プライマリヘルスケアって何?アルマ・アタ宣言から読み解く国際保健の原則
看護師国家試験 第112回 午前 第74問 / 看護の統合と実践 / 国際化と看護
国試問題にチャレンジ
国際協力として5歳未満児死亡率の高い地域に1年間派遣されることになった看護師が、派遣される地域の住民に対して行う活動でプライマリヘルスケアの原則に基づいた活動はどれか。
- 1.高度な治療を目的とした活動
- 2.医学的研究の遂行を優先した活動
- 3.派遣先で入手できる資源を利用した活動
- 4.派遣される専門家チームを中心とする活動
対話形式の解説
博士
今回は国際協力の場面でプライマリヘルスケアの原則に沿った活動を選ぶ問題じゃ。PHC、正式にはPrimary Health Care、聞いたことはあるかね?
アユム
名前は知っていますが、内容はあやふやです…。プライマリケアと同じですか?
博士
似ているようで違うのじゃ。プライマリケアは「身近な医療提供」という医療サービスの概念。一方、PHCは1978年のアルマ・アタ宣言で提唱された、すべての人々に健康を届けるための包括的な公衆衛生戦略じゃ。
アユム
アルマ・アタ宣言…カザフスタンで採択された有名な宣言ですよね。
博士
その通り。「Health for All by the Year 2000」というスローガンで知られておる。2018年にはアスタナ宣言で再確認され、現在のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の基盤にもなっておるのじゃ。
アユム
PHCの原則って具体的にはどんなものがありますか?
博士
5つあるぞ。1.住民の主体的参加、2.住民のニーズへの対応、3.地域資源の有効活用、4.適正技術の使用、5.多分野との協調・統合、じゃ。
アユム
適正技術ってどういう意味ですか?
博士
その地域の経済・文化・人材の状況で持続可能な技術のことじゃ。最新のCT装置を寄贈しても、電力や保守人材がなければただの鉄の塊になる。経口補水液や蚊帳のように、安価でシンプルで住民が使いこなせる技術こそ適正技術じゃ。
アユム
なるほど!じゃあ選択肢1の「高度な治療」はこの原則に反するんですね。
博士
その通り。選択肢2の「医学的研究優先」も住民ニーズではなく派遣者目線。選択肢4の「専門家チーム中心」も住民参加の原則に反する。
アユム
残る選択肢3の「派遣先で入手できる資源を利用した活動」が正解ですね。地域資源の活用と適正技術の両方にあてはまる!
博士
その通りじゃ。こうすれば派遣者が去った後も住民自身が活動を継続できる。持続可能性こそPHCの真髄なのじゃ。
アユム
5歳未満児死亡率が高い地域では、具体的にはどんな活動が有効なんですか?
博士
PHCには8つの活動項目があって、保健教育、栄養改善、安全な水と衛生、母子保健と家族計画、予防接種、風土病対策、日常的疾病の治療、必須医薬品の供給じゃ。乳幼児死亡率低下には、予防接種や経口補水療法、母乳育児推進などシンプルな介入が大きな効果を発揮する。
アユム
現地の保健ボランティアや伝統的助産師と連携する、というのもPHCの考え方ですよね。
博士
うむ、まさに住民参加と多分野協調の実例じゃ。教育分野、水道インフラ、農業など他セクターとも連携するのが特徴じゃ。
アユム
国際協力といっても「与える側・受ける側」ではなく、住民が主役という視点が大事なんですね。
博士
その通り。看護師が国際保健に関わるときに最も大切にしたい哲学じゃ。
POINT
プライマリヘルスケアは1978年のアルマ・アタ宣言で提唱された、すべての人々に健康を届けるための基本戦略です。住民参加、住民ニーズ対応、地域資源活用、適正技術、多分野協調の5原則に基づき、派遣先の資源を活かして住民自身が主体となる活動が求められます。高度治療や研究優先、外部専門家中心の活動はこの原則から外れ、派遣者撤退後に持続しないという問題を抱えます。5歳未満児死亡率の高い地域では、予防接種・経口補水・母子保健など適正技術を用いた介入が効果的で、看護師はファシリテーターとして現地スタッフや住民組織を支援する役割を担います。PHCは2018年のアスタナ宣言で再確認され、現在のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成の基盤として国際保健の中核に位置付けられています。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:国際協力として5歳未満児死亡率の高い地域に1年間派遣されることになった看護師が、派遣される地域の住民に対して行う活動でプライマリヘルスケアの原則に基づいた活動はどれか。
解説:正解は 3 です。プライマリヘルスケア(PHC)は1978年のアルマ・アタ宣言で提唱された概念で、すべての人々に健康を届けるための基本戦略です。その活動原則は「住民主体の参加」「住民のニーズへの対応」「地域資源の有効活用」「適正技術の使用」「多分野との協調・統合」の5つにまとめられます。派遣先で入手できる資源を利用した活動は「地域資源の有効活用」と「適正技術の使用」の原則に合致するため、選択肢3が正解です。
選択肢考察
-
× 1. 高度な治療を目的とした活動
高度医療は設備・技術・人材・維持費すべてが過大となり、現地で持続できない。PHCは「適正技術」、すなわちその地域で持続可能で住民が使いこなせる技術の使用を重視するため、この活動は原則に反する。
-
× 2. 医学的研究の遂行を優先した活動
PHCは住民のニーズへの対応と住民主体の健康問題解決を最優先とする。派遣者の研究目的を優先することは、住民本位の原則から外れる。
-
○ 3. 派遣先で入手できる資源を利用した活動
現地の人的・物的・社会的資源を活用することで、派遣者の撤退後も活動が継続できる。「地域資源の有効活用」と「適正技術の使用」の両原則に合致し、PHCの本質を体現する活動である。
-
× 4. 派遣される専門家チームを中心とする活動
PHCは住民自身が健康問題の解決主体となる「住民参加」を原則とする。外部専門家が中心になる活動はこの原則に反し、派遣期間終了後に活動が途絶える恐れもある。
PHCの8つの活動項目は、1.保健教育、2.食料供給と適切な栄養、3.安全な水と基本的衛生、4.母子保健と家族計画、5.主要感染症の予防接種、6.地方流行病の予防と対策、7.日常的疾病の治療、8.必須医薬品の供給である。5歳未満児死亡率が高い地域ではこれらの基本的項目への介入が効果的とされる。またPHCは2018年のアスタナ宣言で再確認され、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成の基盤として再び国際保健の中心に位置付けられている。
プライマリヘルスケアの5原則(住民参加・ニーズ対応・地域資源活用・適正技術・多分野協調)を理解し、国際協力の現場で具体的行動に落とし込めるかを問う問題。
「国際化と看護」の関連記事
-
外国籍の家族に予防接種を伝える!多文化看護の基本対応
言語の壁を抱える外国籍家族への保健指導において、最も実用的で即時的な支援を選択できるかを問う問題。「対象者が…
114回
-
外国籍の家族への食事対応を考えよう
異文化背景を持つ患児と家族への食事支援において、まず家族の状況を理解する姿勢が問われている問題です。
113回
-
異文化家庭への生活指導、最初の一歩は『聞く』こと
生活指導の初回面談では、対象者の認識・価値観・生活背景を聴取することが最初の対応であるという原則と、多文化共…
112回
-
日本のODAを担うJICA〜国際協力機構の役割〜
日本のODA実施機関としてのJICAと、他の国際機関(WHO、UNDP、ICRC)の役割を区別できるかを問う問題です。
111回
-
世界の三大感染症とは
国際保健の基本知識として、世界三大感染症(HIV/エイズ、結核、マラリア)を問う問題です。
111回