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ALSの嚥下低下にどう向き合う?本人の意思を支える食事支援

看護師国家試験 第105回 午前 第114問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

105回 午前 第114問

次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(42歳、女性)は、2年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉(amyotrophic lateral sclerosis)の確定診断を受けた。夫(50歳)と長女(16歳)と自宅で過ごしている。Aさんは「なるべく口から食べるようにしたい」と話し、食事と併せて胃瘻から栄養剤の注入行っている。要介護2の認定を受け、訪問看護および訪問介護を利用している。食事の介助を行う夫から、訪問看護師に「介助の方法が良くないのか、妻はうまく飲み込めていません」と相談の電話があった。 夫に対する訪問看護師の対応として最も適切なのはどれか。

  1. 1.「食事の介助に時間をかけましょう」
  2. 2.「胃瘻からの栄養量を増やしましょう」
  3. 3.「介助方法に問題があるかもしれません」
  4. 4.「嚥下食の宅配サービスを頼んでみましょう」
  5. 5.「飲み込みの状態に応じた食事を一緒に考えましょう」

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは42歳女性でALS発症から2年。胃瘻を造設しつつも『なるべく口から食べたい』と話しているぞい。

アユム アユム

夫から『うまく飲み込めていない』と電話相談があった場面ですね。

博士 博士

どう対応するのが最適かの?

アユム アユム

5番の『飲み込みの状態に応じた食事を一緒に考えましょう』だと思います。

博士 博士

正解じゃ。ALSは運動ニューロン変性で球麻痺症状が進行し嚥下機能が徐々に低下する。介助方法の問題というより嚥下機能そのものが落ちている可能性が高いんじゃな。

アユム アユム

1の食事介助に時間をかけるのはなぜダメなんですか?

博士 博士

時間をかけても嚥下機能が落ちていれば誤嚥リスクは下がらん。むしろAさんが疲れてしまい誤嚥がさらに増える悪循環になる。まずは機能評価じゃ。

アユム アユム

2の胃瘻からの栄養量を増やすのは?

博士 博士

Aさんは『口から食べたい』という意思を明確に示しておるじゃろ。それを無視して胃瘻中心にするのは自己決定権の侵害になるぞい。

アユム アユム

3の『介助方法に問題があるかも』は、電話で言うのはまずいですね。

博士 博士

そうじゃ。実際の介助を見ていないのに否定する発言は、懸命に介護する夫を責めてしまう。共感的に情報を集めるのが第一歩じゃ。

アユム アユム

4の嚥下食の宅配はどうしてダメなんですか?

博士 博士

嚥下機能がどの程度か分からぬ段階で形態を決めるのは順序違い。本人や家族の希望も確認しておらん。まず評価、次に相談、それから手段選択の順じゃ。

アユム アユム

嚥下機能の評価方法はどんなものがありますか?

博士 博士

VF(嚥下造影)やVE(嚥下内視鏡)、反復唾液嚥下テストRSST、改訂水飲みテストMWSTなどがあるぞい。訪問看護でも簡易な評価は可能じゃ。

アユム アユム

食事形態はどう工夫するんですか?

博士 博士

ゼリー・ペースト・ミキサー食へと段階的に調整する。頸部前屈位で一口量を少なくし、食後は口腔ケアで誤嚥性肺炎を予防する。胃瘻と経口の併用でQOLと栄養を両立させるのが鍵じゃ。

アユム アユム

本人の『口から食べたい』という気持ちを大切にした支援ですね。

POINT

ALSは進行性の嚥下障害を来し、Aさんの『うまく飲み込めていない』は機能低下を示唆します。本人の『口から食べたい』意思を尊重しつつ嚥下機能を評価し、本人・家族と食事形態を共に検討する5が最適です。介助時間延長や胃瘻増量、介助否定、宅配依頼は評価と意思確認が伴わず不適切です。経口と胃瘻の併用でQOLと安全を両立させる視点が重要です。

解答・解説

正解は 5 です

問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(42歳、女性)は、2年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉(amyotrophic lateral sclerosis)の確定診断を受けた。夫(50歳)と長女(16歳)と自宅で過ごしている。Aさんは「なるべく口から食べるようにしたい」と話し、食事と併せて胃瘻から栄養剤の注入行っている。要介護2の認定を受け、訪問看護および訪問介護を利用している。食事の介助を行う夫から、訪問看護師に「介助の方法が良くないのか、妻はうまく飲み込めていません」と相談の電話があった。 夫に対する訪問看護師の対応として最も適切なのはどれか。

解説:正解は 5 です。ALSは球麻痺症状により嚥下機能が進行性に低下する疾患であり、『うまく飲み込めていない』という訴えは介助技術の問題よりも嚥下機能そのものの低下を示唆します。本人の『口から食べたい』という意思を尊重しつつ、嚥下機能評価に基づき本人・家族と共に食事形態を調整するのが看護のアプローチです。

選択肢考察

  1. × 1.  「食事の介助に時間をかけましょう」

    時間をかけても嚥下機能そのものが低下していれば誤嚥リスクは下がらず、むしろ疲労増大で嚥下がさらに悪化します。まず嚥下機能と食事形態の評価が必要です。

  2. × 2.  「胃瘻からの栄養量を増やしましょう」

    Aさんは『なるべく口から食べたい』という明確な意思を示しており、本人の意向を無視して胃瘻栄養に切り替えるのはQOL低下と自己決定権の侵害になります。

  3. × 3.  「介助方法に問題があるかもしれません」

    実際の介助場面を見ていない電話相談で介助方法を否定する発言は、懸命に介護している夫を責める形になり介護意欲を損ないます。まずは共感的に情報収集すべきです。

  4. × 4.  「嚥下食の宅配サービスを頼んでみましょう」

    嚥下機能の評価が先であり、どの程度の嚥下食が適切かも不明な段階で宅配サービスを提案するのは順序が違います。本人や家族の希望も確認されていません。

  5. 5.  「飲み込みの状態に応じた食事を一緒に考えましょう」

    ALSの進行を踏まえ、嚥下機能を評価した上で本人・家族の希望に沿って食事形態を共に検討する姿勢は、自己決定の尊重と安全確保を両立する最も適切な対応です。

ALSの嚥下障害にはVF(嚥下造影)やVE(嚥下内視鏡)、反復唾液嚥下テスト(RSST)、改訂水飲みテスト(MWST)などで評価します。食事形態はゼリー・ペースト・ミキサー食などへ段階的に調整し、誤嚥性肺炎予防のため頸部前屈位・一口量の調整・食後の口腔ケアも重要です。経口摂取と胃瘻の併用は本人のQOLを支える選択肢となります。

ALS患者の進行性嚥下障害に対して、本人の意思を尊重しつつ多職種で食事形態を調整する看護の基本姿勢を問う問題です。