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余命4か月、Aさんの『自宅で過ごしたい』を叶える退院前カンファレンスの優先順位

看護師国家試験 第109回 午前 第115問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第115問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 57 歳、男性)は、妻( 55 歳)と長女( 28 歳)の 3 人暮らし。4 年前に直腸癌( rectal cancer )と診断され、手術を受けてストーマを造設した。その後、Aさんは直腸癌を再発し、治療を行ったが効果がなく、腹部のがん疼痛を訴えたため、疼痛をコントロールする目的で入院した。主治医からAさんと家族に余命 4 か月程度と告知され、Aさんは「痛みは取り除いてほしいが、延命治療は望まない。自宅で好きなことをして過ごしたい」と話している。現在、Aさんはオキシコドン塩酸塩を 1 日 2 回内服し、痛みがなければ日常生活動作〈 ADL 〉は、ほぼ自立している。 Aさんは退院後に訪問診療と訪問看護を利用することになり、今後の支援の方向性を確認するため、退院前にAさんと家族も参加するカンファレンスを開催した。 カンファレンスで確認する内容で最も優先度が高いのはどれか。

  1. 1.看取りの場所
  2. 2.ストーマパウチの交換方法
  3. 3.訪問リハビリテーションの必要性
  4. 4.退院後の生活でAさんが行いたいこと

対話形式の解説

博士 博士

今日は在宅緩和ケアの退院前カンファレンスについて考えるぞ。Aさんは57歳、直腸癌再発で余命4か月の告知を受けた。

サクラ サクラ

『痛みは取り除いてほしいが、延命治療は望まない。自宅で好きなことをして過ごしたい』と話されていますね。意思がはっきりしています。

博士 博士

ここが最大のポイントじゃ。患者の意思が明確なら、支援計画は本人の価値観を中心に組み立てる。

サクラ サクラ

選択肢を見ると、看取りの場所、ストーマ交換、訪問リハ、本人のやりたいことの4つですね。全部必要そうに見えます。

博士 博士

すべて大切じゃが、退院前カンファで『最も優先』すべきものを選ぶ問題じゃよ。

サクラ サクラ

看取りの場所を決めるのは先延ばしでいいのでしょうか?

博士 博士

Aさんは疼痛コントロール下でADL自立。現時点で看取りの場所を決めなくても、自宅療養を開始してから状態変化に応じて改めて確認すればよいのじゃ。

サクラ サクラ

ストーマ交換は4年前からの経験があるから、もう慣れておられるんですね。

博士 博士

そうじゃ。訪問看護も入るから管理体制も整う。まず優先ではない。

サクラ サクラ

訪問リハはどうでしょう?ADL維持には役立ちそうですが。

博士 博士

現時点でADLはほぼ自立、残された時間の使い方を考えると疲労の少ない生活が中心になる。必要性は経過で判断すればよい。

サクラ サクラ

すると残るのは『退院後の生活でAさんが行いたいこと』。

博士 博士

その通り。本人の『やりたいこと』を明確に共有することが、すべての支援計画の軸になる。

サクラ サクラ

これはACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方ですね。

博士 博士

よく覚えておった。2018年の厚生労働省ガイドラインで推進が明確化された。本人を中心に家族・医療介護チームで繰り返し話し合う過程じゃ。

サクラ サクラ

Aさんが例えば『庭の手入れをしたい』と言えば、それに合わせて訪問時間や疼痛管理を組み立てられますね。

博士 博士

うむ。『孫に会いたい』『好きな映画を観たい』『墓参りに行きたい』など具体化すれば、レスキュー薬の持参、介護タクシーの手配、訪問看護のタイミングなど具体策が連動する。

