針刺し事故ゼロを目指す 廃棄容器は8割で交換が鉄則
看護師国家試験 第112回 午後 第36問 / 基礎看護学 / 診療に伴う看護技術
国試問題にチャレンジ
針刺し事故を防止する方法で適切なのはどれか。
- 1.採血時に手袋を着用する。
- 2.採血部位をアルコールで消毒する。
- 3.抜針した採血針はキャップをして破棄する。
- 4.針専用の廃棄容器は容量が8割程度に達したら処分する。
対話形式の解説
博士
今日は針刺し事故防止じゃ。看護師・看護学生にとって避けて通れないリスクで、国試でも頻出テーマじゃぞ。
アユム
針刺し事故って、どれくらいの確率で感染してしまうんですか?
博士
針を刺した瞬間に感染するわけではないが、B型肝炎ウイルスでは約30%、C型肝炎で約3%、HIVで約0.3%と病原体によって大きく異なる。特にHBVはリスクが高いから注意が必要じゃ。
アユム
手袋をしていれば安全と思っていたんですが、違うんですか?
博士
手袋は血液による皮膚汚染を防ぐ効果はあるが、針は手袋を貫通してしまう。針刺し事故そのものを防ぐ手段にはならん点を理解しておくのじゃ。
アユム
じゃあ採血部位の消毒は?
博士
これも穿刺部位からの細菌侵入を防ぐ対策で、針刺し事故の予防策ではない。患者を感染から守るのが消毒、医療者を守るのが別の対策じゃ。
アユム
リキャップは絶対ダメ、と習いました。
博士
その通り。「ノーリキャップ」が原則じゃ。キャップを付け直そうとして刺してしまう事故が最も多い。抜針したらすぐ、片手で専用の耐貫通性容器に廃棄するのじゃ。
アユム
じゃあ廃棄容器をいつ交換するかがポイントですね。
博士
そうじゃ。満杯まで詰めると、中から針が飛び出したり、蓋を閉めるときに針に触れたりする危険がある。7〜8割を目安に密閉交換するのが基本じゃ。
アユム
工学的な対策もあるんですよね?
博士
安全装置付き採血針や翼状針、リトラクタブル針などがあり、使用直後に針が自動的に保護カバーで覆われる仕組みじゃ。病院全体で採用することで事故率が大きく下がる。
アユム
もし刺してしまったらどうすればいいんですか?
博士
まず流水で洗って血液を絞り出し、消毒後、速やかに所属部署と感染対策室に報告するのじゃ。患者と自分の血液検査を行い、HBVならワクチンとHBIG、HIV曝露なら抗レトロウイルス薬の内服を検討する。
アユム
初動が大事なんですね。学生のうちから慣れておきます。
博士
うむ。エピネット日本版という全国サーベイランスで事故情報を集積し、システムの改善に使っておる。個人の注意だけでなく、病院全体の仕組みで防ぐ視点が大切じゃ。
アユム
「人間はミスをする前提」で安全設計する、という発想ですね。
博士
まさにそうじゃ。ヒューマンファクターを踏まえた工学的対策と行動的対策の両輪で、事故ゼロを目指すのじゃ。
POINT
針刺し事故は血液媒介感染症(HBV・HCV・HIVなど)を引き起こす重大な職業性曝露で、医療従事者の安全管理において最優先の課題です。予防の基本はノーリキャップの徹底、安全装置付きデバイスの使用、そして耐貫通性の専用廃棄容器を容量の7〜8割で交換することです。手袋の着用や採血部位の消毒は感染予防策ではありますが、針刺しそのものを防ぐ効果はありません。事故発生時は流水洗浄と報告、曝露後予防の早期判断が肝要であり、CDCや日本環境感染学会のガイドラインに沿った組織的な取り組み、エピネット日本版によるサーベイランスが、看護現場の安全文化を支えています。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:針刺し事故を防止する方法で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。使用済み鋭利器材を廃棄する専用容器(耐貫通性の感染性廃棄物容器)は、満杯になってから処分すると中から針が飛び出して廃棄時に誤穿刺を起こすリスクが高まる。CDCや日本環境感染学会のガイドラインでは、容量の7〜8割に達した時点で密閉・交換することが推奨されている。
選択肢考察
-
× 1. 採血時に手袋を着用する。
手袋は血液曝露による皮膚・粘膜感染リスクを下げる標準予防策であるが、針が手袋を貫通するため針刺し事故自体の予防策にはならない。
-
× 2. 採血部位をアルコールで消毒する。
消毒は穿刺部位からの細菌侵入を防ぐ感染対策で、針刺し事故の防止策ではない。
-
× 3. 抜針した採血針はキャップをして破棄する。
リキャップは針刺し事故の最も多い原因の一つである。ノーリキャップが原則で、抜針後はそのまま専用廃棄容器に廃棄する。
-
○ 4. 針専用の廃棄容器は容量が8割程度に達したら処分する。
満杯にすると押し込む際や密閉時に針が突き出るため、7〜8割で閉鎖・交換するのが安全基準。耐貫通性容器に片手で廃棄する動作が推奨される。
針刺し事故による感染リスクは、HBV:約30%、HCV:約3%、HIV:約0.3%とされる。事故発生時は流水で洗浄し、直ちに所属部署・感染対策室へ報告、血液検査・曝露後予防(HBVならワクチン・HBIG、HIVなら抗レトロウイルス薬の内服)を判断する。安全装置付き採血針(セーフティ機構付き)の使用やエピネット日本版によるサーベイランスも重要な対策である。
針刺し事故の発生機序を踏まえ、工学的対策(セーフティデバイス)と行動的対策(ノーリキャップ、容器の適時交換)の基本を問う問題。手袋や消毒は血液媒介感染予防策ではあるが、針刺し自体の防止策ではない点に注意。
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