頭蓋内出血のCT画像鑑別
看護師国家試験 第105回 午前 第67問 / 人体の構造・機能 / 神経系
国試問題にチャレンジ
頭部CTを以下に示す。 出血部位について正しいのはどれか。
- 1.皮下組織
- 2.硬膜外腔
- 3.くも膜下腔
- 4.脳実質内
- 5.脳室内
対話形式の解説
博士
頭部外傷の患者でCT画像を見るとき、どこに出血があるかで治療方針が大きく変わる。各部位の典型画像を整理しよう。
サクラ
博士、本問の画像は頭蓋骨のすぐ内側に凸レンズ状の白い部分があります。正解は2の硬膜外腔ですね?
博士
そのとおり。硬膜外血腫の典型画像じゃ。頭蓋骨内板と硬膜の間、つまり硬膜外腔に血液が貯留した状態じゃな。
サクラ
凸レンズ状になる理由は何ですか?
博士
硬膜は頭蓋骨の縫合線で骨膜と強く接着しておる。出血が硬膜を剥がしながら広がっても、縫合線は越えられないため、レモン型の凸レンズ状になるんじゃ。英語ではbiconvex lens-shapedと表現する。
サクラ
原因は何ですか?
博士
多くは側頭部への強打で側頭骨鱗部が骨折し、骨折片が中硬膜動脈を損傷することで動脈性出血を起こす。動脈性じゃから出血スピードが速く、短時間で意識障害が進行する。
サクラ
意識清明期って聞いたことがあります。
博士
そうじゃ、lucid intervalと呼ぶ。受傷直後に一時意識が戻った後、数時間かけて血腫が増大して再び意識が悪化する特徴的経過じゃ。この「一度起きて、また倒れる」パターンを見逃すと致命的になる。
サクラ
治療は?
博士
血腫量が大きいもの、midline shiftがあるもの、意識障害が進行するものでは緊急開頭血腫除去術が必要じゃ。迅速な手術で予後は比較的よい。
サクラ
硬膜下血腫との違いは?
博士
急性硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間に血液が貯留する状態で、架橋静脈の断裂による静脈性出血が原因じゃ。CTでは三日月型(crescent shape)に広がり、縫合線を越えて広がるのが特徴。高齢者や抗凝固療法中の患者に多い。
サクラ
慢性硬膜下血腫もありますよね?
博士
軽微な頭部外傷から数週間〜数か月後に発症する。認知症様症状、歩行障害、片麻痺などで気づかれる。穿頭洗浄術で治療可能じゃ。
サクラ
くも膜下出血の画像は?
博士
脳底槽、シルビウス裂、大脳縦裂に沿って高吸収域が広がり、五角形(ペンタゴン)やヒトデ型に見える。原因の多くは脳動脈瘤破裂で、突然の激しい頭痛、意識障害、嘔吐が典型症状じゃ。
サクラ
選択肢4の脳実質内出血は?
博士
高血圧性が多く、被殻、視床、小脳、橋などに好発する。CTでは脳組織内に塊状の高吸収域を認め、大きければmidline shiftも生じる。
サクラ
脳室内出血は?
博士
脳室内に高吸収域が貯留し、しばしば水平レベルを形成する。脳実質内出血が穿破したものと、脈絡叢からの出血によるものがある。水頭症合併に注意じゃ。
サクラ
CTで出血はいつまで白く見えますか?