サクラ サクラ

本人のやりたいことが決まれば、看取りの場所もストーマもリハも自然に順序立てられますね。

博士 博士

そうじゃ。緩和ケアは『命の長さ』ではなく『時間の質』を支える看護。価値観の共有こそがすべての起点なのじゃよ。

POINT

在宅緩和ケアにおける退院前カンファレンスでは、患者本人の価値観と希望を共有することが最優先されます。Aさんは延命治療を望まず、自宅で好きなことをして過ごしたいという明確な意思を表しているため、その『好きなこと』の具体的内容を本人・家族・医療介護チームで共有することが支援計画の出発点となります。看取りの場所、ストーマ管理、訪問リハの必要性はいずれも重要ですが、本人のやりたいことが明確になれば連動して組み立てることができます。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方に則り、本人中心の対話を通じて『命の長さ』ではなく『時間の質』を支える看護こそが、終末期ケアの本質です。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 57 歳、男性)は、妻( 55 歳)と長女( 28 歳)の 3 人暮らし。4 年前に直腸癌( rectal cancer )と診断され、手術を受けてストーマを造設した。その後、Aさんは直腸癌を再発し、治療を行ったが効果がなく、腹部のがん疼痛を訴えたため、疼痛をコントロールする目的で入院した。主治医からAさんと家族に余命 4 か月程度と告知され、Aさんは「痛みは取り除いてほしいが、延命治療は望まない。自宅で好きなことをして過ごしたい」と話している。現在、Aさんはオキシコドン塩酸塩を 1 日 2 回内服し、痛みがなければ日常生活動作〈 ADL 〉は、ほぼ自立している。 Aさんは退院後に訪問診療と訪問看護を利用することになり、今後の支援の方向性を確認するため、退院前にAさんと家族も参加するカンファレンスを開催した。 カンファレンスで確認する内容で最も優先度が高いのはどれか。

解説:正解は 4 です。終末期ケアの基本は、患者本人の意思を尊重し生活の質(QOL)を最大限に保つことにあり、その出発点として本人が残された時間で何をしたいかを具体的に共有することが欠かせません。Aさんは既に『延命は望まない、自宅で好きなことをしたい』と明確な意思表示をしており、退院前カンファレンスではこの『好きなこと』の中身を患者・家族・医療介護チームで共有することが、支援計画の軸になります。ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方に沿って、本人の価値観と希望を基盤に他の支援(医療・介護・看取り体制)を組み立てていきます。

選択肢考察

  1. × 1.  看取りの場所

    看取りの場所は最終的に確認する重要事項だが、現時点ではAさんは疼痛コントロール下でADL自立、意思疎通も可能。まず自宅での生活を開始し、状態変化に応じて意向を再確認すればよいため、カンファレンスの現段階で最優先にはならない。

  2. × 2.  ストーマパウチの交換方法

    ストーマ造設から4年経過しており、本人の手技は確立していると考えられる。訪問看護の導入も予定されておりサポート体制は整うため、カンファレンスで最優先に確認すべき内容ではない。

  3. × 3.  訪問リハビリテーションの必要性

    疼痛コントロール良好時はADLがほぼ自立しており、退院直後からリハビリ導入が急務とは言えない。必要性は経過を見ながら判断でき、今カンファレンスの最優先議題ではない。

  4. 4.  退院後の生活でAさんが行いたいこと

    本人の価値観と希望を共有することが在宅終末期ケアの核。やりたいことが明確になれば、それを実現するための疼痛管理、訪問頻度、家族支援、緊急時対応の組み立てが具体化する。ACPの実践そのものといえる。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング、人生会議)は、将来の医療やケアについて本人を中心に家族や医療介護従事者と繰り返し話し合う過程で、2018年の厚生労働省ガイドライン改訂で推進が明確化された。在宅緩和ケアでは、疼痛・症状管理、在宅療養体制、家族ケア、看取りの場の確認、緊急時の連絡体制が柱となるが、すべての計画の土台になるのは『本人が何を大切にし、どう過ごしたいか』である。退院前カンファレンスでは、病院スタッフ・訪問診療医・訪問看護師・ケアマネジャー・本人・家族が一堂に会し、情報共有と方針決定を行う。

在宅緩和ケアの退院前カンファレンスにおける優先順位を問う問題。患者の意思・価値観の共有がすべての支援計画の土台であることを理解しているかがポイント。