在宅人工呼吸療法と災害対策の優先順位
看護師国家試験 第108回 午後 第117問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(70歳、男性)は、妻(68歳)と2人暮らし。3年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)<ALS>と診断され、在宅で療養生活を続けていた。その後、Aさんは症状が悪化し、入院して気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受けることになった。妻は、退院後に必要なケアの技術指導、人工呼吸器や胃瘻の管理方法、緊急・災害時の対応について病棟看護師から指導を受けた。退院前カンファレンスにおいて、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討することになった。妻は慢性腎不全(chronic renal failure)のため、週に3回の血液透析を受けており、1回に約6時間の外出が必要である。 退院から2週後、妻から「昨日、私が透析を受けている病院で災害が発生した場合の診療について説明がありました。在宅での生活にも少し慣れてきたし、夫のことも気になるので、あらためて災害に備えておきたいのですが、何から始めればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。 訪問看護師が妻に指導する内容で最も優先度が高いのはどれか。
- 1.予備の電源の選び方
- 2.福祉避難所への移動手段
- 3.災害用持ち出し物品の準備
- 4.足踏み式吸引器の使用方法
対話形式の解説
博士
今回は妻から「災害に備えて何から始めればよいか」と相談された場面じゃ。
サクラ
災害対策ってたくさんありますよね。どれから始めるべきでしょうか?
博士
人工呼吸器装着者にとって、答えは決まっておる。1番の予備の電源の選び方じゃ。
サクラ
やっぱり電源なんですね。
博士
そうじゃ。停電=呼吸停止に直結する。電気が止まれば数時間で命に関わるんじゃよ。
サクラ
人工呼吸器の内部バッテリーはどれくらい持ちますか?
博士
機種によるが、一般に30分から数時間程度じゃ。だから外部バッテリーや自家発電機、UPS、自動車のシガーソケットから電源を取るインバーターなど、複数の予備電源を組み合わせる必要がある。
サクラ
日頃の管理も大事ですね。
博士
そう、バッテリーは充電状態を定期的にチェックし、月に一度は実際に外部電源で作動するか確認するんじゃ。
サクラ
2番の福祉避難所への移動手段は?
博士
重要じゃが、まずは自宅で生命を維持できる状態を作ることが先じゃ。移動はその次の段階なんじゃよ。
サクラ
3番の災害用持ち出し物品は?
博士
経管栄養剤、内服薬、吸引カテーテルなど必要なものはたくさんあるが、やはり電源確保より優先度は下がる。
サクラ
4番の足踏み式吸引器は?
博士
停電時の吸引手段として非常に有用じゃ。でも「人工呼吸器が動かなければ吸引以前の問題」じゃから、優先度は電源の後じゃ。
サクラ
在宅人工呼吸療法の災害対策の柱は何ですか?
博士
「電源」「酸素」「吸引」「水」「連絡手段」の5本柱じゃ。これらを段階的に整えていく。
サクラ
行政との連携も必要ですよね。
博士
そうじゃ。電力会社に「災害時優先復旧世帯」として登録したり、自治体の「避難行動要支援者名簿」に登載してもらうことが命を守る鍵になる。
サクラ
訪問看護師として家族に何を伝えるべきですか?
博士
停電は必ず起こりうると想定し、予備電源の種類・容量・使い方を具体的に指導すること。そして訪問看護ステーションと24時間連絡が取れる体制を伝えることじゃ。災害時の備えは平時からの積み重ねなんじゃよ。
POINT
人工呼吸器装着者の災害対策では、停電時の生命維持に直結する予備電源の確保が最優先です。内部バッテリーの持続時間は限られており、外部バッテリー、自家発電機、自動車用インバーターなど複数の電源を組み合わせる必要があります。次いで吸引器、持ち出し物品、避難先の確保と段階的に備えを進めます。電力会社への優先復旧登録や避難行動要支援者名簿への登載も命を守る重要な対策です。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(70歳、男性)は、妻(68歳)と2人暮らし。3年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)<ALS>と診断され、在宅で療養生活を続けていた。その後、Aさんは症状が悪化し、入院して気管切開下の人工呼吸療法、胃瘻による経管栄養法を受けることになった。妻は、退院後に必要なケアの技術指導、人工呼吸器や胃瘻の管理方法、緊急・災害時の対応について病棟看護師から指導を受けた。退院前カンファレンスにおいて、訪問看護のほかに必要な在宅サービスについて検討することになった。妻は慢性腎不全(chronic renal failure)のため、週に3回の血液透析を受けており、1回に約6時間の外出が必要である。 退院から2週後、妻から「昨日、私が透析を受けている病院で災害が発生した場合の診療について説明がありました。在宅での生活にも少し慣れてきたし、夫のことも気になるので、あらためて災害に備えておきたいのですが、何から始めればよいでしょうか」と訪問看護師に相談があった。 訪問看護師が妻に指導する内容で最も優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 1 です。人工呼吸器装着者にとって停電時の電源確保は生命に直結する最優先課題です。内部バッテリーは数時間程度しか持たないため、外部バッテリー、自家発電機、UPS、自動車のシガーソケット対応インバーターなど複数の予備電源を確保し、日頃から充電状態や作動確認を行うことが最も重要です。
選択肢考察
-
○ 1. 予備の電源の選び方
人工呼吸器装着者の災害時対策の核心であり、停電時の生命維持に直結する最優先事項です。
-
× 2. 福祉避難所への移動手段
必要な情報ですが、まず自宅での生命維持(電源確保)を優先し、移動は次の段階で考えます。
-
× 3. 災害用持ち出し物品の準備
備えとして重要ですが、停電対策より優先度は下がります。
-
× 4. 足踏み式吸引器の使用方法
停電時に有用ですが、まず人工呼吸器の電源確保を優先します。吸引器の指導はその次の段階です。
在宅人工呼吸療法の災害対策は「電源」「酸素」「吸引」「水」「連絡手段」の5本柱です。予備電源は内部バッテリー(30分〜数時間)、外部バッテリー、自家発電機、自動車用インバーター、UPSを組み合わせます。電力会社への「災害時優先復旧登録」、自治体の「避難行動要支援者名簿」登録、日頃からの訪問看護ステーション・主治医との連絡体制確認も欠かせません。足踏み式・手動式吸引器、アンビューバッグも必須アイテムです。
在宅人工呼吸療法の災害対策における優先順位(生命維持の電源確保が最優先)を問う問題です。
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