心臓の電気回路を旅しよう!His束は唯一の橋渡し
看護師国家試験 第114回 午後 第76問 / 人体の構造・機能 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
心房と心室の間を電気的に結合し、心房側の興奮を心室側に伝えるのはどれか。
- 1.心筋層
- 2.心内膜
- 3.洞房結節
- 4.His<ヒス>束
- 5.Purkinje<プルキンエ>線維
対話形式の解説
博士
今日は心臓の刺激伝導系、特にHis束の役割を学ぶのじゃ。
アユム
心臓って勝手に動いていますよね。あれってどうやってリズムを作っているんですか?
博士
良い質問じゃ。心臓には自分で電気を起こす「ペースメーカー細胞」があるのじゃ。その代表が右心房上部の洞房結節(SA結節)じゃよ。
アユム
洞房結節がスタート地点なんですね。
博士
うむ。洞房結節で発生した電気は心房を広がり、次に房室結節(AV結節)に集まる。ここでちょっと伝導が遅くなるのが大事なポイントじゃ。
アユム
わざと遅くするんですか?
博士
そう、これを「房室遅延」と呼ぶのじゃ。心房がしっかり収縮して血液を心室に送り込んでから、心室が収縮するためのタイミング調整なのじゃよ。
アユム
なるほど、心房と心室がずれて動く理由がわかりました。
博士
さて、ここで核心。心房と心室の間は実は電気的に絶縁されておる。「線維輪」という結合組織で隔てられておるのじゃ。
アユム
え、絶縁されているなら電気が伝わらないのでは?
博士
そこを橋渡しするのがHis束(ヒス束)!房室結節からの興奮を唯一通せる電気的通路なのじゃ。
アユム
だから問題の答えはHis束なんですね!
博士
その通り。His束を通った興奮は心室中隔に入り、右脚と左脚に分かれ、最終的にプルキンエ線維を経由して心室筋全体に広がるのじゃ。
アユム
プルキンエ線維はラストランナーなんですね。
博士
うむ。流れをまとめると「洞房結節 → 心房筋 → 房室結節 → His束 → 右脚・左脚 → プルキンエ線維 → 心室筋」じゃ。
アユム
His束に障害が起きるとどうなるんですか?
博士
房室ブロックになるのじゃ。特にHis束以下(infra-His)で完全ブロックが起きると、心室への信号が途絶えて重い徐脈や失神(アダムス・ストークス発作)を引き起こすことがある。ペースメーカー植込みの適応じゃよ。
アユム
心臓の電気回路って、まるで精密な配線のようですね。
博士
その通り。心電図はこの電気の流れを体表から記録したもの。P波が心房興奮、QRSが心室興奮、PQ間隔が房室伝導時間を示すのじゃ。仕組みを理解すれば心電図も読めるようになるぞ。
POINT
心房と心室の間は線維輪という結合組織で電気的に絶縁されており、唯一の伝導路がHis束(房室束)です。刺激は洞房結節で発生し、心房筋を経て房室結節に集まり、His束で心室中隔に入り、右脚・左脚を経てプルキンエ線維から心室筋全体に伝わります。房室結節での伝導遅延(房室遅延)により、心房収縮が完了してから心室収縮が始まる効率的なポンプ機能が実現します。His束以下の障害は完全房室ブロックとなり徐脈・失神を起こすため、ペースメーカー適応の判断にも関わる臨床上重要な構造であり、刺激伝導系全体の流れと各構造の役割を整理して理解しておくことが、心電図読解や不整脈の理解に直結します。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:心房と心室の間を電気的に結合し、心房側の興奮を心室側に伝えるのはどれか。
解説:正解は 4 です。心房と心室の間は線維輪と呼ばれる結合組織で電気的に絶縁されており、唯一の電気的通路がHis(ヒス)束(房室束)である。房室結節を経た電気興奮はHis束を通って心室中隔に入り、右脚・左脚に分岐し、最終的にプルキンエ線維を介して心室筋全体に伝わる。His束は心房と心室の電気的結合を担う「橋渡し役」として刺激伝導系の中で極めて重要な構造である。
選択肢考察
-
× 1. 心筋層
心臓壁の主体をなす作業心筋の層で、電気刺激を受けて収縮する役割。心房と心室の間を結ぶ専用の伝導路ではない。
-
× 2. 心内膜
心臓内腔を覆う薄い膜。血液との接触面を平滑に保つ役割で、電気伝導には関与しない。
-
× 3. 洞房結節
右心房上部に位置する刺激発生のペースメーカー。心拍リズムの起点であるが、心房から心室への橋渡しは行わない。
-
○ 4. His<ヒス>束
房室結節からの興奮を心室中隔へ伝える唯一の電気的通路。線維輪により絶縁された心房‐心室間を電気的に結合する。
-
× 5. Purkinje<プルキンエ>線維
心室筋内に分布し、His束‐脚を経た興奮を心室筋全体に素早く伝える終末伝導線維。心房から心室への橋渡し役ではない。
刺激伝導系の流れは「洞房結節(ペースメーカー)→ 心房筋 → 房室結節 → His束 → 右脚・左脚 → プルキンエ線維 → 心室筋」の順。房室結節では伝導速度が遅くなり、心房収縮が完了してから心室収縮が始まる「房室遅延」が生じる。His束やその下位(脚)に障害が生じると房室ブロック(特にⅡ度Mobitz Ⅱ型・Ⅲ度)となり、徐脈や失神(Adams-Stokes発作)を起こすことがあり、ペースメーカー植込みの適応となる。
刺激伝導系のなかで「心房と心室を電気的に結合する唯一の通路」を問う問題。線維輪による絶縁とHis束の橋渡し機能の理解がポイント。
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