産褥1日目のアセスメント、どこを見て何を判断する?
看護師国家試験 第109回 午後 第106問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 30 歳、初産婦)は、正常分娩で児を出産した。第 2 度会陰裂傷を認め、会陰縫合術を受けた。分娩 3 時間後に、分娩室から褥室へ帰室した。産褥 1 日のAさんのバイタルサインは、体温 36.8 ℃、脈拍 72 /分、血圧 118 / 70 mmHgであった。子宮底は臍下 1 横指で、子宮は硬く触れ、血性悪露中等量、後陣痛がみられる。会陰縫合部の痛みはあるが発赤はない。乳房緊満( - )、乳管開口数は左右とも 4、5 本。 「昨夜は興奮してなかなか眠れなかった」と言う。 この時のAさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
- 1.子宮収縮は良好である。
- 2.縫合部に感染徴候がみられる。
- 3.分娩の受け止めに問題がある。
- 4.産褥日数に比べて進行性変化が遅い。
対話形式の解説
博士
今日は初産婦Aさんの産褥1日目の総合アセスメントじゃ。産褥期の正常経過を一緒に押さえるぞ。
アユム
産褥期って分娩から何週間くらいなんですか?
博士
分娩終了から6〜8週間じゃ。この間に母体は非妊娠時の状態に戻る「退行性変化」と、乳汁分泌を確立する「進行性変化」の二つが同時進行する。
アユム
子宮底の高さが変わっていくと聞きました。
博士
そうじゃ。分娩直後は臍下2〜3横指、12時間後に臍高、1〜2日で臍下1〜2横指、3日で臍下3横指、10日頃には腹壁から触れなくなる。
アユム
Aさんは産褥1日目で臍下1横指、硬く触れる…標準的ですね。
博士
うむ。後陣痛と血性悪露もある。後陣痛は子宮が収縮している証拠じゃ。選択肢1の「子宮収縮は良好」は正解候補じゃな。
アユム
選択肢2の「縫合部に感染徴候」はどうですか?
博士
感染の古典的5徴候は発赤・腫脹・熱感・疼痛・機能障害じゃ。Aさんは疼痛のみで発赤なし、体温も36.8℃と正常。感染は示唆されん。
アユム
選択肢3の「分娩の受け止めに問題がある」はどう判断しますか?
博士
ここが興味深い。「昨夜は興奮して眠れなかった」という発言は、分娩直後の高揚感でよく見られる生理的反応じゃ。ルービンの産褥心理を知っておるか?
アユム
ルービン…聞いたことあります。受容期・保持期・解放期、でしたっけ?
博士
その通り。受容期は産褥0〜2日、母親は自分の出産体験を話したがり、やや受動的で依存的になる。興奮や不眠も含まれる。
アユム
つまり眠れないことは異常ではなく、むしろ正常な母親の反応なんですね。
博士
そうじゃ。保持期は3〜10日で育児技術を学び、解放期でそれ以降に母親役割を統合していく。
アユム
選択肢4の「進行性変化が遅い」はどうですか?
博士
進行性変化は乳汁分泌の確立じゃ。産褥1日目では乳房緊満はまだなく、乳管開口数が4〜5本あるのは正常。緊満は通常2〜3日目に始まる。
アユム
じゃあ進行性変化も順調、遅くはないんですね。
博士
うむ。悪露の変化も覚えておこう。赤色(〜3日)→褐色(〜2週)→黄色(〜4週)→白色(〜6週)じゃ。
アユム
色・量・臭いをチェックすれば異常早期発見ができるんですね。
博士
その通り。悪露停滞や異臭は子宮内感染を疑う。総合的にAさんは正常経過、子宮収縮良好と判断できるのじゃ。
POINT
産褥1日目のアセスメントでは、子宮底高・子宮硬度・後陣痛・悪露の色と量で退行性変化を、乳房緊満と乳管開口数で進行性変化を、バイタルサインと会陰創の状態で全身と局所の治癒を、そして心理反応をルービンの産褥心理枠組みで評価します。Aさんは子宮底臍下1横指で硬く触れ、後陣痛と中等量血性悪露、バイタル正常、会陰創の発赤なしで、子宮収縮は良好と判断できます。不眠や興奮は受容期に特徴的な生理的反応であり、乳房の変化も1日目として標準的です。産褥期の正常経過を体系的に押さえることが、異常の早期発見と母親への安心感を提供する看護の基盤となります。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん( 30 歳、初産婦)は、正常分娩で児を出産した。第 2 度会陰裂傷を認め、会陰縫合術を受けた。分娩 3 時間後に、分娩室から褥室へ帰室した。産褥 1 日のAさんのバイタルサインは、体温 36.8 ℃、脈拍 72 /分、血圧 118 / 70 mmHgであった。子宮底は臍下 1 横指で、子宮は硬く触れ、血性悪露中等量、後陣痛がみられる。会陰縫合部の痛みはあるが発赤はない。乳房緊満( - )、乳管開口数は左右とも 4、5 本。 「昨夜は興奮してなかなか眠れなかった」と言う。 この時のAさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。産褥1日目の子宮底は臍下1〜2横指が正常で、硬く触れ、後陣痛(子宮収縮痛)と血性悪露を伴う。Aさんはすべてこの範囲にあり、子宮収縮は良好と判断できる。子宮復古の進行を日々の子宮底高・硬度・悪露で総合評価する基本を押さえる問題である。
選択肢考察
-
○ 1. 子宮収縮は良好である。
子宮底臍下1横指、硬い子宮、後陣痛、中等量血性悪露は産褥1日目として標準的で、子宮復古は順調に進んでいる。
-
× 2. 縫合部に感染徴候がみられる。
感染徴候は発赤・腫脹・熱感・疼痛・機能障害の5徴が揃うことが多い。Aさんは疼痛のみで発赤はなく、体温も36.8℃。感染を示す所見はない。
-
× 3. 分娩の受け止めに問題がある。
「昨夜は興奮して眠れなかった」は分娩後の高揚感として生理的にみられる現象で、ルービンのマタニティブルーズの「受容期」に相当する正常反応である。
-
× 4. 産褥日数に比べて進行性変化が遅い。
進行性変化(乳汁分泌の準備)は産褥1日目では乳房緊満がなく乳管開口数4〜5本が標準的で、むしろ順調な経過。遅いとは言えない。
産褥期の変化は「退行性変化」と「進行性変化」に大別される。退行性変化は子宮復古、悪露、外陰・会陰創の治癒で、子宮底は分娩直後に臍下2〜3横指→12時間後臍高→1〜2日臍下1〜2横指→3日臍下3横指→10日で腹壁から触知不能となる。悪露は赤色(〜3日)→褐色(〜2週)→黄色(〜4週)→白色(〜6週)と変化する。進行性変化は乳汁分泌の確立で、産褥2〜3日に乳房緊満、初乳分泌、1週間で移行乳〜成乳へと進む。ルービンは産褥期心理を受容期(0〜2日、受動的、自分を話題にする)、保持期(3〜10日、自立・育児学習)、解放期(それ以降、母としての役割統合)と分類した。
産褥1日目のバイタル、子宮復古、会陰創、乳房、心理反応を正常経過と対照し総合アセスメントする力を問う基本問題。
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