NPPVマスクによる皮膚トラブルを防ぐ固定のコツ
看護師国家試験 第110回 午後 第117問 / 地域・在宅看護論 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 37歳、男性)は妻( 40歳、会社員)と2人暮らし。筋強直性ジストロフィー( myotonic dystrophy )で週5回の訪問介護を利用していた。1か月前に傾眠傾向が著明となり入院して精査した結果、睡眠時無呼吸に対して夜間のみフェイスマスクを用いた非侵襲的陽圧換気療法が導入された。Aさんは四肢遠位筋に筋萎縮と筋力低下があるが、室内の移動は電動車椅子を操作して自力で行え、食事も準備すれば妻と同じものを摂取できる。退院後、週1回午後に訪問看護が導入されることになった。 退院後1週、訪問看護師はAさんの鼻根部の皮膚に発赤があることに気付いた。訪問看護師の妻への対応で適切なのはどれか。
- 1.「鼻マスクに変更しましょう」
- 2.「発赤部位は洗わないようにしましょう」
- 3.「人工呼吸器の装着時間は短くしましょう」
- 4.「フェイスマスクのベルトは指が2本入る程度に固定しましょう」
対話形式の解説
博士
退院後1週でAさんの鼻根部に発赤が出ておるのう。
サクラ
マスクで圧迫されているからですね。
博士
そう。これは医療関連機器圧迫創傷、MDRPUと呼ばれる皮膚障害じゃ。
サクラ
どうすれば防げますか。
博士
ベルトを適切に締めることが基本じゃな。締めすぎはいかんが、緩いとリークしてしまう。
サクラ
そのバランスの目安が指2本分ですね。
博士
その通り、選択肢4が正解じゃ。
サクラ
選択肢1の鼻マスクへの変更はどうですか。
博士
マスクの変更は医師の判断じゃ。看護師が勝手に勧めてはならん。
サクラ
それに鼻根部の発赤は鼻マスクでも続く可能性がありますね。
博士
選択肢2の洗わないは皮膚にとって逆効果じゃ。
サクラ
むしろ優しく洗って清潔に保つ必要がありますね。
博士
選択肢3の装着時間短縮は医師の指示を逸脱する。傾眠再燃の危険もある。
サクラ
皮膚保護材を貼るのもよい方法ですか。
博士
うむ。ハイドロコロイドなどで圧を分散させるのも有効じゃ。
サクラ
予防は発赤段階での介入が肝心ですね。
博士
早期発見早期対応、これが在宅ケアの鉄則じゃぞ。
POINT
NPPVマスクによる鼻根部の発赤はMDRPUの初期徴候で、放置すると潰瘍化してマスク継続が困難になります。ベルト固定は指2本分のゆとりを基本とし、皮膚保護材の貼付やフィッティング調整を組み合わせます。マスク変更や装着時間変更は医師の指示領域で、看護師は家族に安全な調整方法を指導する立場を守ります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん( 37歳、男性)は妻( 40歳、会社員)と2人暮らし。筋強直性ジストロフィー( myotonic dystrophy )で週5回の訪問介護を利用していた。1か月前に傾眠傾向が著明となり入院して精査した結果、睡眠時無呼吸に対して夜間のみフェイスマスクを用いた非侵襲的陽圧換気療法が導入された。Aさんは四肢遠位筋に筋萎縮と筋力低下があるが、室内の移動は電動車椅子を操作して自力で行え、食事も準備すれば妻と同じものを摂取できる。退院後、週1回午後に訪問看護が導入されることになった。 退院後1週、訪問看護師はAさんの鼻根部の皮膚に発赤があることに気付いた。訪問看護師の妻への対応で適切なのはどれか。
解説:正解は4のフェイスマスクのベルトは指が2本入る程度に固定することです。鼻根部の発赤は医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の初期徴候で、ベルトの締めすぎを緩和しつつ換気量を保つ適切な固定を指導するのが最も実効性のある対応です。
選択肢考察
-
× 1. 「鼻マスクに変更しましょう」
マスクの種類変更は医師の判断が必要であり、看護師が独断で勧めることはできません。また鼻根部の発赤は鼻マスクでも圧迫が続く可能性があり、根本解決にはなりません。
-
× 2. 「発赤部位は洗わないようにしましょう」
皮膚トラブルの予防には清潔保持が基本で、洗わないとむしろ細菌繁殖や皮膚状態悪化につながります。愛護的な洗浄と保湿が推奨されます。
-
× 3. 「人工呼吸器の装着時間は短くしましょう」
NPPVの使用時間は医師の指示で決められており、看護師の判断で短縮することはできません。装着短縮は換気不足を招き、傾眠傾向再燃のリスクがあります。
-
○ 4. 「フェイスマスクのベルトは指が2本入る程度に固定しましょう」
ベルトと皮膚の間に指2本分(約2横指)のゆとりを持たせる固定は、リーク防止と圧迫予防の両立に有効な標準的な指導内容で、MDRPUを予防します。
NPPVマスクによる医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)は鼻根部・頬・額に生じやすく、発赤段階で対応することが重要です。予防にはベルト圧の調整に加え、皮膚保護材(ハイドロコロイド、ポリウレタンフィルム)の貼付、マスクフィッティングの見直し、発汗時の拭き取り、間欠的装着時間の活用などがあります。
NPPVマスク装着による皮膚障害の予防策として、適切なベルト調整方法を看護師が家族に指導できるかを問う問題です。
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