経産婦さんはなぜ痛い?後陣痛の正体と「2つ選ぶ」攻略法
看護師国家試験 第114回 午前 第112問 / 母性看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(36歳、経産婦)は、夫(35歳)、男児(3歳)と3人で暮らしている。妊娠、分娩経過は順調で、妊娠39週5日で3,200gの女児を経腟分娩で出産した。1分後のApgar<アプガー>スコア9点、5分後のApgar<アプガー>スコア10点であった。産褥1日、Aさんの子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色であった。「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と看護師に話す。 このときのAさんへの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1.「痛み止めは使用できません」
- 2.「授乳をすると痛みが和らぎます」
- 3.「経産婦のほうが痛みを強く感じます」
- 4.「産後5日くらいまで痛みは続きます」
- 5.「子宮が元の大きさに戻るための痛みです」
対話形式の解説
博士
今日は産褥1日の経産婦Aさんの腹痛じゃ。「1人目のときより痛くて眠れない」という訴え、これは何だと思う?
アユム
子宮復古に関係する痛みですか?
博士
その通り、後陣痛じゃな。子宮を妊娠前の大きさに戻すために、子宮筋が間欠的に強く収縮しておる。
アユム
どうして経産婦さんのほうが痛みが強いんですか?
博士
経産婦は妊娠を繰り返すうちに子宮筋の伸びがよくなる。逆に言うと、収縮で縮めるためには一気に強い力で縮まなければならんのじゃ。
アユム
なるほど、伸び切ったゴムを一気に縮めるイメージですね。
博士
いい例えじゃ。さらにオキシトシンの分泌が経産婦では強く反応しやすいことも関係しておる。
アユム
授乳すると痛みが和らぎますって書いてある選択肢がありますが、本当ですか?
博士
逆じゃよ。児の吸啜刺激で下垂体後葉からオキシトシンが出て、子宮収縮が強まる。授乳中はむしろ痛みが増えることが多いのじゃ。
アユム
じゃあ授乳中に痛みが強まったら、我慢するしかないんですか?
博士
いやいや、産褥期でもアセトアミノフェンなど授乳中に使用可能な鎮痛薬は処方できる。痛みを我慢させると睡眠不足や育児疲労につながるからの。
アユム
痛みは何日くらい続くんでしょう?
博士
ピークは産褥2〜3日。4日目には落ち着いてくるのが普通じゃ。5日以降も強い痛みや悪露異常があれば、子宮復古不全や感染を疑う必要があるぞ。
アユム
子宮底の高さも復古の指標になりますよね。
博士
そう。分娩直後で臍下1〜2横指、産褥1日で臍高〜臍下1横指、10〜12日でほぼ恥骨上に隠れて、産褥6〜8週で非妊時に戻る。Aさんは臍下2横指で硬度良好、悪露赤色じゃから順調じゃ。
アユム
複数選択問題は迷いますね…。
博士
2つ選べの問題は「明らかに正しい」ものを2つ拾うのがコツじゃ。今回は「経産婦のほうが痛い」と「子宮が元に戻るための痛み」が明確に正しいから、それを軸に絞り込めばよい。
アユム
生理的現象だと理解してもらうことで、Aさんの不安が和らぐのも大事ですね。
POINT
後陣痛は産褥1日前後にピークとなる子宮復古に伴う生理的な収縮痛で、子宮を妊娠前の大きさに戻すために必要な反応です。経産婦は子宮筋の伸展性が高く、復古のために強く収縮する必要があるため初産婦より痛みを強く感じやすく、児の吸啜刺激で分泌されるオキシトシンによって授乳時に痛みが増す傾向があります。痛みのピークは産褥2〜3日で、4日目以降は速やかに軽快するのが通常で、それ以上長引く強い痛みや悪露の異常は子宮復古不全や子宮内感染を疑うサインです。看護師は機序を分かりやすく説明して不安を軽減すると同時に、必要時には授乳中でも使用可能な鎮痛薬の使用を医師と相談し、睡眠と育児の両立を支援します。子宮復古過程の指標と後陣痛の特徴は国試頻出領域なので、子宮底の高さの推移とあわせてセットで覚えておきましょう。
解答・解説
正解は 3 ・ 5 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(36歳、経産婦)は、夫(35歳)、男児(3歳)と3人で暮らしている。妊娠、分娩経過は順調で、妊娠39週5日で3,200gの女児を経腟分娩で出産した。1分後のApgar<アプガー>スコア9点、5分後のApgar<アプガー>スコア10点であった。産褥1日、Aさんの子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露は赤色であった。「1人目の出産後よりもお腹が痛くて眠れませんでした」と看護師に話す。 このときのAさんへの説明で適切なのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 3 と 5 です。産褥1日のAさんに見られている「1人目より痛い」という腹痛は、子宮復古に伴う後陣痛と考えられます。後陣痛は産褥早期の生理的現象で、分娩後に分泌されるオキシトシンによって子宮が収縮し、もとの大きさに戻ろうとする過程で生じる痛みです。経産婦は妊娠中に子宮が伸展しやすく、産後の子宮筋が一度に強く収縮しなければならないため、初産婦より後陣痛を強く感じやすい特徴があります。子宮底は臍下2横指、硬度良好、悪露赤色という所見も正常な復古経過を示しており、Aさんへの説明としては「経産婦のほうが痛みを強く感じる」ことと「子宮が元の大きさに戻るための痛み」であることを伝えるのが適切です。
選択肢考察
-
× 1. 「痛み止めは使用できません」
後陣痛が強く睡眠を妨げる場合は、医師の指示のもとアセトアミノフェンやNSAIDsなど授乳中でも使用可能な鎮痛薬で対応できる。「使用できません」と言い切るのは誤りで、苦痛緩和の機会を奪う説明になる。
-
× 2. 「授乳をすると痛みが和らぎます」
児の吸啜刺激は下垂体後葉からのオキシトシン分泌を促し、子宮収縮を強める。授乳中はむしろ後陣痛が一時的に増強しやすいため、「和らぐ」と説明するのは事実と逆である。
-
○ 3. 「経産婦のほうが痛みを強く感じます」
経産婦は妊娠を繰り返すうちに子宮筋線維の伸展性が高まり、産後の子宮復古には強い間欠的収縮が必要になる。このため後陣痛は初産婦よりも強く、間欠的に感じられやすい。
-
× 4. 「産後5日くらいまで痛みは続きます」
後陣痛のピークは産褥2〜3日で、3〜4日目以降は急速に軽快するのが一般的である。「5日くらいまで続く」と一律に説明するのは誤りで、痛みが長引く場合は子宮復古不全や感染を疑う必要がある。
-
○ 5. 「子宮が元の大きさに戻るための痛みです」
後陣痛は子宮復古過程の生理的な収縮痛で、分娩後の子宮を妊娠前の大きさに戻すために必要な反応である。原因を理解できると褥婦の不安が軽減するため、説明として最も適切である。
子宮復古は分娩直後に臍下1〜2横指、産褥1日で臍高〜臍下1横指、産褥10〜12日でほぼ恥骨上に隠れ、産褥6〜8週で非妊時の大きさに戻る。後陣痛は産褥2〜3日がピークで授乳時に強まりやすい。痛みが我慢できないときは医師の指示で鎮痛薬を使用できる。一方、4日目以降も強い痛みや子宮底の下降不良、悪露の異常(量の増加・悪臭・血塊)が続く場合は、子宮復古不全や子宮内感染を疑い医師に報告する。
産褥1日の経産婦における後陣痛の機序と特徴を問う問題。経産婦で強くなる理由と、子宮復古のための生理的現象であることを押さえる。
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