医療的ケア児の母親へのレスパイト支援
看護師国家試験 第103回 午後 第117問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(2歳4か月、女児)は、母と会社員の父と3人で暮らしている。Aちゃんは、脳性麻痺で寝たきりのため全介助で在宅療養をしていた。3か月前に、誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)を発症して緊急入院し、気管切開をして人工呼吸器を装着した。現在、呼吸状態は安定しているが、啼泣時に気道閉塞があるため、夜間のみ人工呼吸器で呼吸管理を継続することになった。Aちゃんは自宅に戻って訪問看護を利用する予定である。身体障害者手帳(肢体不自由1級)を所持している。 Aちゃんの母親から「家で育てることがこんなに大変だとは思わなかった。疲れました」と訪問の際に訴えがあった。 Aちゃんの母親の話を聞いた後の訪問看護師の対応として最も適切なのはどれか。
- 1.「すぐに入院ができる病院を探します」
- 2.「お母さんが頑張らないと駄目ですよ」
- 3.「お父さんに休職してもらいましょうか」
- 4.「ヘルパーさんに来てもらうことを検討しましょうか」
対話形式の解説
博士
退院後Aちゃんの母親が『家で育てることがこんなに大変だとは思わなかった、疲れた』と訴えておる。
サクラ
24時間介護で母親が疲弊しているんですね。
博士
そう、医療的ケア児の家族には心身の疲労が蓄積しやすいんじゃ。
サクラ
看護師の対応として最適なのは。
博士
正解は4の『ヘルパーさんに来てもらうことを検討しましょうか』じゃ。
サクラ
社会資源で母親の負担を減らす提案ですね。
博士
そうじゃ。居宅介護は障害者総合支援法に基づき医療的ケア児にも利用できる。『検討しましょうか』という提案型の言い回しも、母親の意思を尊重しておって良い点じゃ。
サクラ
1のすぐに入院できる病院を探すのは。
博士
Aちゃんの病状悪化はない段階じゃし、母親の疲労に対する応答としては筋違いじゃ。
サクラ
2のお母さんが頑張らないと駄目ですよ、は。
博士
これは追い詰める発言じゃ。信頼関係を壊し、育児ノイローゼや虐待リスクを高めかねん。
サクラ
3のお父さんに休職してもらうのは。
博士
家族の就労に看護師が踏み込むのは越権じゃし、収入面の不安をかえって増す可能性がある。
サクラ
レスパイト目的の社会資源は他にもありますか。
博士
ショートステイ、日中一時支援、訪問看護の増回、ピアサポート紹介など多様じゃ。家族のSOSを早期に拾い、地域全体で支える発想が大切じゃよ。
POINT
医療的ケア児の母親が疲労を訴えた時は、傾聴のうえで具体的なレスパイト資源(居宅介護・ショートステイなど)の活用を提案することが看護師の中核的役割。安易な入院や精神論、家族の就労への介入は不適切である。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(2歳4か月、女児)は、母と会社員の父と3人で暮らしている。Aちゃんは、脳性麻痺で寝たきりのため全介助で在宅療養をしていた。3か月前に、誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)を発症して緊急入院し、気管切開をして人工呼吸器を装着した。現在、呼吸状態は安定しているが、啼泣時に気道閉塞があるため、夜間のみ人工呼吸器で呼吸管理を継続することになった。Aちゃんは自宅に戻って訪問看護を利用する予定である。身体障害者手帳(肢体不自由1級)を所持している。 Aちゃんの母親から「家で育てることがこんなに大変だとは思わなかった。疲れました」と訪問の際に訴えがあった。 Aちゃんの母親の話を聞いた後の訪問看護師の対応として最も適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。重症心身障害児や医療的ケア児の在宅介護では、母親が24時間体制で介護を担うことが多く、身体的・精神的疲労が蓄積しやすい状況にあります。母親が『疲れた』と訴えた時は、傾聴したうえで具体的にレスパイトとなる社会資源の活用を一緒に検討することが重要です。居宅介護(ヘルパー)は障害者総合支援法に基づき、医療的ケア児を含む障害児にも利用可能で、母親の負担軽減に直接寄与します。『検討しましょうか』という提案型の言い回しは本人の意思を尊重する点でも適切です。
選択肢考察
-
× 1. 「すぐに入院ができる病院を探します」
Aちゃんの病状悪化は記載がなく、安易な再入院は本人・家族双方の負担となり、母親の訴えに対する応答としても不適切です。
-
× 2. 「お母さんが頑張らないと駄目ですよ」
母親をさらに追い詰める発言で、信頼関係を損ない、虐待や育児ノイローゼのリスクを高めます。
-
× 3. 「お父さんに休職してもらいましょうか」
家族の就労に看護師が踏み込むのは越権で、収入面の不安をかえって増す可能性もあります。
-
○ 4. 「ヘルパーさんに来てもらうことを検討しましょうか」
社会資源を活用して具体的に介護負担を軽減する提案であり、母親の意思も尊重した適切な対応です。
医療的ケア児の家族支援では、レスパイト目的のショートステイ、居宅介護、日中一時支援、訪問看護の頻度増加、ピアサポートグループ紹介など複数の選択肢があります。家族のSOSは早期に拾い、地域のあらゆる資源で多面的に支えることが在宅生活継続の鍵です。
医療的ケア児の介護で疲弊した母親への支援として、具体的な社会資源活用を提案する看護対応を問うています。
「状況設定問題」の関連記事
-
片麻痺の高齢者が転びそうになった—訪問看護師が真っ先に確かめるのは「健側の力」
片麻痺で杖歩行する高齢者の在宅転倒予防において、最初に評価すべき身体機能を問う問題。健側の筋力が転倒回避の要…
114回
-
食べていない日こそ大切―在宅看取り期の口腔ケアという生命線
在宅で介護負担が大きい高齢夫婦に対し、誤嚥性肺炎予防の視点で「経口摂取がなくても口腔ケアは継続する」ことを家…
114回
-
「排泄だけは自立したい」—自尊心を守る尿失禁ケアの第一歩
自立心の強い在宅高齢者の尿失禁に対し、自立を維持できる行動療法的アプローチを選ぶ問題。本人の希望を尊重した支…
114回
-
在宅看取りという選択を支える―訪問看護師が家族に最初に伝えるべきこと
在宅看取りの意思決定支援において、訪問看護師が最初に提供すべき情報は「家族が安心して在宅看取りを選択できる支…
114回
-
退院3か月後の便秘—薬より先に整えるべきは「食卓」
在宅高齢者の便秘に対する初期対応として、薬剤や浣腸ではなく生活習慣の見直しを優先するという原則を問う問題。
114回