産褥2日目「排便が怖い」と訴える初産婦、看護師がまず行うべきことは?
看護師国家試験 第109回 午後 第107問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 30 歳、初産婦)は、正常分娩で児を出産した。第 2 度会陰裂傷を認め、会陰縫合術を受けた。分娩 3 時間後に、分娩室から褥室へ帰室した。産褥 1 日のAさんのバイタルサインは、体温 36.8 ℃、脈拍 72 /分、血圧 118 / 70 mmHgであった。子宮底は臍下 1 横指で、子宮は硬く触れ、血性悪露中等量、後陣痛がみられる。会陰縫合部の痛みはあるが発赤はない。乳房緊満( - )、乳管開口数は左右とも 4、5 本。 「昨夜は興奮してなかなか眠れなかった」と言う。 産褥 2 日。Aさんから会陰縫合部の疼痛の増強はないが、離開の不安から排便ができないと訴えがあった。看護師は縫合部の異常がないことを確認した。Aさんは妊娠中の便秘はなかった。 看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
- 1.産褥体操をAさんに勧める。
- 2.水分を多く摂るようAさんに勧める。
- 3.医師に緩下薬の処方について相談する。
- 4.縫合部の離開の心配はないことをAさんに説明する。
対話形式の解説
博士
今度は産褥2日目のAさんからの相談じゃ。会陰縫合部が離開しそうで怖くて排便できない、という訴えじゃ。
サクラ
縫合部に異常はないし、妊娠中の便秘もなかった…便秘そのものの問題ではなさそうですね。
博士
するどいぞ。ここで大事なのは「表面的な症状と真の原因を見分ける」ことじゃ。Aさんの排便困難の原因は何じゃと思う?
サクラ
腹圧をかけると縫合部が裂けるんじゃないかという不安、ですよね。
博士
その通り。生理学的な便秘ではなく、心理的な排便抑制なのじゃ。
サクラ
まず不安そのものに対処しないと、いくら水分や緩下薬を使っても根本解決にならないんですね。
博士
うむ。選択肢をひとつずつ検討しよう。産褥体操は?
サクラ
産褥体操は身体の回復促進や血液循環改善には有効ですが、Aさんの「怖い」気持ちには直接作用しないですね。
博士
水分摂取は?
サクラ
便秘予防の基本ですが、そもそも便秘じゃなくて排便を我慢しているので、ずれた介入になります。
博士
緩下薬の処方は?
サクラ
薬で便を柔らかくすれば不安が減るかも…でも、まだ非薬物的対応を試していない段階で医師に薬を相談するのは早いですよね。
博士
正解に近づいておる。看護師はすでに縫合部を観察し異常なしと確認しておる。この正確な情報をAさんに伝えることこそ、不安を解消する最短経路じゃ。
サクラ
なるほど、「縫合部は離開しませんよ、大丈夫ですよ」と具体的に説明するんですね。
博士
そうじゃ。さらに第2度会陰裂傷について少し補足しよう。深達度は1〜4度に分類され、2度は会陰筋層まで及ぶ。
サクラ
筋層まで…深いですね。大丈夫なんですか?
博士
適切に縫合されていれば、通常の排便で腹圧をかけても離開することはほとんどない。退縮は5〜7日で進み、10日で抜糸可能か自然吸収糸が馴染む。
サクラ
産褥期の便秘の原因としてはどんなものがありますか?
博士
妊娠中の腸管圧迫解除後の再調整、腹筋弛緩、水分・電解質バランス、そして今回のような縫合部疼痛への恐怖感じゃ。
サクラ
ケアの順序としては心理支援が先で、それでも改善しなければ水分・食物繊維、温罨法、最後に薬剤、という流れですね。
博士
その通り。さらに会陰ケアとして、排便後のビデ洗浄や清潔維持、冷罨法での痛み緩和も大事じゃよ。
サクラ
看護師の説明ひとつでAさんが安心して排便できるようになるなら、それが最良の看護ですね。
POINT
産褥期の排便困難は、身体的要因(腸管運動低下、水分不足、腹筋弛緩)と心理的要因(縫合部離開への恐怖)の両面から起こり得ます。Aさんは縫合部に異常がなく妊娠中の便秘もないことから、不安が主因と判断できるため、正確な情報提供による心理的支援が最優先となります。第2度会陰裂傷の縫合部は適切に縫合されていれば通常の排便で離開することはまずなく、この事実を伝えることでAさんは腹圧をかけて排便できるようになります。訴えの背景にある真の原因を見極め、最も効果的な介入から始めるのが優先度判断の核心であり、看護師の情報提供が治療的役割を果たす典型例です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 30 歳、初産婦)は、正常分娩で児を出産した。第 2 度会陰裂傷を認め、会陰縫合術を受けた。分娩 3 時間後に、分娩室から褥室へ帰室した。産褥 1 日のAさんのバイタルサインは、体温 36.8 ℃、脈拍 72 /分、血圧 118 / 70 mmHgであった。子宮底は臍下 1 横指で、子宮は硬く触れ、血性悪露中等量、後陣痛がみられる。会陰縫合部の痛みはあるが発赤はない。乳房緊満( - )、乳管開口数は左右とも 4、5 本。 「昨夜は興奮してなかなか眠れなかった」と言う。 産褥 2 日。Aさんから会陰縫合部の疼痛の増強はないが、離開の不安から排便ができないと訴えがあった。看護師は縫合部の異常がないことを確認した。Aさんは妊娠中の便秘はなかった。 看護師の対応で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんの排便困難の原因は、便秘そのものではなく「縫合部離開への不安」による腹圧をかけることへの心理的抵抗である。妊娠中の便秘もなく、看護師による縫合部観察でも異常なし。まずは不安の根源に直接介入し、「縫合部は離開しない」という正確な情報を伝え安心させることが、問題解決の出発点であり最優先となる。
選択肢考察
-
× 1. 産褥体操をAさんに勧める。
産褥体操は循環促進や筋力回復に有用だが、Aさんの「離開への不安」という心理的問題に直接作用しないため優先度は低い。
-
× 2. 水分を多く摂るようAさんに勧める。
水分摂取は便秘予防の一般的助言だが、本ケースは便秘ではなく不安による排便抑制である。原因に即した介入とは言えず優先度は低い。
-
× 3. 医師に緩下薬の処方について相談する。
緩下薬は便秘の非薬物的対応が奏功しない場合の選択肢。まず不安を除去する心理的支援が先行すべきで、直接薬剤を考慮する段階ではない。
-
○ 4. 縫合部の離開の心配はないことをAさんに説明する。
排便困難の主因が不安であり、看護師はすでに縫合部に異常がないことを確認している。正しい情報提供によって不安を軽減し、自然な排便行動を回復させることが最優先。
会陰裂傷は深達度により第1度(皮膚・粘膜のみ)、第2度(会陰筋層)、第3度(肛門括約筋)、第4度(直腸粘膜)に分類され、Aさんは第2度で筋層まで及ぶ。適切な縫合が行われていれば通常の排便圧で離開することはほぼなく、退縮は5〜7日で進む。産褥期の便秘は妊娠中の腸管圧迫の解除、腹筋弛緩、水分・電解質バランスの変動、縫合部疼痛への恐怖などが要因となる。ケアの順序は原因に応じて、心理支援→水分・食物繊維摂取→排便習慣の確立→温罨法や腹部マッサージ→最終的に緩下薬の順が基本。
訴えの根底にある原因(身体的か心理的か)を見極め、最も効果的な介入を選択する優先度判断の問題。
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