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判断能力が不安な人を支える「日常生活自立支援事業」の中身

看護師国家試験 第114回 午前 第89問 / 地域・在宅看護論 / 地域・在宅看護実践をめぐる制度

国試問題にチャレンジ

114回 午前 第89問

日常生活自立支援事業のサービス内容で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 1.住民票の届出
  2. 2.福祉用具の貸与
  3. 3.入院時の身元保証
  4. 4.自家用車の売買契約
  5. 5.銀行口座から現金の引き出し

対話形式の解説

博士 博士

今日は地域看護でよく出てくる日常生活自立支援事業の問題じゃ。聞いたことあるかの?

サクラ サクラ

名前は知っていますが…成年後見制度との違いがよく分からなくて。

博士 博士

いい疑問じゃ!この二つは対象者の判断能力レベルでつかい分けるのじゃ。日常生活自立支援事業は「判断能力は不十分だけど、契約内容は理解できる程度」の人が対象。成年後見制度は「判断能力が著しく低下した人」が対象じゃ。

サクラ サクラ

対象者の例を教えてください。

博士 博士

軽度〜中等度の認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などじゃな。一人暮らしで銀行に行くのが不安、福祉サービスの申し込みが難しい、書類を書くのが大変、といった人たちじゃ。

サクラ サクラ

誰が運営しているんですか?

博士 博士

社会福祉法に基づき、都道府県・指定都市の社会福祉協議会が実施主体じゃ。利用希望者は本人が社協と利用契約を結ぶ。

サクラ サクラ

サービス内容は具体的にどんなものですか?

博士 博士

三本柱があるぞ。①福祉サービス利用援助:介護保険や障害福祉サービスの選び方相談、申込書類の記入支援、苦情解決の援助。②日常的金銭管理サービス:年金や福祉手当の受領確認、公共料金や医療費の支払い、生活費の引き出し。③書類等預かりサービス:通帳・実印・権利証など重要書類の預かり保管。

サクラ サクラ

今回の選択肢の「住民票の届出」はどれに当たるんですか?

博士 博士

これは①の福祉サービス利用援助の一環としての日常的な行政手続き支援に当たるのじゃ。役所での書類記入や届出を支援員が一緒に行う。

サクラ サクラ

「銀行口座から現金の引き出し」は?

博士 博士

これは②の日常的金銭管理サービスの典型例じゃ。生活費の管理として支援員が代行で引き出し、本人に渡す。

サクラ サクラ

じゃあ「入院時の身元保証」はなぜ違うんですか?

博士 博士

身元保証は債務保証など法的責任を伴う行為で、本事業の範囲を超えるのじゃ。これは成年後見制度の領域だが、後見人も身元保証は引き受けないことが多く、現実には課題になっておる。

サクラ サクラ

「自家用車の売買契約」も法律行為だから対象外、と。

博士 博士

その通り。高額な財産処分は判断能力が低下した本人を保護する必要があるから、成年後見人・保佐人・補助人の代理・同意が必要じゃ。

サクラ サクラ

「福祉用具の貸与」はどうですか?

博士 博士

これは介護保険の現物給付サービスじゃ。日常生活自立支援事業は支援員による「行為の支援」が中心で、用具の貸与のような現物給付は含まれん。

サクラ サクラ

利用料はかかるんですか?

博士 博士

サービス1回1〜2千円程度が標準的じゃ。生活保護受給者は無料になることが多い。成年後見と比べて格段に安価で利用しやすいのが特長じゃな。

サクラ サクラ

看護師としては、退院支援や地域包括ケアで紹介できる選択肢として知っておくべきですね。

博士 博士

その通り!独居で判断能力が不安だが後見制度ほどではない、という患者は多い。社協の地域包括センターと連携することで生活破綻を防げるぞ。

サクラ サクラ

制度の対象範囲をしっかり理解しておきます!

POINT

日常生活自立支援事業は社会福祉法に基づき社会福祉協議会が実施する制度で、認知症高齢者・知的障害者・精神障害者など判断能力は不十分だが契約内容は理解できる人を対象に、①福祉サービス利用援助、②日常的金銭管理サービス、③書類等預かりサービスの三つを柱とする支援を提供します。本問の正解である「住民票の届出」は日常的な行政手続き支援、「銀行口座から現金の引き出し」は日常的金銭管理サービスに該当する一方、入院時の身元保証や自家用車の売買契約のような重要な法律行為・財産処分は成年後見制度の領域となります。両制度は対象者の判断能力レベルと支援範囲で使い分けられ、看護師は退院支援や地域包括ケアの場面で適切な制度を紹介できる知識が求められます。地域で暮らす人の自己決定と権利を守る仕組みとして、両制度の理解は地域・在宅看護の基礎となる重要事項です。

解答・解説

正解は 1 5 です

問題文:日常生活自立支援事業のサービス内容で正しいのはどれか。2つ選べ。

解説:正解は 1 の住民票の届出と 5 の銀行口座から現金の引き出しです。日常生活自立支援事業は社会福祉法に基づき、都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施主体となって行う制度で、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など「判断能力は不十分だが、契約内容は理解できる程度」の人を対象とします。サービス内容は①福祉サービス利用援助、②日常的金銭管理サービス(公共料金支払い、年金・福祉手当受領確認、預貯金の出し入れなど)、③書類等預かりサービスの三本柱で、住民票の届出など日常的な行政手続き支援や、生活費の引き出し支援が含まれます。

選択肢考察

  1. 1.  住民票の届出

    日常的な行政手続きの援助は本事業の対象。福祉サービス利用援助の一環として、住民票・戸籍・年金などの届出書類記入や提出に関する支援を行う。

  2. × 2.  福祉用具の貸与

    介護保険の居宅サービスであり、日常生活自立支援事業の範囲外。事業は金銭管理や手続き支援が中心で、現物給付(用具の貸与・購入)は含まれない。

  3. × 3.  入院時の身元保証

    身元保証は法的責任を伴う行為であり、本事業の支援範囲を超える。判断能力が著しく低下した場合の財産管理や法的代理は成年後見制度の役割となる。

  4. × 4.  自家用車の売買契約

    高額な財産処分や重要な法律行為は本事業の対象外。これらは成年後見人・保佐人・補助人による代理・同意権の対象。

  5. 5.  銀行口座から現金の引き出し

    日常的金銭管理サービスに含まれる中核的支援。生活費の引き出し、公共料金や医療費の支払い、年金受領の確認など、日常生活に必要な金銭管理を支援する。

日常生活自立支援事業と成年後見制度は対象者と支援範囲が異なる。日常生活自立支援事業は判断能力が不十分でも契約内容を理解できる人が対象で、本人と社会福祉協議会との利用契約に基づき支援する。これに対し成年後見制度は判断能力が著しく低下した人を対象とし、家庭裁判所による法定後見または任意後見契約に基づき、財産管理や身上監護に関する法律行為を代理する。利用料は前者が比較的安価で生活保護受給者は減免、後者は鑑定費用や報酬が発生する点も実務的に重要。

日常生活自立支援事業は「日常的な金銭管理・福祉サービス利用援助・書類預かり」が範囲で、重要財産の売買や身元保証は成年後見制度の領域。両制度の使い分けがポイント。