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なぜ高齢者はすぐ脱水になるのか ― 4つの視点で理解する

看護師国家試験 第112回 午前 第87問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第87問

高齢者に脱水が起こりやすくなる要因はどれか。2つ選べ。

  1. 1.骨量の減少
  2. 2.筋肉量の減少
  3. 3.細胞内液量の減少
  4. 4.渇中枢の感受性の亢進
  5. 5.抗利尿ホルモンの反応性の亢進

対話形式の解説

博士 博士

今日は高齢者の脱水じゃ。臨床でも国試でも非常に重要なテーマで、夏場だけでなく一年中気をつけるべき問題じゃよ。

サクラ サクラ

まず基本から。高齢者の体内水分ってどのくらいですか?

博士 博士

新生児で約80%、成人で約60%、高齢者では約50%まで下がる。既にスタート地点で水分量が少ないのじゃ。

サクラ サクラ

どうして水分量が減るんですか?

博士 博士

体内の水は主に筋肉と細胞内液に蓄えられている。加齢でサルコペニアが進み筋肉量が減り、細胞内液も減少するので、貯水タンクが小さくなるイメージじゃ。

サクラ サクラ

筋肉の水分含有量って多いんですね。

博士 博士

筋肉は約75%が水分じゃ。一方、脂肪は10〜20%程度しか水を含まない。だから筋肉が落ちて脂肪が増えると、体重が変わらなくても体内水分量は減ってしまう。

サクラ サクラ

口の渇きは感じないんですか?

博士 博士

渇中枢の感受性が低下するので口渇を感じにくい。『喉が渇いたら飲む』では既に手遅れなことが多いのじゃ。

サクラ サクラ

腎臓はどう変わりますか?

博士 博士

糸球体濾過量低下、尿細管の濃縮能低下、ADHへの反応性低下で希釈尿が多く出る。『水分が欲しいのに保持できない』状態になるのじゃ。

サクラ サクラ

社会的な要因もありそうですね。

博士 博士

あるぞ。夜間頻尿を嫌がって水分を控える、トイレまでの移動が大変、認知症で飲水を忘れる、嚥下障害でむせやすい、利尿薬内服中、などじゃ。

サクラ サクラ

脱水の兆候はどう見抜きますか?

博士 博士

高齢者では典型的な口渇・皮膚ツルゴール低下が出にくい。むしろ食欲低下、微熱、尿量減少、腋窩乾燥、意識変容、せん妄、転倒増加など非特異的な形で現れる。

サクラ サクラ

看護予防策はどう工夫すれば?

博士 博士

1日1〜1.5Lを目安に、起床時・食事時・入浴前後・就寝前など飲水タイミングを設定する。とろみ水やゼリー、スープ、果物での水分補給、排泄環境整備も重要じゃ。

サクラ サクラ

骨量の減少は脱水と関係ありますか?

博士 博士

ない。骨は水分保持にほぼ寄与しないからな。骨量減少は骨折や転倒リスクの問題じゃよ。

サクラ サクラ

じゃあ今回の答えは筋肉量の減少と細胞内液量の減少ですね。

博士 博士

その通り!渇中枢とADHは『亢進』ではなく『低下』するのがポイントじゃ。高齢者の脱水は命に関わるから、常に先回りした水分ケアを心がけよう。

POINT

高齢者に脱水が起こりやすい背景には、体内水分量の貯蔵庫である筋肉量と細胞内液量の減少がある。加齢で筋肉量が減り、細胞内液も縮小することで、体内水分は成人の約60%から約50%へ低下する。さらに渇中枢の感受性低下、腎の尿濃縮能低下、ADH反応性低下により水分摂取・保持が難しくなり、利尿薬使用や排泄環境への配慮不足といった社会的要因も重なる。看護師は口渇を頼らず、定時の水分摂取計画、食事からの水分補給、意識変容や尿量変化などの非特異的サイン観察を通じて、脱水を未然に防ぐ実践が求められる。

解答・解説

正解は 2 3 です

問題文:高齢者に脱水が起こりやすくなる要因はどれか。2つ選べ。

解説:正解は 2 と 3 です。高齢者は体内水分保持の主な貯蔵庫である筋肉量と細胞内液量がともに減少するため、同じ水分喪失でも成人より相対的に大きな脱水を招く。成人の体内水分は約60%だが高齢者では約50%程度に低下し、しかも口渇感の鈍化、腎濃縮能低下、ADH反応性低下により代償もしにくい。

選択肢考察

  1. × 1.  骨量の減少

    加齢で骨量は確かに減るが、骨は水分保持にほとんど寄与しないため脱水の直接的要因にはならない。骨粗鬆症・骨折リスクの要因となる。

  2. 2.  筋肉量の減少

    筋肉は体内で最も水分含有量が多い組織(約75%が水分)。サルコペニアで筋量が減ると貯水量が減り、脱水を起こしやすくなる。

  3. 3.  細胞内液量の減少

    加齢とともに細胞内液が減少し、体液全体に占める割合が低下する。余裕がない状態なので、軽度の水分喪失でも循環血漿量減少に波及する。

  4. × 4.  渇中枢の感受性の亢進

    加齢で視床下部の渇中枢の感受性は『低下』する。喉が渇いても気づきにくく、水分摂取が遅れがちになる。

  5. × 5.  抗利尿ホルモンの反応性の亢進

    ADHへの腎尿細管の反応性が『低下』し、尿濃縮能が落ちて希釈尿が多く出る。水分保持が難しくなり脱水の一因となる。

高齢者の脱水リスクを『身体組成の変化』『感覚の変化』『腎機能の変化』『社会的要因』の4軸で整理すると理解しやすい。身体組成では筋肉量・細胞内液量減少、感覚では口渇低下、腎機能ではADH反応性低下・濃縮能低下、社会的要因ではトイレを気にしての飲水制限、認知機能低下、嚥下障害、薬剤(利尿薬)などがある。脱水の初期兆候は倦怠感、食欲低下、微熱、尿量減少、皮膚ツルゴール低下、腋窩乾燥、意識変容など非特異的で、特に高齢者ではせん妄や転倒として現れることも多い。予防として『1日1〜1.5Lの水分を目安に、食事・お茶・ゼリー等で分散摂取』を指導する。

高齢者の脱水リスクは複合的。体内水分の貯蔵庫である筋肉と細胞内液の減少を正しく選べるかがポイント。