リンパは筋肉で流れる!静かな循環系のしくみ
看護師国家試験 第112回 午後 第27問 / 人体の構造・機能 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
リンパの流れで正しいのはどれか。
- 1.成人の胸管を流れる量は1日約10Lである。
- 2.右上半身のリンパは胸管に流入する。
- 3.中枢から末梢への一方向に流れる。
- 4.筋運動を行うと流量は増加する。
対話形式の解説
博士
今日はリンパ系について学ぶぞ。血管のような派手さはないが、とても大事な循環系じゃ。
サクラ
リンパってよく耳にしますが、具体的に何を運んでいるんですか?
博士
リンパは3つの大事な役割を担っておる。①毛細血管から漏れ出た組織間液を回収して静脈に戻す、②腸から吸収した脂肪(乳びと呼ばれる)を運搬する、③リンパ節で免疫応答の場を提供する、じゃ。
サクラ
血液と何が違うんでしょう?
博士
最大の違いはポンプがないことじゃ。血液は心臓という強力なポンプで押し出されるが、リンパ管には自発収縮もあるが非常に弱い。では何で流れるのか?
サクラ
心臓がないと流れない気がしますが…
博士
そこが大事なポイントじゃ。リンパは①周囲の骨格筋の収縮(筋ポンプ作用)②呼吸による胸腔内圧変動③リンパ管壁のわずかな自発収縮④リンパ管内の弁による逆流防止、この4つで末梢から中枢へ流れておる。
サクラ
だから運動すると流量が増えるんですね。
博士
その通り!だからリンパ浮腫のケアでは運動療法やマッサージ、弾性ストッキングでの機械的圧迫が治療の柱になる。
サクラ
リンパの量ってどのくらいなんですか?
博士
成人で1日約2〜4Lじゃ。選択肢にあった10Lは多すぎ。全身の血漿量が約3Lなので、10Lも流れたら体液バランスが崩壊してしまうのう。
サクラ
最終的にどこに戻るんですか?
博士
全身のリンパは最終的に鎖骨下静脈へ合流する。ここが少しややこしい。左上半身(左頭頸部・左上肢)と下半身全体のリンパは胸管という大きな管に集まり、左静脈角で左鎖骨下静脈に合流する。
サクラ
右半身はどうなるんですか?
博士
右上半身(右頭頸部・右上肢・右胸部)のリンパだけは右リンパ本幹を通り、右静脈角で右鎖骨下静脈に注ぐ。つまり、胸管はほぼ体の大部分をカバーし、右リンパ本幹は右上部だけを担当しているということじゃ。
サクラ
流れの向きはどうでしたっけ?
博士
末梢から中枢への一方向じゃ。動脈のように中枢から末梢へ流れるわけではない。リンパ管の内側にも静脈と同様の弁があり、逆流を防いでおる。
サクラ
乳がん術後のリンパ浮腫って、リンパ節を取るからですよね。
博士
そうじゃ。腋窩リンパ節郭清で還流経路が損なわれ、腕にリンパ液が溜まる。だから術後は患肢を挙上したり、弾性スリーブを着けたり、軽い運動で筋ポンプを働かせるケアが重要になる。
サクラ
リンパ節は免疫の関門でもあるんですよね。
博士
その通り。細菌や異物、がん細胞もリンパ節でせき止められ、そこで免疫応答が起こる。リンパ節の腫脹は感染症やがん転移の重要な所見じゃ。
POINT
リンパ系は血液のような強力なポンプを持たず、筋ポンプ作用・呼吸運動・弁による逆流防止によって末梢から中枢へ一方向に流れる循環系です。成人では1日に2〜4Lが胸管を経由して静脈に戻り、左上半身と下半身全体のリンパは胸管から左静脈角、右上半身のみが右リンパ本幹から右静脈角に合流します。筋運動によって流量が増える性質は、乳がん術後のリンパ浮腫ケアや下肢浮腫予防における運動療法・弾性ストッキングの根拠となっており、解剖と臨床を結びつけて理解することが重要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:リンパの流れで正しいのはどれか。
解説:正解は 4 の『筋運動を行うと流量は増加する』です。リンパ管は心臓のような強力なポンプを持たず、周囲の骨格筋の収縮・呼吸による胸腔内圧変動・リンパ管自体のわずかな自発収縮・弁による逆流防止で末梢から中枢へと流れます。したがって運動で筋ポンプ作用が働くとリンパ流量は増加します。
選択肢考察
-
× 1. 成人の胸管を流れる量は1日約10Lである。
成人の胸管を流れるリンパ液は1日約2〜4L。10Lは過大で、全身の血漿量(約3L)と比較してもあり得ない量である。
-
× 2. 右上半身のリンパは胸管に流入する。
右上半身(右頭頸部・右上肢・右胸部)のリンパは右リンパ本幹に集まり、右静脈角で鎖骨下静脈に合流する。胸管に流入するのは左上半身と下半身全体のリンパである。
-
× 3. 中枢から末梢への一方向に流れる。
リンパは末梢(組織間)から中枢(静脈角)への一方向の流れ。動脈ではないので逆向き。リンパ管内の弁が逆流を防ぐ。
-
○ 4. 筋運動を行うと流量は増加する。
骨格筋の収縮でリンパ管が圧迫され、弁に誘導されて中枢側へ押し出されるため流量が増加する。リンパ浮腫のケアで運動療法が推奨される根拠でもある。
リンパ系は①組織間液の回収 ②脂肪(特に長鎖脂肪酸)の吸収・輸送 ③免疫機能の3つの役割を持つ。腸管からの乳び(カイロミクロンを含む)は腸リンパ本幹→乳び槽→胸管を通り左静脈角に注ぐ。リンパ節は細菌や異物を濾過し免疫応答の場となる。臨床では乳がん術後の腋窩リンパ節郭清後の上肢リンパ浮腫や、下肢静脈瘤・深部静脈血栓後のリンパ還流障害が重要で、弾性ストッキングやマッサージ、運動による筋ポンプ作用活用がケアの柱となる。
リンパの流れの方向・流量・駆動機序・解剖学的経路(胸管/右リンパ本幹)を整理する問題。ポンプを持たないリンパが流れるしくみを筋運動と結びつけて理解することがポイント。
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