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高齢者の便秘はなぜ起きる? 〜老化と消化器の関係を整理〜

看護師国家試験 第114回 午前 第56問 / 老年看護学 / 高齢者の健康

国試問題にチャレンジ

114回 午前 第56問

老化に伴う消化器系の変化で正しいのはどれか。

  1. 1.大腸の蠕動運動が低下する。
  2. 2.膵液分泌量が増加する。
  3. 3.唾液分泌量が増加する。
  4. 4.胃粘膜が萎縮する。

対話形式の解説

博士 博士

今回は加齢に伴う消化器系の変化について学ぶぞ。

アユム アユム

高齢者は便秘になりやすいって聞きますね。

博士 博士

その通り。これにはいくつかの理由が重なっておる。

アユム アユム

どんな理由ですか?

博士 博士

まず大腸の蠕動運動が低下する。自律神経機能の低下と腸管平滑筋の衰えが原因じゃ。

アユム アユム

他にもあるんですか?

博士 博士

腹筋や骨盤底筋の筋力低下、運動量の減少、水分摂取量の減少、内服薬の影響など、複数の要素が重なって弛緩性便秘になりやすいんじゃ。

アユム アユム

選択肢の「膵液分泌量が増加する」というのは?

博士 博士

誤りじゃ。加齢で膵腺房細胞が萎縮し、消化酵素を含む膵液は減少する。脂質や蛋白質の消化が低下するから、高齢者は脂っこい食事で胃もたれしやすくなる。

アユム アユム

唾液はどうなりますか?

博士 博士

唾液腺の萎縮、咀嚼筋の衰え、体内水分の減少で唾液分泌は減少する。ドライマウスや誤嚥、う蝕、味覚障害につながるのじゃ。

アユム アユム

胃粘膜が萎縮するというのは?

博士 博士

胃粘膜萎縮の主因は加齢ではなく、ヘリコバクター・ピロリの慢性感染じゃ。萎縮性胃炎は胃癌のリスク因子でもあるぞ。

アユム アユム

じゃあピロリ感染がなければ胃粘膜は比較的保たれるんですね。

博士 博士

その通り。日本では高齢者世代でピロリ感染率が高いため胃粘膜萎縮も多いが、若年世代では感染率が下がっておる。

アユム アユム

看護として何ができますか?

博士 博士

まず十分な水分と食物繊維の摂取、適度な運動、排便リズムの把握。さらに口腔ケアと唾液腺マッサージで唾液分泌を促し、咀嚼・嚥下機能を評価することが大切じゃ。

アユム アユム

食形態の調整も重要そうですね。

博士 博士

うむ、嚥下機能に応じてとろみや刻み食を選び、誤嚥性肺炎を予防することも看護の役割じゃ。

アユム アユム

高齢者の消化器系の変化は便秘だけでなく栄養や感染にも関わるんですね。

博士 博士

その通り。消化器系の老化はフレイルやサルコペニアにも繋がる。生活全体を支える視点が必要なんじゃよ。

アユム アユム

総合的な視点で介入することがポイントなんですね。

POINT

加齢に伴う消化器系の変化として、大腸蠕動運動の低下、唾液・胃酸・膵液の分泌低下、消化吸収能の低下が起こります。これらは弛緩性便秘、ドライマウス、誤嚥、消化不良の原因となり、高齢者の生活の質に大きく影響します。一方、胃粘膜の萎縮は加齢そのものではなくヘリコバクター・ピロリの慢性感染が主因であり、胃癌のリスク因子としても重要です。看護師は水分・食物繊維摂取、運動、口腔ケア、嚥下機能評価などの多面的支援を通じて、高齢者の消化機能低下による合併症を予防することが求められます。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:老化に伴う消化器系の変化で正しいのはどれか。

解説:正解は 1 です。加齢に伴い、消化管の蠕動運動・消化液分泌量・吸収機能はいずれも低下する傾向にある。特に大腸の蠕動運動低下は便の腸内停滞時間を延長させ、水分の過剰吸収を招くため、高齢者で頻発する弛緩性便秘の主因となる。さらに腹筋・骨盤底筋の筋力低下、自律神経機能の低下、運動量・水分摂取量の減少などが複合的に関与する。

選択肢考察

  1. 1.  大腸の蠕動運動が低下する。

    加齢による自律神経機能の低下や腸管平滑筋の機能低下により、大腸の蠕動運動は低下する。これに筋力低下や運動量減少が重なり、弛緩性便秘の原因となる。

  2. × 2.  膵液分泌量が増加する。

    加齢に伴い膵腺房細胞の萎縮が進み、膵液分泌量と消化酵素量は減少する。脂質や蛋白質の消化が低下し、胃もたれや膨満感の原因となる。

  3. × 3.  唾液分泌量が増加する。

    唾液腺の萎縮、咀嚼筋力の低下、体内水分量の減少などにより唾液分泌量は減少する。これによりドライマウスや誤嚥、う蝕、味覚障害が増加する。

  4. × 4.  胃粘膜が萎縮する。

    胃粘膜の萎縮(萎縮性胃炎)の主因はヘリコバクター・ピロリの慢性感染であり、加齢そのものが直接の原因ではない。ピロリ感染が背景にない高齢者では胃粘膜は比較的保たれる。

高齢者の消化器系変化は便秘・誤嚥・栄養障害・脱水のリスクを高める。看護援助では、(1)十分な水分・食物繊維摂取、(2)離床・歩行など運動量の確保、(3)排便リズムの把握、(4)口腔ケアと唾液分泌促進(唾液腺マッサージ、こまめな水分摂取)、(5)咀嚼・嚥下機能評価と適切な食形態の選択、が重要である。萎縮性胃炎はピロリ感染が主因だが、長期化すると胃癌のリスクも上昇するため定期的な内視鏡検査が推奨される。

加齢による消化器系の変化(蠕動低下、消化液分泌低下、唾液低下)と、ピロリ感染を主因とする胃粘膜萎縮を区別できるかを問う問題。