つまずきと前脛骨筋の関係
看護師国家試験 第113回 午前 第50問 / 老年看護学 / 高齢者に特有な症候・疾患・障害と看護
国試問題にチャレンジ
高齢者の歩行時につまずきが見られる場合、筋力低下が考えられる筋肉はどれか。
- 1.大殿筋
- 2.前脛骨筋
- 3.下腿三頭筋
- 4.大腿四頭筋
対話形式の解説
博士
高齢者が歩行中につまずく場面を思い浮かべてみよ。原因は何じゃ?
アユム
すり足気味になって、つま先が床や段差に引っかかってしまうことが多いと思います。
博士
よく観察しておる。つま先を持ち上げる動きは何と呼ぶかの?
アユム
足関節の背屈です。主に前脛骨筋が働きます。
博士
そのとおり。選択肢2の前脛骨筋が正解じゃ。下腿三頭筋はどうじゃ?
アユム
底屈筋で、蹴り出しに使われる筋です。つま先を下げる側なのでつまずきとは違いますね。
博士
大腿四頭筋は?
アユム
膝を伸ばす筋で、立ち上がりや階段昇降に重要ですが、足首の背屈には関与しません。
博士
大殿筋は?
アユム
股関節伸展で体を前に進める動きに関与しますが、直接の原因ではないですね。
博士
では前脛骨筋を鍛えるにはどんな運動があるかの?
アユム
座ってつま先を持ち上げるトゥレイズが代表的です。
博士
転倒予防には筋力訓練以外に何が必要かの?
アユム
履物や段差の確認、視力、服用薬の見直しなど環境と全身状態のチェックも大切です。
博士
素晴らしい。包括的な転倒予防で高齢者の安全を守っていこうぞ。
アユム
はい、機能解剖の理解を基礎に、生活全体を見る視点を持ちます。
POINT
歩行時のつまずきは、遊脚期にトゥクリアランスを確保する前脛骨筋の筋力低下が主因です。下腿三頭筋は底屈、大腿四頭筋は膝伸展、大殿筋は股関節伸展を担いますが、直接的には関与しません。トゥレイズなどの筋力訓練に加え、履物・段差・視力・服用薬の確認といった包括的な転倒予防が高齢者の安全につながります。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:高齢者の歩行時につまずきが見られる場合、筋力低下が考えられる筋肉はどれか。
解説:正解は2です。前脛骨筋は足関節の背屈を担い、遊脚期につま先を持ち上げて床から離す働きがあります。この筋力が低下するとつま先が引きずられ、つまずきや転倒の原因になります。
選択肢考察
-
× 1. 大殿筋
大殿筋は股関節伸展や立ち上がり動作を担う大きな筋で、歩行時の姿勢保持や蹴り出しに関与しますが、足先の引っかかりには直接関係しません。
-
○ 2. 前脛骨筋
前脛骨筋は下腿前面にあり足関節を背屈させる筋で、遊脚期にトゥクリアランス(つま先と床の間の隙間)を確保します。筋力低下は下垂足傾向を招き、絨毯や敷居などわずかな段差でつまずきやすくなります。
-
× 3. 下腿三頭筋
下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)は足関節底屈筋で、立脚後期の蹴り出しに重要です。つま先を下げる方向の動きであり、つまずきの直接原因にはなりません。
-
× 4. 大腿四頭筋
大腿四頭筋は膝関節伸展筋で、立ち上がりや階段昇降、歩行時の膝の支持に寄与しますが、足関節背屈には関与せず、つまずきの直接原因ではありません。
高齢者の転倒予防には、前脛骨筋を鍛えるトゥレイズ(座位でつま先を持ち上げる運動)、大腿四頭筋のスクワット、下腿三頭筋のヒールレイズ、大殿筋のヒップリフトをバランスよく行うことが有効です。加えて、視力・履物・住環境の整備、ふらつき薬剤の見直し、ビタミンD不足への対応も重要な介入ポイントです。
歩行時のつまずきの原因となる筋と、その解剖学的機能の対応を理解しているかを問う問題です。
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