尿ケトン陽性のサイン—糖が使えない体の悲鳴を読み解く
看護師国家試験 第114回 午前 第17問 / 必修問題 / 徴候と疾患
国試問題にチャレンジ
尿中ケトン体が陽性になる疾患はどれか。
- 1.痛風(gout)
- 2.肝硬変(cirrhosis)
- 3.糖尿病(diabetes mellitus)
- 4.ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome)
対話形式の解説
博士
今日は尿検査でみるケトン体の話じゃ。尿試験紙で「ケトン体陽性」と出たら何を考えるべきか?
サクラ
ケトン体って言葉は聞きますが、何なんですか?
博士
ケトン体はアセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンの総称で、肝臓が脂肪酸を分解して作る「予備燃料」じゃ。糖が使えないときに出てくる。
サクラ
ということは、糖が足りないと出るんですね。
博士
その通り。代表は糖尿病。インスリンが足りないと、血糖は高いのに細胞は糖を取り込めない、いわば「お米はあるのに食べられない」状態じゃ。
サクラ
それで体は仕方なく脂肪を燃やすんですね。
博士
そう、脂肪分解が暴走してケトン体が血中に溢れ、尿にも漏れ出る。これが尿ケトン陽性じゃ。さらに進むと血液が酸性に傾き、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)という危険な状態になる。
サクラ
DKAの症状はどんなですか?
博士
口渇・多飲・多尿・腹痛・嘔吐に加え、特徴的なのがKussmaul呼吸じゃ。深くて速い呼吸で、体は頑張って二酸化炭素を吐き出してアシドーシスを代償しようとしておる。
サクラ
アセトン臭って聞いたことがあります。
博士
ケトン体の1つアセトンは揮発性で、息に混じる。フルーツが熟したような甘酸っぱい臭いじゃ。看護師は患者のそばに行ったときに、その臭いに気づけると初動が早くなるぞ。
サクラ
糖尿病以外でもケトン体は出ますか?
博士
絶食や激しい嘔吐、過度なダイエット、激しい運動後にも出る。糖質制限ダイエットで陽性になるのも同じ原理じゃ。
サクラ
他の選択肢の疾患を確認させてください。痛風は?
博士
痛風は尿酸の代謝異常で、血清尿酸値が高くなる病気。ケトン体は無関係じゃ。
サクラ
肝硬変は?
博士
肝硬変ではむしろケトン体産生は低下する。肝臓こそがケトン体を作る工場じゃからの。尿検査ではウロビリノーゲンや尿ビリルビンの変化が特徴的じゃ。
サクラ
ネフローゼ症候群は?
博士
ネフローゼでは大量の尿蛋白(1日3.5g以上)が特徴で、尿蛋白が陽性。ケトンとは別物じゃ。
サクラ
看護師として何を観察すべきですか?
博士
尿検査で複数の項目を読み解く力が大事じゃ。ケトン陽性なら糖尿病コントロール不良や飢餓状態を疑い、血糖測定・意識レベル・呼吸パターン・口腔内乾燥などを総合評価する。早期発見がDKA予防の鍵じゃよ。
POINT
尿中ケトン体は糖が利用できないときに脂肪分解が亢進して産生されるアセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンの総称で、糖尿病ではインスリン作用不足から脂肪分解が暴走し陽性化します。重症化すると糖尿病ケトアシドーシス(DKA)となり、Kussmaul呼吸・アセトン臭・意識障害を呈する救急疾患となります。痛風は尿酸代謝異常、肝硬変は肝機能低下、ネフローゼ症候群は高度蛋白尿が特徴で、いずれもケトン体は陽性化しません。糖尿病以外にも絶食・嘔吐・過度なダイエットでケトン陽性となるため、尿所見は患者の代謝状態を映す鏡として総合的に解釈する必要があります。看護師は尿検査結果と全身症状を結びつけ、急性合併症の早期発見につなげる視点が重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:尿中ケトン体が陽性になる疾患はどれか。
解説:正解は 3 の糖尿病(diabetes mellitus)です。ケトン体(アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトン)は、糖の利用が障害されたときに脂肪酸が肝臓で分解されて生成される代替エネルギー源です。糖尿病ではインスリン作用不足によりブドウ糖を細胞内に取り込めず、相対的な飢餓状態となるため脂肪分解が亢進し、ケトン体が血中・尿中で増加します。重症ではケトアシドーシス(DKA)となり、生命に関わる代謝性アシドーシスを呈します。
選択肢考察
-
× 1. 痛風(gout)
痛風はプリン体代謝異常により尿酸が蓄積する疾患で、血清尿酸値高値が特徴。尿中ケトン体は陽性化しない。
-
× 2. 肝硬変(cirrhosis)
肝硬変では肝機能低下に伴い間接ビリルビン上昇や尿中ウロビリノーゲンの変動などがみられるが、ケトン体産生は逆に低下傾向。
-
○ 3. 糖尿病(diabetes mellitus)
インスリン作用不足で糖が利用できず、脂肪分解が亢進してケトン体が増加。尿中ケトン体陽性となる代表疾患。
-
× 4. ネフローゼ症候群(nephrotic syndrome)
ネフローゼ症候群では1日3.5g以上の高度蛋白尿が特徴で、尿蛋白が陽性化する。ケトン体は通常陰性。
尿中ケトン体は糖尿病以外でも、長時間の絶食、激しい嘔吐や下痢、過度なダイエット、アルコール性ケトアシドーシス、新生児・小児の感染症(周期性嘔吐症)でも陽性化する。糖尿病ケトアシドーシス(DKA)は1型糖尿病の急性合併症として有名で、口渇・多飲・多尿・倦怠感・腹痛・Kussmaul呼吸(深く速い呼吸でCO2を排出しアシドーシスを代償)・アセトン臭(フルーツ様の口臭)が特徴的。インスリン投与・輸液・電解質補正が緊急治療となる。看護師は意識レベル・呼吸パターン・尿量を厳密に観察する。
ケトン体が産生される代謝学的背景を理解し、糖尿病における脂質代謝異常を判断できるかを問う問題。
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