高齢者の五感はこう変わる!痛みに鈍くなり夜が見えにくくなる理由
看護師国家試験 第114回 午後 第88問 / 老年看護学 / 高齢者の健康
国試問題にチャレンジ
高齢者における感覚器の変化の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.高音域の聴力が保持される。
- 2.痛覚の感受性が低下する。
- 3.味覚の閾値が低下する。
- 4.暗順応が低下する。
- 5.嗅覚は保持される。
対話形式の解説
博士
今回は高齢者の感覚器の変化じゃ。看護師として知っておくべき基本中の基本じゃよ。
アユム
五感って加齢でどう変わるんですか?
博士
ひとことで言えば、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・痛覚いずれも機能が低下する。それぞれの特徴を見ていこう。
アユム
聴覚は高音から聞こえにくくなるって聞きました。
博士
その通りじゃ。内耳の蝸牛にある有毛細胞は高音域から減少していく。だから「高音域が保持される」は逆で、最も保持されにくい音域なのじゃ。
アユム
痛覚はどうですか?
博士
皮膚の感覚受容器が減って、神経の伝達も鈍くなるから痛みを感じにくくなる。痛覚閾値が上昇するイメージじゃな。
アユム
痛みが感じにくいのは楽でいいような気もしますが…。
博士
いやいや、それが危ないのじゃ。熱傷や褥瘡、心筋梗塞の胸痛などの重要な警告サインを見逃すことになる。客観的観察が看護の鍵になるぞ。
アユム
味覚はどうですか?
博士
味蕾数の減少と唾液分泌の低下で味を感じにくくなる。閾値は「上昇」する方向じゃ。特に塩味が分かりにくくなって、塩分過多になりやすい。
アユム
だから高齢者は濃い味付けを好む傾向があるんですね。
博士
その通り。減塩しても美味しく感じられる工夫、例えば出汁や酸味、香辛料を活用する指導が看護師の腕の見せどころじゃ。
アユム
視覚の暗順応について教えてください。
博士
網膜の杆体細胞機能の低下、老人性縮瞳、水晶体の混濁などで、明所から暗所に入って目が慣れる時間が長くなる。夜間転倒の大きなリスクじゃ。
アユム
対策はどうしたらいいですか?
博士
夜間の足元灯を設置する、トイレへの動線を明るくする、急に立ち上がらないなど、環境整備が大切じゃな。
アユム
嗅覚も低下するんですか?
博士
嗅上皮の感覚細胞が減って嗅神経機能も落ちる。食事の楽しみが減るだけでなく、ガス漏れや腐敗食品への危険察知能力も低下する。
アユム
五感のすべてに気をつけて、生活全体を支える視点が必要なんですね。
博士
その通り。本人の訴えだけに頼らず、客観的観察と環境整備を組み合わせるのが高齢者看護の基本じゃ。
POINT
加齢に伴い、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚痛覚はいずれも全般的に機能低下します。痛覚は感覚受容器や神経伝達機能の低下により閾値が上昇し、痛みを感じにくくなるため、熱傷や心筋梗塞などの重要徴候を見逃しやすくなります。視覚では網膜杆体細胞や瞳孔反射の機能低下により暗順応が遅延し、夜間転倒のリスクが高まります。一方、高音域聴力は最も保持されにくく、味覚閾値は上昇(味を感じにくく)、嗅覚も低下するため、それぞれの選択肢の表現は誤りです。看護では客観的観察と環境整備を組み合わせ、生活の安全と質を支える視点が求められます。
解答・解説
正解は 2 ・ 4 です
問題文:高齢者における感覚器の変化の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 2 の「痛覚の感受性が低下する。」と 4 の「暗順応が低下する。」です。加齢に伴い、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚痛覚)はいずれも全般的に機能低下します。皮膚の感覚受容器の減少や末梢神経・中枢神経の伝達機能の低下により痛覚閾値は上昇し、痛みを感じにくくなります。また、網膜の杆体細胞機能の低下、瞳孔反射の減弱(老人性縮瞳)、水晶体の混濁などにより、明所から暗所に入ったときに目が慣れる暗順応が遅延・低下します。
選択肢考察
-
× 1. 高音域の聴力が保持される。
加齢性難聴では内耳蝸牛の有毛細胞の減少により、まず高音域から聴力が低下する。逆に高音域は最も保持されにくい音域である。
-
○ 2. 痛覚の感受性が低下する。
皮膚の自由神経終末や脊髄・脳の伝達機能の低下により痛覚閾値が上昇し、痛みを感じにくくなる。熱傷や外傷、心筋梗塞の症状を見逃しやすくなるリスクがあり、客観的な観察が重要となる。
-
× 3. 味覚の閾値が低下する。
加齢に伴い味蕾数の減少や唾液分泌の低下により、味を感じにくくなる。すなわち閾値は「上昇」する。特に塩味の感受性低下が顕著で、塩分過多になりやすい。
-
○ 4. 暗順応が低下する。
網膜の杆体細胞機能低下、瞳孔の縮瞳傾向、水晶体の混濁などにより、暗所に目が慣れるまでの時間が長くなる。夜間転倒のリスク要因となる。
-
× 5. 嗅覚は保持される。
嗅上皮の感覚細胞減少や嗅神経機能の低下により、嗅覚も加齢で低下する。食事の楽しみが減るほか、ガス漏れや火災などの危険察知能力の低下にもつながる。
高齢者の感覚器変化は日常生活の安全に直結する。痛覚低下は熱傷・褥瘡・心筋梗塞などの重要徴候を見逃すリスク、暗順応低下は夜間転倒のリスク、味覚低下は塩分過多・低栄養のリスク、嗅覚低下は腐敗食品やガス漏れなどへの危険察知能力低下、聴覚低下はコミュニケーション障害や社会的孤立につながる。看護では本人の自覚的訴えだけに頼らず、客観的観察と環境整備(夜間の足元灯、減塩でも美味しい味付けの工夫、火災警報器など)を組み合わせる視点が必要である。
加齢に伴う感覚器(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・痛覚)の変化を正しく理解しているかを問う問題。「保持される」「閾値が低下する」など紛らわしい表現に注意。
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