急時に即交換できるよう利用者宅のベッドサイドに置くべきじゃ。事業所で預かると必要時に使えないのう。
アユム
選択肢2の「災害時の個別支援マニュアルを作成する」は?
博士
これが正解じゃ。個別マニュアルには連絡網、停電時のバッテリー運用手順、アンビューバッグ使用、避難経路、搬送先医療機関、電源確保方法、家族の役割分担、備蓄物品リストなどを具体的に記載する。
アユム
災害対策基本法との関係は?
博士
2021年の改正で市町村に「個別避難計画」策定が努力義務化されてな、訪問看護事業所もこれに参画するのが現代の在宅看護じゃ。
アユム
選択肢3の「医療機関から非常用人工呼吸器を借りる」は?
博士
非常用呼吸器はメーカー貸与品や内蔵・外部バッテリーで対応するのが基本。事業所が医療機関から借りる運用は現実的でないな。
アユム
選択肢4の「事業所内に避難場所を確保」は?
博士
事業所は診療機能や電源が十分でないから災害時の避難場所にはならん。指定福祉避難所や医療機関への避難が適切じゃ。
アユム
電源確保はどうしますか?
博士
3重対策が基本じゃ。内蔵バッテリー→外部バッテリー→自家発電機、それと自動車のシガーソケットも非常電源に使えるぞ。
アユム
手動換気具の備えも重要ですか?
博士
うむ、アンビューバッグ(バッグバルブマスク)は必須じゃ。家族への使用訓練も事前に行っておくべきじゃ。
アユム
東日本大震災では何が課題になりましたか?
博士
在宅人工呼吸器装着者の停電対応じゃ。バッテリー切れで生命危機に至った事例があり、以後の対策強化につながったんじゃ。
アユム
メーカーとの連携も大事ですね。
博士
その通り。人工呼吸器メーカーは停電時の緊急連絡窓口や予備機貸出の体制を整備しておる。個別マニュアルにこれらの連絡先を明記しておくことが鍵じゃ。
アユム
訪問看護師の役割は?
博士
平常時から避難訓練を家族と行い、関係機関と連携した個別避難計画を作成・更新することじゃ。災害は起きてからでは遅いからのう。
POINT
人工呼吸器装着者の災害対策では「個別支援マニュアル」の作成が最重要で、連絡網・電源確保・避難経路・搬送先などを具体化します。予備回路は利用者宅に常備し、事業所は避難場所にならず、非常用呼吸器はメーカー経由で確保するのが原則です。災害対策基本法に基づく個別避難計画と連動し、電源3重対策とアンビューバッグ訓練を平常時から準備することが訪問看護事業所の責務です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:気管切開下で人工呼吸器を装着している利用者に対して、訪問看護事業所が災害に備えて行うことで適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。人工呼吸器装着者は災害時に電源喪失や医療機器故障で生命リスクが直結するため、「災害時の個別支援マニュアル」を事業所・利用者・家族・関係機関で共有することが最重要です。個別マニュアルには、発災時の連絡網、停電時のバッテリー運用手順、アンビューバッグ使用、避難経路、搬送先医療機関、電源確保方法(非常用電源・発電機)、家族の役割分担、備蓄物品リストなどを具体的に記載します。災害対策基本法に基づく「避難行動要支援者名簿」への登録や「個別避難計画」策定も連動します。
選択肢考察
-
× 1. 人工呼吸器の予備の回路を預かる。
予備の回路は緊急時に即交換できるよう利用者宅のベッドサイドに置くべきで、事業所で預かると必要時に使えません。
-
○ 2. 災害時の個別支援マニュアルを作成する。
個別マニュアルは連絡網・停電時対応・避難経路・搬送先・電源確保などを具体化でき、災害時の迅速な対応の基盤となります。
-
× 3. 医療機関から非常用の人工呼吸器を借りる。
非常用人工呼吸器は通常メーカー貸与品や内蔵バッテリー・外部バッテリーで対応します。事業所が医療機関から借りる運用は現実的でありません。
-
× 4. 事業所内に利用者が避難できる場所を確保する。
事業所は診療機能や電源が十分ではなく、災害時に利用者の避難場所として機能しません。指定福祉避難所や医療機関への避難が適切です。
人工呼吸器装着者の災害対策3本柱:(1)電源確保(内蔵バッテリー+外部バッテリー+自家発電機+自動車のシガーソケット)、(2)手動換気具(アンビューバッグ)の常備と家族訓練、(3)個別避難計画による医療機関搬送体制。災害対策基本法改正(2021年)で市町村に個別避難計画策定が努力義務化され、訪問看護事業所はこれに参画します。人工呼吸器メーカーは停電時緊急連絡・予備機貸出の体制を整備しています。東日本大震災では在宅人工呼吸器装着者の停電対応が課題となりました。
災害弱者である人工呼吸器装着利用者への事業所としての備えを、実効性ある対策の観点から判断できるかを問う問題です。
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