博士
急性期(発症数時間〜数日)は高吸収(白)じゃが、時間経過で徐々に吸収値が低下し、1〜2週間で脳実質と等吸収、さらに時間が経つと低吸収になる。慢性硬膜下血腫が低〜等吸収に見える理由じゃな。
サクラ
画像と臨床症状をあわせて考えることが大事ですね。
博士
そのとおり。看護師として画像所見の意味を理解しておくと、意識レベルの観察や緊急対応の判断に役立つ。頭蓋内出血の鑑別はCT画像の形と位置でおおむねあたりがつくから、しっかり覚えておこう。
POINT
頭蓋骨内板と硬膜の間に凸レンズ状(biconvex)の高吸収域を認めるのは硬膜外血腫の典型画像所見で、側頭骨骨折に伴う中硬膜動脈損傷が主な原因です。受傷直後の意識清明期を経て急激に意識障害が進行する経過が特徴で、緊急開頭血腫除去術が予後を左右します。硬膜下血腫の三日月型、くも膜下出血のヒトデ型、脳実質内出血の塊状高吸収域、脳室内出血のレベル形成など、部位ごとの典型画像を区別して覚えることが重要です。看護師は意識レベルやバイタルの変化に注意を向け、急変時の迅速な対応につなげる観察力を養いましょう。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:頭部CTを以下に示す。 出血部位について正しいのはどれか。
解説:正解は 2 です。CT画像上、頭蓋骨のすぐ内側(硬膜外腔)に凸レンズ状(biconvex, lens-shaped)の高吸収域(白い部分)を認める所見は、硬膜外血腫(epidural hematoma)の典型的な画像所見です。硬膜外血腫は側頭部への強い外力により頭蓋骨骨折(多くは側頭骨鱗部)と中硬膜動脈損傷が生じ、硬膜と頭蓋骨内板の間に動脈性出血が貯留して形成されます。血腫は硬膜と頭蓋骨が縫合線で強く接着しているために縫合線を越えて広がらず、凸レンズ状(レモン型)の形をとるのが特徴です。臨床的には受傷直後に意識清明期(lucid interval)を経て数時間後に急激に意識障害が悪化する経過が典型で、緊急の開頭血腫除去術が必要になります。硬膜下血腫が三日月型(半月型)に広がるのと対照的です。
選択肢考察
-
× 1. 皮下組織
誤りです。皮下血腫であれば頭蓋骨の外側(皮膚〜皮下組織)に高吸収域が生じます。本画像では頭蓋骨の内側に出血が限局しており、皮下組織ではありません。
-
○ 2. 硬膜外腔
正しい選択肢です。頭蓋骨内板と硬膜の間に凸レンズ状(biconvex)の高吸収域を認めるのは硬膜外血腫の典型画像です。中硬膜動脈の動脈性出血が多く、受傷から数時間で急激に意識障害が進行するため緊急手術が必要です。
-
× 3. くも膜下腔
誤りです。くも膜下出血では脳底槽やシルビウス裂、大脳縦裂に沿ってヒトデ型(ペンタゴン状)の高吸収域が広がります。本画像のような凸レンズ状限局性所見ではありません。
-
× 4. 脳実質内
誤りです。脳実質内出血では大脳基底核や視床など脳組織内に塊状の高吸収域を認めます。本画像は頭蓋骨直下に限局した凸レンズ状所見で、脳実質内ではありません。
-
× 5. 脳室内
誤りです。脳室内出血では側脳室や第三脳室・第四脳室内に高吸収域(血液のレベル形成)を認めます。本画像では脳室内に高吸収域を認めません。
頭蓋内出血のCT画像鑑別のキーワードを整理します。硬膜外血腫:凸レンズ状(レモン型)、縫合線を越えない、動脈性、意識清明期あり。急性硬膜下血腫:三日月型(半月型)、縫合線を越える、静脈性(架橋静脈)、高齢者や抗凝固療法中に多い。くも膜下出血:ヒトデ型(ペンタゴン状)、脳底槽・シルビウス裂に沿う、脳動脈瘤破裂が最多原因。脳実質内出血:基底核・視床など脳内の塊状高吸収域、高血圧性が多い。脳室内出血:脳室内の高吸収域とレベル形成、脳実質内出血の穿破が多い。CT画像では急性期出血は高吸収(白)、時間経過とともに吸収値が低下します。
頭蓋骨内板と硬膜の間に凸レンズ状の高吸収域を認めるのは硬膜外血腫の典型所見であり、緊急手術の対象となる。
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