介護者入院時の地域包括支援センター活用
看護師国家試験 第108回 午後 第119問 / 看護の統合と実践 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(55歳、男性、自営業)は、父親78歳と2人暮らし。Aさんは、2年前から食後に心窩部痛を感じていたが、医療機関を受診していなかった。午後3時、Aさんは胃部不快感を訴えた直後、突然コップ1杯程度の吐血があり倒れた。父親が救急車を呼び、救急病院に搬送された。到着時、意識はジャパン・コーマ・スケール<JCS> I-3。バイタルサインは、体温36.4°C、呼吸数20/分、脈拍124/分、整、血圧86/50mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >95%。顔面は蒼白で、皮膚は湿潤している。四肢冷感を認める。眼瞼結膜は軽度貧血様であるが、黄染を認めない。腹部は平坦で腸蠕動音は微弱、心窩部に圧痛を認めるが、筋性防御はない。胃部不快感は受診前よりも改善している。担当した医師に父親が「息子は黒い便が出ると言っていた」と伝えた。 Aさんは緊急入院となり、医師から「少なくとも2週間程度の入院が必要です」と説明を受けた。立ち会っていた看護師長にAさんは「最近、父の物忘れがひどくて、1人でどこかに行ってしまったこともあるので、家に帰せません。何とかなりませんか」と訴えた。父親は要介護認定を受けているが、現在は介護保険サービスを利用せず、Aさんが介護をしながら生活していた。 Aさんの父親に対する看護師長の対応で適切なのはどれか。
- 1.自院への入院を調整する。
- 2.地域包括支援センターに相談する。
- 3.精神保健福祉センターに相談する。
- 4.特別養護老人ホームに入所相談する。
対話形式の解説
博士
今回は55歳Aさんが緊急入院となり、認知症傾向の父親の世話が心配という場面じゃ。
サクラ
Aさんが2週間入院するとなると、父親は家で一人になってしまいますね。
博士
そう、そこが問題じゃ。父親は要介護認定は受けておるのに介護保険サービスを利用していない、という情報も重要なヒントじゃ。
サクラ
正解は何ですか?
博士
2番の地域包括支援センターに相談するじゃよ。
サクラ
地域包括支援センターってどんな所ですか?
博士
介護保険法に基づいて、おおむね中学校区ごとに設置されておる高齢者の総合相談窓口じゃ。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーの3職種が配置されておる。
サクラ
どんな業務をしているんですか?
博士
4つの柱がある。総合相談支援、権利擁護(虐待対応・成年後見)、包括的・継続的ケアマネジメント、介護予防ケアマネジメントじゃ。
サクラ
今回みたいな緊急時も対応してくれるんですね。
博士
そうじゃ。緊急ショートステイや小規模多機能型居宅介護の利用調整などを迅速に行ってくれる。
サクラ
1番の自院への入院はどうですか?
博士
認知症症状があるだけでは入院適応にはならん。むしろ環境変化でせん妄を起こしたりADLが低下したりするリスクがある。
サクラ
3番の精神保健福祉センターは?
博士
精神障害者の社会復帰支援が目的の機関で、認知症高齢者の介護調整は業務対象外じゃ。都道府県・政令指定都市に設置されておる。
サクラ
4番の特別養護老人ホームへの入所相談は?
博士
特養は終の棲家となる長期入所施設で、入所要件(原則要介護3以上)や待機期間の問題がある。2週間の一時的介護需要には合わんし、Aさんも退院後は在宅介護を続けたい様子じゃ。
サクラ
地域包括支援センターはどうやって利用するんですか?
博士
本人や家族が直接電話や来所で相談できる。病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)経由で連絡することも多いんじゃ。
サクラ
看護師長の役割は?
博士
家族の不安を受け止めた上で、適切な社会資源につなぐ橋渡し役じゃ。退院支援看護師やMSWと協働し、包括センターやケアマネジャーと連携することで、患者と家族の生活を守るんじゃよ。
サクラ
高齢化社会では、こうした地域連携がますます大事になりますね。
博士
そうじゃ。医療と介護の切れ目のない連携が、地域包括ケアシステムの根幹じゃよ。
POINT
地域包括支援センターは介護保険法に基づく高齢者の総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーが配置されています。総合相談、権利擁護、包括的ケアマネジメント、介護予防の4業務を担い、介護者の急な入院時には緊急ショートステイ等の調整を行います。認知症症状だけでは入院適応はなく、精神保健福祉センターや特養入所は本事例には適しません。看護師長は家族の不安を受け止め、地域包括支援センターへ橋渡しすることが重要です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(55歳、男性、自営業)は、父親78歳と2人暮らし。Aさんは、2年前から食後に心窩部痛を感じていたが、医療機関を受診していなかった。午後3時、Aさんは胃部不快感を訴えた直後、突然コップ1杯程度の吐血があり倒れた。父親が救急車を呼び、救急病院に搬送された。到着時、意識はジャパン・コーマ・スケール<JCS> I-3。バイタルサインは、体温36.4°C、呼吸数20/分、脈拍124/分、整、血圧86/50mmHg。経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >95%。顔面は蒼白で、皮膚は湿潤している。四肢冷感を認める。眼瞼結膜は軽度貧血様であるが、黄染を認めない。腹部は平坦で腸蠕動音は微弱、心窩部に圧痛を認めるが、筋性防御はない。胃部不快感は受診前よりも改善している。担当した医師に父親が「息子は黒い便が出ると言っていた」と伝えた。 Aさんは緊急入院となり、医師から「少なくとも2週間程度の入院が必要です」と説明を受けた。立ち会っていた看護師長にAさんは「最近、父の物忘れがひどくて、1人でどこかに行ってしまったこともあるので、家に帰せません。何とかなりませんか」と訴えた。父親は要介護認定を受けているが、現在は介護保険サービスを利用せず、Aさんが介護をしながら生活していた。 Aさんの父親に対する看護師長の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口であり、介護保険サービス導入、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援を担う機関です。要介護認定はあるが未利用の父親について、ショートステイや訪問介護など必要なサービスを迅速に調整できる最適な相談先です。
選択肢考察
-
× 1. 自院への入院を調整する。
認知症症状のみで入院適応はなく、環境変化でせん妄やADL低下を招くため不適切です。
-
○ 2. 地域包括支援センターに相談する。
高齢者の総合相談窓口として、介護保険サービス利用や家族支援を迅速にコーディネートできる最適な連携先です。
-
× 3. 精神保健福祉センターに相談する。
精神障害者の社会復帰支援を目的とした機関で、認知症高齢者の介護調整は業務対象外です。
-
× 4. 特別養護老人ホームに入所相談する。
特養は長期入所施設で、2週間の入院中の一時的な介護需要には適さず、入所要件や待機期間の問題もあります。
地域包括支援センターは介護保険法に基づき、おおむね中学校区ごとに設置される公的機関です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーの3職種が配置され、(1)総合相談支援、(2)権利擁護(虐待対応・成年後見など)、(3)包括的・継続的ケアマネジメント、(4)介護予防ケアマネジメントの4業務を担います。本事例のような介護者の急な入院時は、緊急ショートステイや小規模多機能型居宅介護の利用を調整することが多いです。
高齢者介護の総合相談窓口としての地域包括支援センターの役割理解を問う問題です。
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