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個人情報保護と法令に基づく届出の例外

看護師国家試験 第105回 午前 第64問 / 看護の統合と実践 / 看護におけるマネジメント

国試問題にチャレンジ

105回 午前 第64問

診療情報を第三者に開示する際、個人情報の保護として正しいのはどれか。

  1. 1.死亡した患者の情報は対象にならない。
  2. 2.個人情報の利用目的を特定する必要はない。
  3. 3.特定機能病院では本人の同意なく開示できる。
  4. 4.法令に基づく保健所への届出に関して本人の同意は不要である。

対話形式の解説

博士 博士

医療現場の個人情報保護は、原則と例外をきちんと理解することが大切じゃ。本問で整理していこう。

アユム アユム

博士、診療情報を第三者に開示するときって、基本的に本人の同意が必要ですよね?

博士 博士

そのとおり。個人情報保護法では、個人情報を第三者に提供する際は原則として本人の同意が必要じゃ。医療機関でも同様で、家族への病状説明でさえ、本人同意の確認が望ましいとされておる。

アユム アユム

でも同意なしに提供できる場合もあるんですか?

博士 博士

そう、4つの例外がある。1つ目が「法令に基づく場合」、2つ目が「人の生命・身体・財産の保護に必要で本人同意を得ることが困難な場合」、3つ目が「公衆衛生の向上や児童の健全育成に特に必要な場合」、4つ目が「国や地方公共団体への協力が必要な場合」じゃ。

アユム アユム

選択肢4の保健所への届出は、1つ目の「法令に基づく場合」に該当するんですね?

博士 博士

そうじゃ。感染症法第12条では、医師が特定の感染症の患者を診断した場合、直ちに、または7日以内に、最寄りの保健所長経由で都道府県知事に届け出る義務がある。これは感染症のまん延防止という公衆衛生上極めて重要な目的のため、本人同意なしに実施できる。

アユム アユム

具体的にどんな感染症が対象ですか?

博士 博士

一類(エボラ出血熱など)、二類(結核、SARSなど)、三類(コレラなど)、四類(A型肝炎など)、五類の一部(麻疹など)、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症が対象じゃ。COVID-19も当初は指定感染症として位置付けられておった。

アユム アユム

選択肢1の、死亡した患者の情報は対象にならない、は?

博士 博士

これは注意が必要じゃ。個人情報保護法の条文上は「生存する個人に関する情報」が定義じゃが、医療・介護分野のガイドラインでは死亡患者の情報も生存中と同様に保護するよう求められておる。遺族のプライバシーや個人の尊厳を守るためじゃ。

アユム アユム

選択肢2の、利用目的を特定する必要はない、はどうですか?

博士 博士

これも誤り。個人情報取扱事業者は利用目的をできる限り特定する義務がある。医療機関であれば「医療サービスの提供」「診療費の請求」「医療の質向上のための利用」などを院内掲示やホームページで明示することが求められる。

アユム アユム

選択肢3の、特定機能病院では本人同意なく開示できる、は?

博士 博士

これも誤り。特定機能病院は高度医療を提供する大学病院本院などじゃが、個人情報保護の義務は一般病院と同じじゃ。病院の種類で同意要件が変わることはない。

アユム アユム

虐待の疑いがあるときの通告も本人同意はいらないんですよね?

博士 博士

よい視点じゃ。児童虐待防止法や高齢者虐待防止法、障害者虐待防止法では、虐待を発見した医療従事者に通告義務が課されておる。これも法令に基づく例外にあたるから、本人同意なく通告できる。むしろ通告しないと守秘義務違反以上に問題となる。

アユム アユム

個人情報を守ることと情報を活かすことのバランスが大事なんですね。

博士 博士

そうじゃ。守秘義務と通告義務、本人の意向と公衆衛生、という複数の価値観の調整が医療現場では常に求められる。法令の例外規定を正確に知っておくことが、適切な判断の基盤になるんじゃよ。

POINT

診療情報の第三者開示は原則として本人同意が必要ですが、個人情報保護法には4つの例外があり、そのうち「法令に基づく場合」には感染症法に基づく保健所への届出が含まれ、本人同意なく実施できます。死亡した患者の情報もガイドライン上は保護対象となり、利用目的の特定は基本義務、特定機能病院であっても同意要件は変わりません。医療現場では、児童虐待通告や感染症届出など法令上の例外を正しく理解し、守秘義務と公衆衛生の両立を図ることが求められます。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:診療情報を第三者に開示する際、個人情報の保護として正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。個人情報保護法では原則として個人情報の第三者提供には本人の同意が必要ですが、法令に基づく場合は例外として本人同意なく情報提供が認められます。感染症法第12条では、医師が一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症および五類感染症の一部、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症の患者を診断した場合、直ちにあるいは7日以内に、患者の氏名・年齢・性別・症状・診断年月日などを最寄りの保健所長経由で都道府県知事に届け出る義務があります。この届出は本人の同意なく行うことが認められています。同様に、児童虐待防止法や食品衛生法などでも法令に基づく届出・通告は本人同意なく実施できます。死亡した患者の情報も遺族のプライバシー保護の観点から保護対象となり、利用目的の特定は個人情報取扱事業者の基本義務であり、特定機能病院であっても本人同意なく第三者開示はできません。

選択肢考察

  1. × 1.  死亡した患者の情報は対象にならない。

    誤りです。個人情報保護法上は「生存する個人に関する情報」が対象ですが、医療・介護分野のガイドラインでは死亡した患者の情報についても遺族のプライバシー保護や診療情報提供の観点から生存中と同様に適切に取り扱うこととされています。

  2. × 2.  個人情報の利用目的を特定する必要はない。

    誤りです。個人情報取扱事業者は個人情報を取り扱うにあたり、利用目的をできる限り特定する義務があります(個人情報保護法第17条)。特定した目的の範囲を超えて利用することは原則禁止されています。

  3. × 3.  特定機能病院では本人の同意なく開示できる。

    誤りです。特定機能病院は高度医療を提供する病院ですが、個人情報保護に関する義務は他の医療機関と同様です。本人同意なく第三者に診療情報を開示することは原則できません。

  4. 4.  法令に基づく保健所への届出に関して本人の同意は不要である。

    正しい選択肢です。感染症法、食品衛生法、母子保健法、児童虐待防止法など、法令に基づく届出・通告は個人情報保護法の例外規定に該当し、本人の同意なく実施できます。感染症のまん延防止や公衆衛生保護のために不可欠な仕組みです。

個人情報保護法での第三者提供における本人同意不要の例外は、(1)法令に基づく場合、(2)人の生命・身体・財産の保護に必要で本人同意を得ることが困難な場合、(3)公衆衛生の向上や児童の健全育成に特に必要で本人同意を得ることが困難な場合、(4)国や地方公共団体への協力が必要な場合、の4類型です。医療現場では感染症法の届出、虐待通告、事件捜査協力などが該当します。2022年施行の改正個人情報保護法では、仮名加工情報・仮名化・漏えい等報告義務などが強化され、医療機関もより厳格な対応が求められています。

診療情報の第三者開示は本人同意が原則だが、感染症法等の法令に基づく届出は本人同意なく実施できる例外となる。