腎動脈狭窄が高血圧を引き起こす?二次性高血圧のしくみ
看護師国家試験 第114回 午後 第79問 / 人体の構造・機能 / 循環器系
国試問題にチャレンジ
狭窄による血流低下で二次性高血圧(secondary hypertension)を起こす血管はどれか。
- 1.冠動脈
- 2.肝動脈
- 3.頸動脈
- 4.腎動脈
- 5.脳動脈
対話形式の解説
博士
今日は二次性高血圧のなかでも腎血管性高血圧について学ぶのじゃ。
サクラ
二次性高血圧って何ですか?普通の高血圧と違うんですか?
博士
良い質問じゃ。高血圧の約9割は原因不明の本態性高血圧。残りの1割が原因のはっきりした「二次性高血圧」で、腎臓・内分泌・血管の異常が背景にあるのじゃ。
サクラ
腎臓が関わっているんですね。
博士
そう。腎臓は血圧調節の司令塔のひとつ。レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系、通称RAA系が体内に備わっておる。
サクラ
RAA系って国試でよく出ますよね。
博士
うむ。腎臓の糸球体傍細胞というセンサーが「腎血流が足りない」と感じると、レニンを分泌する。レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変える。
サクラ
次にアンジオテンシン変換酵素(ACE)の出番ですね。
博士
その通り!ACEがアンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡに変換する。アンジオテンシンⅡは強力な血管収縮物質で、さらに副腎皮質からアルドステロンを分泌させてNaと水を体内に保持する。
サクラ
血管が縮んで体液量も増えるなら、血圧は当然上がりますね。
博士
その通り。これが腎動脈狭窄で起こる仕組みじゃ。狭窄部の下流の腎臓は「血流不足」と判断して、本当は全身血圧が正常でもRAA系を強く動かしてしまう。
サクラ
腎臓が誤って判断するんですね。
博士
そう。これが腎血管性高血圧という二次性高血圧じゃ。だから問題の答えは「腎動脈」じゃよ。
サクラ
他の選択肢の動脈はどうなんですか?
博士
冠動脈狭窄は狭心症や心筋梗塞、頸動脈・脳動脈狭窄は脳梗塞やTIAを起こす。肝動脈は肝梗塞じゃ。これらは虚血症状を起こすが、血圧調節ホルモン系には直接関与しないのじゃ。
サクラ
だから二次性高血圧の原因にはならないんですね。
博士
その通り。腎動脈狭窄の原因は若年女性では線維筋性異形成(FMD)、高齢者では動脈硬化が多い。治療はACE阻害薬やARBが第一選択じゃ。
サクラ
ただし両側狭窄だとACE阻害薬は使えないと聞きました。
博士
鋭いぞ!両側腎動脈狭窄でACE阻害薬を使うと、糸球体内圧が下がりすぎて急性腎障害を起こすため禁忌じゃ。経皮的腎動脈形成術(PTRA)も選択肢になる。
サクラ
血圧の薬を飲んでも下がらない高血圧では、二次性高血圧を疑う必要があるんですね。
博士
その通り。「治療抵抗性高血圧」では二次性高血圧のスクリーニングを行うのが鉄則じゃ。
POINT
腎動脈狭窄では腎血流が低下し、糸球体傍細胞からレニンが分泌され、アンジオテンシンⅠ・Ⅱを介してアルドステロン分泌と末梢血管収縮が起こり、血圧が上昇します。これを腎血管性高血圧と呼び、二次性高血圧の代表的病態です。冠動脈・肝動脈・頸動脈・脳動脈の狭窄はそれぞれ虚血性疾患(狭心症・肝梗塞・脳梗塞)を起こしますが、血圧調節ホルモン系には直接関与しないため二次性高血圧の原因とはなりません。治療抵抗性高血圧や若年発症高血圧では二次性高血圧のスクリーニングが推奨され、腎血管性高血圧に対してはACE阻害薬・ARBが第一選択ですが、両側腎動脈狭窄では腎機能悪化を招くため禁忌となるなど、病態と治療法の知識は臨床判断に直結します。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:狭窄による血流低下で二次性高血圧(secondary hypertension)を起こす血管はどれか。
解説:正解は 4 です。腎動脈狭窄では腎血流量が低下し、糸球体傍細胞からのレニン分泌が亢進する。レニンはアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変換し、ACE(アンジオテンシン変換酵素)によりアンジオテンシンⅡが生成される。アンジオテンシンⅡは強力な末梢血管収縮作用と、副腎皮質球状層からのアルドステロン分泌促進作用(Na・水再吸収亢進)をもち、結果として全身血圧が上昇する。これを腎血管性高血圧(renovascular hypertension)と呼び、二次性高血圧の代表的な病態である。
選択肢考察
-
× 1. 冠動脈
冠動脈狭窄は心筋虚血をきたし狭心症や心筋梗塞の原因となるが、血圧調節ホルモン系を直接活性化しないため二次性高血圧の原因にはならない。
-
× 2. 肝動脈
肝動脈狭窄は肝梗塞や虚血性肝障害の原因となるが、血圧調節系には関与せず二次性高血圧の原因とはならない。
-
× 3. 頸動脈
頸動脈狭窄は脳虚血や脳梗塞、TIA(一過性脳虚血発作)の原因となる。圧受容器反射への影響はあるものの、二次性高血圧の代表的原因ではない。
-
○ 4. 腎動脈
腎動脈狭窄により腎血流が低下し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)が活性化されて血圧が上昇する。腎血管性高血圧の病態であり二次性高血圧の代表である。
-
× 5. 脳動脈
脳動脈狭窄は脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因となるが、血圧調節ホルモンを変化させる仕組みはなく二次性高血圧の直接原因にはならない。
二次性高血圧の代表的な原因は、(1) 腎実質性(慢性糸球体腎炎・糖尿病性腎症など)、(2) 腎血管性(腎動脈狭窄)、(3) 内分泌性(原発性アルドステロン症・クッシング症候群・褐色細胞腫など)、(4) 大動脈縮窄症、(5) 睡眠時無呼吸症候群、(6) 薬剤性(NSAIDs・経口避妊薬など)。腎動脈狭窄の原因は若年女性では線維筋性異形成(FMD)、高齢者では動脈硬化が多い。治療はACE阻害薬・ARBが第一選択だが、両側腎動脈狭窄では腎機能悪化を起こすため禁忌となる。経皮的腎動脈形成術(PTRA)も適応となる。
二次性高血圧の代表である腎血管性高血圧の病態(腎動脈狭窄→RAA系活性化→高血圧)を、他臓器の動脈狭窄が引き起こす虚血性疾患と区別して理解しているかを問う問題。
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