感染力最強クラス!麻疹の国試ポイントを総ざらい
看護師国家試験 第106回 午前 第86問 / 健康支援と社会保障制度 / 感染症と生活環境への対策
国試問題にチャレンジ
麻疹( measles )に関して正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.合併症として脳炎がある。
- 2.感染力は発疹期が最も強い。
- 3.効果的な抗ウイルス薬がある。
- 4.2回のワクチン定期接種が行われている。
- 5.エンテロウイルスの感染によって発症する。
対話形式の解説
博士
今日は麻疹、いわゆる「はしか」について学ぼうじゃないか。感染症の中でも最強クラスの感染力を持つ重要疾患じゃ。
アユム
麻疹って子どもの病気ってイメージですけど、最近は大人もかかってるって聞きます。
博士
その通り。ワクチン未接種や1回接種のみの大人が海外で感染して持ち帰るケースが問題になっておる。日本は2015年にWHOから麻疹排除国と認定されたが、輸入例が散発しておるんじゃ。
アユム
感染経路ってどうなっているんですか?
博士
麻疹は空気感染、飛沫感染、接触感染のすべてで伝播する。基本再生産数、つまり1人の患者から何人に感染が広がるかを表す数値はR0=12〜18。これは新型コロナの数倍じゃ。
アユム
めちゃくちゃ強いですね…。
博士
そうじゃ。だから空気感染予防策、つまりN95マスクと陰圧室が必要になる。
アユム
選択肢1の「合併症として脳炎がある」は正解ですか?
博士
正解じゃ。麻疹の合併症は肺炎、中耳炎、クループなどに加え、急性脳炎を1000例に0.5〜1例の頻度で起こす。さらに怖いのが数年後に発症する「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」じゃ。
アユム
SSPE…それは何ですか?
博士
麻疹感染の数年〜10年後に発症する致死性の進行性脳症じゃ。知能低下、ミオクローヌス、運動障害を起こし最終的に死に至る。麻疹がいかに怖い病気か分かるじゃろう。
アユム
選択肢2の「感染力は発疹期が最も強い」は?
博士
これは×じゃ。最も感染力が強いのは発疹が出る前の「カタル期」。発熱、咳、鼻汁、結膜炎などのいわゆる風邪症状がある時期じゃよ。
アユム
え、発疹が出る前に一番うつるんですか?
博士
そうじゃ。だから「麻疹と分からない段階」で周囲に広がる。これが麻疹の怖さの一つじゃな。
アユム
でもカタル期の特徴的な所見ってあるんですか?
博士
ある。「コプリック斑」じゃ。頬粘膜にできる白色の小斑点で、麻疹に特徴的な早期診断所見じゃ。
アユム
選択肢3の「効果的な抗ウイルス薬」はどうですか?
博士
これは×。麻疹ウイルスに対する特異的な抗ウイルス薬は残念ながら存在しない。治療は対症療法のみ。だから予防、つまりワクチンが最重要じゃ。
アユム
選択肢4の2回接種は正解ですね。
博士
その通り。日本では2006年からMRワクチン、つまり麻疹風疹混合ワクチンの2回定期接種が始まった。1期は1歳、2期は小学校就学前の1年間じゃ。
アユム
なぜ2回必要なんですか?
博士
1回では免疫がつかない人が5〜10%おるからじゃ。2回接種で95%以上に免疫がつく。集団免疫を維持するには接種率95%以上が必要とされておる。
アユム
選択肢5のエンテロウイルスは?
博士
エンテロウイルスは手足口病、ヘルパンギーナ、急性出血性結膜炎などの原因ウイルス。麻疹の原因は麻疹ウイルスで、パラミクソウイルス科じゃ。名前が似ているから混同しないようにの。
アユム
臨床経過を整理すると?
博士
潜伏期10〜12日→カタル期→発疹期→回復期の4期。発疹期には一度解熱した後に再発熱しながら耳後部から発疹が出現するのが特徴じゃよ。
POINT
麻疹は麻疹ウイルスによる極めて感染力の強い急性熱性発疹性ウイルス感染症で、空気感染・飛沫感染・接触感染のすべてで伝播します。合併症として肺炎・中耳炎・脳炎があり、数年後に発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は致死的で、決して軽視できない疾患です。特異的抗ウイルス薬はないためMRワクチンの2回定期接種(1期1歳・2期就学前)による予防が最重要で、感染力のピークは発疹出現前のカタル期である点が臨床・公衆衛生上の重要ポイントとなります。看護師は接触歴と予防接種歴の聴取、コプリック斑など早期所見の観察、空気感染予防策の徹底により、自らと他の患者を感染から守る役割を担います。
解答・解説
正解は 1 ・ 4 です
問題文:麻疹( measles )に関して正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 1 と 4 です。麻疹は麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科)による急性熱性発疹性ウイルス感染症で、空気感染・飛沫感染・接触感染のすべてで伝播する極めて感染力の強い疾患である(基本再生産数R0は12〜18)。合併症として肺炎、中耳炎に加えて脳炎を1000例に0.5〜1例の頻度で合併し、さらに数年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することもある重篤な疾患である。日本では2006年から麻疹含有ワクチン(MRワクチン)の2回定期接種制度が導入され、1期は1歳、2期は小学校就学前の1年間(5〜7歳未満)に接種されている。
選択肢考察
-
○ 1. 合併症として脳炎がある。
麻疹の合併症として肺炎、中耳炎、クループに加え、1000例に0.5〜1例の頻度で急性脳炎を合併する。さらに数年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することもある。
-
× 2. 感染力は発疹期が最も強い。
感染力が最も強いのは発疹出現前のカタル期(発熱・咳・鼻汁・結膜炎などのカタル症状がある時期)。発疹期に入ってからよりも、この時期の曝露で周囲への伝播が起こる。
-
× 3. 効果的な抗ウイルス薬がある。
麻疹ウイルスに対する特異的な抗ウイルス薬は存在しない。治療は対症療法が中心で、ワクチンによる予防が最大の対策である。曝露後72時間以内のワクチン接種で発症予防が期待できる。
-
○ 4. 2回のワクチン定期接種が行われている。
日本では2006年から麻疹風疹混合(MR)ワクチンの2回定期接種制度が開始されている。1期は1歳、2期は小学校就学前の1年間に接種する。
-
× 5. エンテロウイルスの感染によって発症する。
麻疹の原因病原体は麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科モルビリウイルス属)。エンテロウイルスは手足口病・ヘルパンギーナ・急性出血性結膜炎などの原因ウイルスで別物である。
麻疹の臨床経過は①潜伏期(10〜12日)→②カタル期(発熱・咳・鼻汁・結膜炎、口腔内にコプリック斑)→③発疹期(一旦解熱した後に再発熱しながら耳後部から発疹が出現し全身へ広がる)→④回復期、の4期に分かれる。コプリック斑(頬粘膜の白色小斑点)は麻疹の早期診断に有用な特徴的所見。2015年にWHOは日本を麻疹排除国と認定したが、海外からの輸入例による散発的流行は続いている。感染対策は空気感染予防策(N95マスク、陰圧室)が必要。
麻疹の病原体、感染力のピーク、合併症、ワクチン制度を総合的に問う問題。公衆衛生上重要な疾患として頻出。
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