在宅酸素療法の安全指導を整理する
看護師国家試験 第108回 午前 第114問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(75歳、女性)は、夫とは3年前に死別し、1人暮らし。喫煙歴があり、5年前に慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)と診断された。長女は隣県に住んでおり、時々様子を見に来ている。Aさんは受診を継続しながら、ほぼ自立して生活していた。今回、咳・痰の症状に加え呼吸困難が増強したため入院となった。入院後は酸素療法(鼻カニューレ:2L/分)と薬物療法を受け、症状が改善し、在宅酸素療法を導入し退院することになった。Aさんは初めて要介護認定を受けたところ、要支援2であった。 病棟看護師がAさんに行う在宅酸素療法に関する指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1.電磁調理器の使用を勧める。
- 2.外出時にデマンドバルブの作動を確認する。
- 3.在宅酸素療法の機材が介護保険で給付される。
- 4.酸素濃縮器は日当たりのよいところに設置する。
- 5.呼吸困難時にAさんの判断で酸素流量を変更してよい。
対話形式の解説
博士
Aさんは75歳のCOPD患者で、2L/分の在宅酸素療法を導入して退院する。1人暮らしで家事も自分で行う予定じゃ。指導のポイントをどう整理するかのう
アユム
まず火の扱いが気になります
博士
その通り。酸素は燃えないが支燃性があり、近くに裸火があると爆発的に燃える。ガスコンロは特に危険じゃから、IHなど電磁調理器を勧めるのが定番じゃ
アユム
線香や仏壇のろうそくもダメなんですか?
博士
そうじゃ。裸火は2m以内に近づけないのが原則じゃ。喫煙は厳禁、ライターも使わせない
アユム
デマンドバルブって何ですか?
博士
呼吸同調式レギュレータのことじゃ。吸気時にのみ酸素を流す仕組みで、持続流と比べてボンベ使用時間が2〜3倍に延長できる。外出には欠かせない機器じゃ
アユム
だから外出前に作動確認が必要なんですね
博士
その通り。作動不良のまま外出すると低酸素になる危険がある。音や振動、吸気同期の確認は必須じゃ
アユム
選択肢3の介護保険給付はどうですか?
博士
違うんじゃ。HOTは医療保険の適用で、酸素濃縮器や携帯ボンベは医師指示のもと医療機器として提供される。介護保険の福祉用具貸与には含まれん
アユム
選択肢4の日当たりのよい場所は?
博士
酸素濃縮器は熱に弱い。直射日光や暖房器具の近くを避け、壁から15cm以上離し通気のよい場所に設置する
アユム
選択肢5の流量自己調整は?
博士
絶対にいかん。COPDでは高濃度酸素投与でCO2ナルコーシスを起こす危険がある。意識障害や呼吸抑制を招くから、流量は医師の指示通りを守らせる
アユム
CO2ナルコーシスってなぜ起きるんですか?
博士
COPDではCO2が慢性的に貯留し、呼吸中枢が低酸素刺激に依存するようになっておる。高濃度酸素で低酸素刺激が消えると呼吸が抑制されCO2がさらに貯留する。これが意識障害に至るんじゃ
アユム
苦しい時はどうすればいいですか?
博士
流量を上げるのではなく、医師に相談する、受診する、安静にするなどの対応を伝える。安静時と労作時で流量指示が分かれている場合も多いから、指示通りに使い分けることが大切じゃ
アユム
火気・機器・流量・保険、よく整理できました
博士
よい復習になったのう。災害時の予備ボンベ確保や業者連絡先の明示も忘れずに指導するんじゃぞ
POINT
在宅酸素療法では酸素の支燃性による火災予防が最重要で、裸火を使わないIH調理器具の使用が推奨されます。外出時はデマンドバルブでボンベ使用時間を延長でき、作動確認は必須です。機材は医療保険適用で、酸素濃縮器は直射日光を避け通気のよい場所に設置します。流量の自己調整はCO2ナルコーシスのリスクがあるため厳禁で、指示通りの使用と苦しい時の受診を徹底します。
解答・解説
正解は 1 ・ 2 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(75歳、女性)は、夫とは3年前に死別し、1人暮らし。喫煙歴があり、5年前に慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)と診断された。長女は隣県に住んでおり、時々様子を見に来ている。Aさんは受診を継続しながら、ほぼ自立して生活していた。今回、咳・痰の症状に加え呼吸困難が増強したため入院となった。入院後は酸素療法(鼻カニューレ:2L/分)と薬物療法を受け、症状が改善し、在宅酸素療法を導入し退院することになった。Aさんは初めて要介護認定を受けたところ、要支援2であった。 病棟看護師がAさんに行う在宅酸素療法に関する指導で適切なのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 1 と 2 です。酸素自体は燃えませんが強力な支燃性があり、近くに裸火があると爆発的に燃焼するため、調理は電磁調理器(IH)を推奨します。またデマンドバルブ(呼吸同調式レギュレータ)は吸気時のみ酸素を供給することでボンベ使用時間を約2〜3倍に延長でき、外出前に作動確認を行うことは安全・安心な外出に直結します。
選択肢考察
-
○ 1. 電磁調理器の使用を勧める。
在宅酸素療法中は裸火との距離を2m以上確保することが指導基準です。ガスコンロやライター・線香・仏壇のろうそくは火災・熱傷の原因となるため、IHクッキングヒーターなど裸火を使わない調理器具を勧めます。
-
○ 2. 外出時にデマンドバルブの作動を確認する。
デマンドバルブ(呼吸同調式装置)は吸気時にのみ酸素を流すことで持続流と比べボンベ使用時間を約2〜3倍に延長できます。作動不良では低酸素を来す危険があるため、外出前の作動確認は必須です。
-
× 3. 在宅酸素療法の機材が介護保険で給付される。
在宅酸素療法は医療保険の適用で、医師の指示と施設基準のもと酸素濃縮器や携帯ボンベが提供されます。介護保険の福祉用具貸与には含まれません。
-
× 4. 酸素濃縮器は日当たりのよいところに設置する。
酸素濃縮器は内部に熱がこもると故障や性能低下の原因となるため、直射日光を避け、風通しのよい壁から15cm以上離した場所に設置します。
-
× 5. 呼吸困難時にAさんの判断で酸素流量を変更してよい。
COPDでは高濃度酸素投与によりCO2ナルコーシス(意識障害・呼吸抑制)を生じる危険があります。流量は必ず医師の指示通りとし、苦しい時は受診・相談するよう指導します。
HOT(Home Oxygen Therapy)の導入基準は、動脈血酸素分圧55Torr以下、または60Torr以下で睡眠時・運動時に著しい低酸素血症となる慢性呼吸不全患者などです。火気管理(2m以内の裸火禁止、禁煙徹底)、機器管理(直射日光・高温多湿回避)、流量自己調整の禁止、CO2ナルコーシス予防、災害時の対応(予備ボンベ、連絡先確認)が指導の柱です。
在宅酸素療法の安全管理(火気・機器設置)と外出時のデマンドバルブ活用、保険制度上の位置づけを正しく理解しているかが問われています。
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