降圧薬と転倒リスクの関係を整理しよう
看護師国家試験 第111回 午後 第21問 / 必修問題 / 薬物の作用と管理
国試問題にチャレンジ
転倒・転落を起こすリスクを高める薬はどれか。
- 1.降圧薬
- 2.抗凝固薬
- 3.気管支拡張薬
- 4.副腎皮質ステロイド薬
対話形式の解説
博士
今日は転倒・転落リスクを高める薬剤の問題を扱うぞ。高齢者が入院中に転倒する原因の多くは、実は薬の副作用に関係しているんじゃ。
サクラ
博士、選択肢には降圧薬、抗凝固薬、気管支拡張薬、副腎皮質ステロイド薬がありますが、どれが正解ですか?
博士
正解は1の降圧薬じゃ。降圧薬は血圧を下げることで、めまい・ふらつき・起立性低血圧を引き起こす可能性があり、これが転倒の直接的な原因になるのじゃ。
サクラ
なぜ降圧薬でめまいが起こるのでしょうか?
博士
降圧効果が強すぎると脳への血流が一時的に減少し、酸素不足でふらつきが生じる。特に立ち上がった瞬間に血圧が下がる起立性低血圧は高齢者で多いのじゃ。
サクラ
抗凝固薬の2はどうして違うのですか?
博士
抗凝固薬は血液を固まりにくくする薬で、副作用は出血傾向じゃ。転倒そのものを誘発するわけではない。ただし転倒後の頭部打撲で硬膜下血腫が生じると重症化するから、別の意味で注意が必要じゃぞ。
サクラ
気管支拡張薬の3はどうですか?
博士
β2刺激薬では動悸や手指振戦、抗コリン薬では口渇や排尿困難が主な副作用じゃ。直接転倒を誘発するものではない。
サクラ
副腎皮質ステロイド薬の4は長期服用で骨がもろくなるイメージですが…
博士
鋭いのう。長期使用で骨粗鬆症を来し骨折リスクは上がるが、転倒を誘発する作用ではない。設問は「転倒を起こすリスクを高める薬」だから、めまいを起こす降圧薬が最も適切じゃ。
サクラ
他にも転倒リスクのある薬はありますか?
博士
睡眠薬、抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬なども要注意じゃ。日本老年医学会のガイドラインでもこれらが挙げられておる。
サクラ
看護師としてどう対応すればよいですか?
博士
服薬直後や起床時の見守り、ベッドからの移動時の声かけ、排尿後の起立時の注意、ナースコールの使用説明などが基本じゃ。服薬開始後しばらくは特に注意深く観察する必要があるぞ。
POINT
降圧薬は血圧低下によるめまい・ふらつき・起立性低血圧を介して転倒・転落リスクを高める代表的な薬剤です。高齢者では圧受容器反射の低下などで影響を受けやすく、日本老年医学会のガイドラインでも転倒関連薬として明記されています。抗凝固薬は出血傾向、気管支拡張薬は動悸や口渇、ステロイドは骨粗鬆症などが主な副作用で、転倒を直接誘発するものではありません。看護師は服薬直後や起立時の見守り、声かけを行い転倒予防に努めます。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:転倒・転落を起こすリスクを高める薬はどれか。
解説:正解は 1 です。降圧薬は血圧を下げる作用により、過度の降圧や起立性低血圧を引き起こすことがあり、めまい・ふらつき・立ちくらみといった症状を介して転倒・転落のリスクを高めます。特に高齢者では圧受容器反射の低下や自律神経機能の低下が重なり、降圧薬による血圧変動の影響を受けやすくなります。日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」でも降圧薬は転倒リスク薬の代表として挙げられています。
選択肢考察
-
○ 1. 降圧薬
血圧低下に伴うめまい・ふらつき・起立性低血圧を起こしやすく、転倒・転落リスクを高めるため正解。
-
× 2. 抗凝固薬
血液凝固を抑える薬で副作用は出血傾向。転倒後の出血は重症化しやすいが、転倒自体を誘発する薬ではない。
-
× 3. 気管支拡張薬
気管支を広げ呼吸困難を改善する薬。副作用は動悸・手指振戦・口渇などで、直接的な転倒リスクは低い。
-
× 4. 副腎皮質ステロイド薬
抗炎症・免疫抑制作用を持つ。長期使用で骨粗鬆症を来し骨折リスクはあるが、転倒自体を誘発する作用はない。
転倒リスクを高めるその他の薬剤として、睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)、抗精神病薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬、パーキンソン病治療薬などがあります。特に高齢者では薬剤の相互作用や排泄遅延による作用増強に注意し、ベッドから起き上がる前や排尿後の起立時には声かけと見守りを行うことが重要です。
降圧薬によるめまい・ふらつき・起立性低血圧が転倒リスクを高めることを問う必修問題。各薬剤の主な副作用と転倒との関連を理解しているかがポイント。
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