蓄尿と排尿の神経スイッチ、交感と副交感の切り替えを理解する
看護師国家試験 第112回 午後 第75問 / 人体の構造・機能 / 泌尿器系
国試問題にチャレンジ
膀胱の蓄尿と排尿反射で正しいのはどれか。
- 1.排尿中枢はホルモンによって制御される。
- 2.排尿反射は交感神経を介して起こる。
- 3.蓄尿時に内尿道括約筋は収縮する。
- 4.排尿時に外尿道括約筋は収縮する。
- 5.蓄尿時に排尿筋は収縮する。
対話形式の解説
博士
今回は膀胱の蓄尿と排尿の問題じゃ。自律神経の切り替えがカギになる。
サクラ
交感神経と副交感神経、どちらが排尿でどちらが蓄尿でしたっけ?
博士
交感神経=蓄尿、副交感神経=排尿、と覚えるのじゃ。『戦うか逃げるか』の交感神経が働いているときに、わざわざおしっこをしに行くのは不便じゃろう?
サクラ
なるほど、戦闘中には排尿を止めたい、だから交感神経は蓄尿側なんですね。
博士
その通り。蓄尿期は下腹神経(T11〜L2)が働き、膀胱平滑筋のβ3受容体を介して排尿筋を弛緩させ、膀胱を大きく膨らませる。同時にα1受容体で内尿道括約筋を収縮させて尿道を閉じるのじゃ。
サクラ
排尿期は副交感神経が主役ですよね。
博士
そうじゃ。骨盤神経(S2〜S4)がM3受容体を介して排尿筋を収縮させる。さらに陰部神経の抑制で外尿道括約筋が弛緩して尿が出るのじゃよ。
サクラ
外尿道括約筋は随意筋だと聞きました。
博士
横紋筋で陰部神経(体性神経)支配、つまり自分の意思で締めたり緩めたりできる。トイレを我慢している時にギュッと締めているのはこれじゃ。
サクラ
排尿中枢はどこにあるんですか?
博士
大きく2か所じゃ。橋にあるBarrington核(橋排尿中枢)と、仙髄のS2〜S4じゃな。大脳皮質は『今は排尿してよいか』を判断し、抑制をかけておる。脊髄損傷で大脳からの抑制が切れると反射性膀胱になる。
サクラ
ホルモンは関係ないんですね。
博士
直接的な制御はしておらん。選択肢1は誤りじゃ。
サクラ
過活動膀胱にβ3作動薬が使われるのはどうしてですか?
博士
β3受容体刺激で排尿筋を弛緩させ、膀胱容量を増やして頻尿や切迫感を軽減するからじゃ。ミラベグロン、ビベグロンが代表。抗コリン薬もM3を遮断して同じ方向に働く。
サクラ
前立腺肥大症にα1遮断薬が使われるのは?
博士
α1を遮断すると内尿道括約筋や前立腺平滑筋が弛緩し、尿道抵抗が下がって排尿しやすくなるのじゃよ。タムスロシンやシロドシンが有名じゃな。
サクラ
神経の図式が薬の選択にもつながるんですね。
博士
その通り。解剖生理を押さえれば薬理もスッと入ってくる。
POINT
膀胱の蓄尿期は交感神経(下腹神経)優位で、β3受容体を介して排尿筋が弛緩、α1受容体を介して内尿道括約筋が収縮することで尿をため込みます。排尿期は副交感神経(骨盤神経)優位で、M3受容体を介して排尿筋が収縮し、陰部神経の抑制により外尿道括約筋が弛緩して尿が排出されます。排尿中枢は橋のBarrington核と仙髄S2〜S4にあり、大脳皮質からの抑制で社会的に適切なタイミングに調節されています。この神経支配を理解すると、過活動膀胱へのβ3作動薬・抗コリン薬、前立腺肥大症へのα1遮断薬といった薬物療法の根拠も整理でき、臨床での排尿障害アセスメントに直結します。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:膀胱の蓄尿と排尿反射で正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。蓄尿期は交感神経(下腹神経T11〜L2)が優位となり、排尿筋(膀胱平滑筋)が弛緩して膀胱の容量を広げ、同時に内尿道括約筋が収縮して尿の漏出を防ぎます。一方、排尿期は副交感神経(骨盤神経S2〜S4)が優位となり排尿筋が収縮、内・外尿道括約筋が弛緩して尿が排出されます。外尿道括約筋は体性神経の陰部神経(S2〜S4)支配で、随意的にコントロールできます。
選択肢考察
-
× 1. 排尿中枢はホルモンによって制御される。
排尿中枢は脳幹(橋のBarrington核)と仙髄にあり、自律神経と体性神経を介して制御される。ホルモン支配ではない。
-
× 2. 排尿反射は交感神経を介して起こる。
排尿反射は副交感神経(骨盤神経)を介して起こる。交感神経(下腹神経)は蓄尿に働く。
-
○ 3. 蓄尿時に内尿道括約筋は収縮する。
蓄尿期は交感神経優位となり、内尿道括約筋(平滑筋)が収縮して尿道を閉鎖し、尿漏れを防ぐ。
-
× 4. 排尿時に外尿道括約筋は収縮する。
排尿時、陰部神経の抑制により外尿道括約筋は弛緩し尿道を開く。収縮するのは排尿を我慢している場面。
-
× 5. 蓄尿時に排尿筋は収縮する。
蓄尿時は交感神経のβ3受容体刺激で排尿筋は弛緩し、膀胱のコンプライアンスを保って容量を増やす。
排尿のまとめ。蓄尿期=交感神経(下腹神経、β3受容体で排尿筋弛緩、α1受容体で内尿道括約筋収縮)+体性神経(陰部神経で外尿道括約筋収縮)。排尿期=副交感神経(骨盤神経、M3受容体で排尿筋収縮)+陰部神経抑制(外尿道括約筋弛緩)。排尿中枢は橋(Barrington核)と仙髄(S2〜S4)。過活動膀胱にβ3作動薬(ミラベグロン)や抗コリン薬、前立腺肥大症にα1遮断薬が用いられる理由も理解しやすい。
蓄尿と排尿における自律神経・体性神経の役割と、各筋の収縮・弛緩の組み合わせを問う問題。交感=蓄尿/副交感=排尿の原則を押さえる。
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