家族の睡眠も守る!在宅人工呼吸療養の排痰ケア
看護師国家試験 第105回 午前 第115問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(42歳、女性)は、2年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉(amyotrophic lateral sclerosis)の確定診断を受けた。夫(50歳)と長女(16歳)と自宅で過ごしている。Aさんは「なるべく口から食べるようにしたい」と話し、食事と併せて胃瘻から栄養剤の注入行っている。要介護2の認定を受け、訪問看護および訪問介護を利用している。食事の介助を行う夫から、訪問看護師に「介助の方法が良くないのか、妻はうまく飲み込めていません」と相談の電話があった。 6か月後、Aさんは呼吸障害と嚥下障害とが進行し、気管切開による人工呼吸療法を開始するために入院した。 退院に向けて病棟看護師が行う家族への気管内吸引の説明として最も適切なのはどれか。
- 1.夜間に定期的な吸引を行う。
- 2.就寝前に体位ドレナージを行う。
- 3.気道内圧が低下したら吸引する。
- 4.吸引時は気管カニューレのカフ圧を上げる。
対話形式の解説
博士
Aさんは6か月でALSが進行し、気管切開下人工呼吸療法を導入して退院に向かうところじゃ。
サクラ
家族が気管内吸引をできるように指導が必要ですね。
博士
選択肢の中で最も適切な説明はどれかの?
サクラ
2の就寝前の体位ドレナージだと思います。
博士
正解じゃ。就寝前に体位を工夫して分泌物を中枢側の太い気管へ移動させ吸引しておけば、夜間の痰貯留と吸引回数を減らせるぞい。
サクラ
本人だけでなく家族の睡眠確保も大切なんですね。
博士
そうじゃ。在宅人工呼吸療法(HMV)は家族の介護負担軽減が療養継続の鍵になる。夜間に眠れない家族はバーンアウトしやすい。
サクラ
1の夜間定期吸引はどうしてダメなんですか?
博士
気管内吸引は必要時実施が原則じゃ。定期的に起こして吸引すると家族と本人の睡眠を奪い介護負担が膨らむ。痰貯留のサインを捉えて実施するのが基本じゃな。
サクラ
3の『気道内圧が低下したら吸引』は?
博士
逆じゃ。痰が溜まると気道抵抗が増えて気道内圧は『上昇』する。人工呼吸器の気道内圧上昇アラームは吸引のサインじゃ。低下ではなく上昇で判断するのがポイントじゃぞい。
サクラ
4のカフ圧を吸引時に上げるのは?
博士
カフ圧は通常20〜30cmH2Oに調整し、吸引で上げる必要はない。過剰なカフ圧は気管粘膜壊死や気管狭窄、さらには気管食道瘻の原因にもなる。定期確認が大事じゃ。
サクラ
他にも排痰を助ける方法はあるんですか?
博士
スクイージング、加湿、ネブライザー、排痰補助装置(カフアシスト/機械的咳介助装置MI-E)などを組み合わせると吸引頻度を減らせる。ALSでは咳嗽力が低下するからMI-Eは特に有用じゃ。
サクラ
吸引のサインも家族に伝えておくんですね。
博士
呼吸数増加、SpO2低下、ゴロ音、気道内圧アラーム、表情や苦悶などじゃな。客観的指標と主観的観察を組み合わせて判断するよう指導するとよい。
サクラ
家族の負担も考えた説明が大切ですね。
POINT
在宅人工呼吸療法では家族の睡眠確保と介護負担軽減が療養継続の鍵です。就寝前の体位ドレナージで排痰しておくと夜間吸引を減らせ、正解は2となります。吸引は必要時実施が原則で気道内圧『上昇』がサインです。カフ圧は20〜30cmH2Oで吸引時に上げる必要はなく、排痰補助装置などの活用も併せて指導します。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(42歳、女性)は、2年前に筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉(amyotrophic lateral sclerosis)の確定診断を受けた。夫(50歳)と長女(16歳)と自宅で過ごしている。Aさんは「なるべく口から食べるようにしたい」と話し、食事と併せて胃瘻から栄養剤の注入行っている。要介護2の認定を受け、訪問看護および訪問介護を利用している。食事の介助を行う夫から、訪問看護師に「介助の方法が良くないのか、妻はうまく飲み込めていません」と相談の電話があった。 6か月後、Aさんは呼吸障害と嚥下障害とが進行し、気管切開による人工呼吸療法を開始するために入院した。 退院に向けて病棟看護師が行う家族への気管内吸引の説明として最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。気管内吸引は痰貯留による換気障害や感染予防のため必要時に実施する手技ですが、家族の睡眠確保の観点から就寝前に体位ドレナージを行い分泌物を排出させておくことで夜間の吸引回数を減らせます。吸引は必要時実施が原則で、定期的な予定吸引はルーチンでは行いません。
選択肢考察
-
× 1. 夜間に定期的な吸引を行う。
気管内吸引は必要時実施が原則で、定期的な夜間吸引は本人と家族の睡眠を妨げ介護負担を増大させます。痰貯留のサインを捉えて実施するのが基本です。
-
○ 2. 就寝前に体位ドレナージを行う。
就寝前に体位ドレナージで気道分泌物を中枢側へ移動させ吸引しておくことで、夜間の痰貯留と吸引回数を減らせます。本人と家族の睡眠確保に有効で在宅療養の質を高めます。
-
× 3. 気道内圧が低下したら吸引する。
痰が貯留すると気道抵抗が増し気道内圧は『上昇』します。人工呼吸器の気道内圧上昇アラームは吸引のサインで、低下ではなく上昇で判断します。
-
× 4. 吸引時は気管カニューレのカフ圧を上げる。
カフ圧は通常20〜30cmH2O程度に調整し、吸引時に上げる必要はありません。過剰なカフ圧は気管粘膜の壊死や気管狭窄を招きます。
在宅人工呼吸療法(HMV)では家族の介護負担軽減が療養継続の鍵となります。体位ドレナージやスクイージング、加湿の工夫、ネブライザー、排痰補助装置(カフアシスト)などを組み合わせて痰を効率的に排出し、吸引回数を減らす工夫が重要です。カフ圧は24〜30cmH2O程度が目安で、定期的な確認と加湿管理がケアのポイントです。
在宅人工呼吸療法における家族への気管内吸引指導と、排痰ケア・介護負担軽減の考え方を問う問題です。
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