災害医療の基本 ― 災害対策基本法・トリアージ・DMATを一気に整理
看護師国家試験 第112回 午後 第71問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護
国試問題にチャレンジ
災害時の医療を支える体制で正しいのはどれか。
- 1.地域災害拠点病院は市町村が指定する。
- 2.災害対策基本法に防災計画の作成が規定されている。
- 3.トリアージは救命困難な患者の治療を優先するために行う。
- 4.災害派遣医療チーム<DMAT>は被災地域の精神科医療および精神保健活動を専門的に行う。
対話形式の解説
博士
災害医療の総合問題じゃ。正解は2番『災害対策基本法に防災計画の作成が規定されている』じゃな。
サクラ
災害対策基本法って、いつできた法律ですか?
博士
1959年の伊勢湾台風で5000人以上の犠牲者を出したことを契機に、1961年に制定された災害対応の根幹法じゃ。国の中央防災会議による防災基本計画、都道府県・市町村による地域防災計画の作成を義務付けておる。
サクラ
1番『地域災害拠点病院は市町村が指定』はダメなんですね。
博士
うむ。災害拠点病院は厚生労働省の要件に基づき都道府県知事が指定する。基幹災害拠点病院は各都道府県に原則1か所以上、地域災害拠点病院は二次医療圏に概ね1か所配置される。
サクラ
災害拠点病院の要件ってどんなものがありますか?
博士
24時間対応可能な救急医療体制、DMATを保有、ヘリポート、自家発電3日分、飲料水・食料備蓄などじゃ。
サクラ
3番のトリアージはよく勘違いされますよね。
博士
そう、『救命困難な患者を優先する』ではない。逆じゃ。限られた医療資源で『最大多数に最大の利益』を目指し、救命可能な患者を優先する。黒タグ(救命困難)は原則後回し、という厳しい判断が求められる。
サクラ
タグの色と優先順位を教えてください。
博士
赤(Ⅰ・最優先治療)、黄(Ⅱ・待機)、緑(Ⅲ・軽症)、黒(0・救命困難/死亡)の4色じゃ。赤→黄→緑→黒の順で治療が進められる。
サクラ
START法って何ですか?
博士
Simple Triage And Rapid Treatmentの略で、1人30秒以内に判定する手法。歩行可否→呼吸→循環(CRT・橈骨動脈)→意識の順で評価するのじゃ。
サクラ
4番のDMATとDPATの違いは大事ですよね。
博士
うむ。DMAT(災害派遣医療チーム)は超急性期48時間以内の身体的救命医療、DPAT(災害派遣精神医療チーム)は精神科医療と被災者の心のケアじゃ。役割が全く違う。
サクラ
他にも災害時の医療チームってありますか?
博士
亜急性期以降はJMAT(日本医師会災害医療チーム)、保健所の指揮支援はDHEAT(災害時健康危機管理支援チーム)、日赤救護班、医療救護班などじゃ。
サクラ
多くの組織が連携して動くんですね。
博士
その通り。災害医療のフェーズを超急性期・急性期・亜急性期・慢性期・復旧復興期と分け、それぞれに適したチームが投入される。
サクラ
覚えることが多いですが、アルファベットの意味と対応フェーズを整理すれば理解しやすいです。
POINT
災害対策基本法は1961年制定の災害対応の根幹法で、中央防災会議の防災基本計画、都道府県・市町村の地域防災計画の作成を義務付けています。災害拠点病院は厚生労働省の要件に基づき都道府県知事が指定し、DMATは超急性期48時間以内の身体的救命医療、DPATは精神科医療を担うなど、チーム間の役割分担が明確に定められています。トリアージは『最大多数に最大の利益』を目指して救命可能な患者を優先する判定で、赤・黄・緑・黒の4色タグとSTART法が基本です。日本の災害医療体制は、法・組織・チーム・手法が重層的に整備されており、看護師もそのシステムの一員として機能することが求められます。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:災害時の医療を支える体制で正しいのはどれか。
解説:正解は 2 です。災害対策基本法(第34条等)は、国・都道府県・市町村・指定公共機関など各レベルで防災計画(防災基本計画、都道府県地域防災計画、市町村地域防災計画など)を作成することを規定している。日本の災害対応は同法を根拠法として整備されている。
選択肢考察
-
× 1. 地域災害拠点病院は市町村が指定する。
災害拠点病院(基幹災害拠点病院・地域災害拠点病院)は、厚生労働省の指定要件に基づき都道府県知事が指定する。市町村ではない。
-
○ 2. 災害対策基本法に防災計画の作成が規定されている。
災害対策基本法は1959年の伊勢湾台風を契機に1961年に制定された災害対策の基本法で、国の中央防災会議による防災基本計画、都道府県・市町村による地域防災計画の作成を義務付けている。
-
× 3. トリアージは救命困難な患者の治療を優先するために行う。
トリアージは限られた医療資源の下で『最大多数に最大の利益』を提供するため、救命可能な患者を優先する判定。救命困難(黒タグ・カテゴリー0)は原則として後回しとなる。
-
× 4. 災害派遣医療チーム<DMAT>は被災地域の精神科医療および精神保健活動を専門的に行う。
DMATは被災地で超急性期(概ね48時間以内)に活動する身体的救命医療チーム。精神科医療・精神保健活動を担うのはDPAT(災害派遣精神医療チーム)であり、役割が異なる。
災害関連用語の整理:【DMAT】災害派遣医療チーム、超急性期48時間以内、医師・看護師・業務調整員で構成。【DPAT】災害派遣精神医療チーム、精神科医療を担当。【JMAT】日本医師会災害医療チーム、亜急性期以降。【DHEAT】災害時健康危機管理支援チーム、保健所等の指揮支援。トリアージは4色(赤:最優先治療、黄:待機、緑:軽症、黒:救命困難/死亡)。START法(Simple Triage And Rapid Treatment)は歩行→呼吸→循環→意識の順で30秒以内に判定する手法。災害拠点病院は都道府県知事指定で各都道府県に基幹1か所以上・地域複数を原則とする。
災害医療体制に関する複合問題。防災計画の根拠法、災害拠点病院の指定主体、トリアージの目的、DMATとDPATの役割を横断的に整理する。
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