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『海馬』が記憶の司令塔と呼ばれる理由

看護師国家試験 第113回 午後 第81問 / 人体の構造・機能 / 神経系

国試問題にチャレンジ

113回 午後 第81問

短期記憶と関係が深いのはどれか。

  1. 1.
  2. 2.海馬
  3. 3.脊髄
  4. 4.松果体
  5. 5.視床下部

対話形式の解説

博士 博士

今日は記憶に関係する脳の部位を探す問題じゃ。候補の中で答えはわかるかの?

サクラ サクラ

はい、海馬だと思います。

博士 博士

即答じゃな。海馬は側頭葉の内側にある、タツノオトシゴの形をした部位じゃ。

サクラ サクラ

大脳辺縁系の一部でしたよね。

博士 博士

そのとおり。新しい情報を一時保存して、睡眠中などに大脳皮質へ転送し長期記憶に固めるんじゃ。

サクラ サクラ

両側の海馬が壊れるとどうなるのですか?

博士 博士

有名なH.M.という患者は両側海馬を切除され、新しい出来事を覚えられない前向性健忘に陥ったんじゃ。

サクラ サクラ

アルツハイマー病でも海馬が早期に萎縮すると聞きました。

博士 博士

そのとおり、だから認知症では近時記憶障害がまず現れるんじゃ。

サクラ サクラ

他の選択肢も整理しておきたいです。橋はどんな役割ですか?

博士 博士

橋は脳幹の一部で呼吸調節や顔面神経核の場所じゃ。記憶とは直接関わらん。

サクラ サクラ

脊髄は伝導路と反射の中枢ですから記憶とは無関係ですね。

博士 博士

松果体はメラトニンで概日リズムを整える小さな内分泌腺、視床下部は自律神経と内分泌の司令塔じゃ。

サクラ サクラ

どれも重要ですが、短期記憶に特化した部位ではないわけですね。

博士 博士

最後にMMSEの遅延再生やHDS-Rの項目が、海馬機能を評価する代表的な手段じゃと覚えておくとよい。

サクラ サクラ

認知症の早期発見にはそれらのスクリーニングが役立つのですね。

POINT

短期記憶から長期記憶への固定化を担うのは大脳辺縁系の海馬です。橋や脊髄、松果体、視床下部はそれぞれ生命維持や内分泌調整を担いますが、記憶貯蔵機能は持ちません。アルツハイマー病では海馬萎縮が早期から進行するため、遅延再生テストが早期発見に有用です。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:短期記憶と関係が深いのはどれか。

解説:正解は2(海馬)です。海馬は側頭葉内側の大脳辺縁系に位置し、新しい情報を一時的に保持した後、大脳皮質へ転送して長期記憶として固定するハブの役割を果たします。

選択肢考察

  1. × 1.  橋

    橋は脳幹の一部で呼吸調節、顔面神経核、上下位ニューロンの中継路として働き、記憶形成とは直接関係しません。

  2. 2.  海馬

    エピソード記憶や空間記憶の符号化に必須の部位で、両側海馬が障害されると前向性健忘が生じます。アルツハイマー病で早期に萎縮することでも知られています。

  3. × 3.  脊髄

    脊髄は感覚・運動の伝導路および脊髄反射の中枢で、記憶貯蔵機能はありません。

  4. × 4.  松果体

    松果体はメラトニンを分泌して概日リズムを調整する内分泌器官であり、記憶処理には関与しません。

  5. × 5.  視床下部

    視床下部は自律神経・内分泌・摂食・体温など恒常性維持の中枢であり、短期記憶の保持を担う部位ではありません。

記憶は保持時間により感覚記憶・短期(作業)記憶・長期記憶に分類され、海馬は短期記憶を長期記憶へ変換する『固定化』の中心です。アルツハイマー病では海馬の萎縮から近時記憶障害が出現し、HDS-RやMMSEの遅延再生の低下として現れます。なお作業記憶には前頭前野も深く関わります。

大脳辺縁系の海馬が短期記憶から長期記憶への固定化を司るという基本解剖学的知識を問う設問です。