インスリン過量の警告サイン!低血糖症状を見逃すな
看護師国家試験 第112回 午前 第78問 / 疾病の成り立ちと回復の促進 / 疾病に対する医療
国試問題にチャレンジ
インスリンを過剰に投与したときに現れる症候で正しいのはどれか。
- 1.発熱
- 2.浮腫
- 3.口渇感
- 4.顔面紅潮
- 5.手足のふるえ
対話形式の解説
博士
今回はインスリン過剰投与時の症候を問う問題じゃ。糖尿病看護の基本中の基本じゃから、必ずマスターしておきたいぞ。
アユム
インスリンを多く入れすぎたら血糖が下がりすぎる、つまり低血糖になるってことですよね?
博士
その通り。正確な血糖値で言えば、だいたい70mg/dL未満が低血糖の目安じゃ。正常値は空腹時70〜110mg/dLくらいじゃな。
アユム
低血糖になると、具体的にはどんな症状が出るんですか?
博士
大きく2段階に分けて考えるのがコツじゃ。第1段階は交感神経症状、第2段階は中枢神経症状じゃ。
アユム
どう違うんですか?
博士
血糖が下がり始めると、まず体は危険を察知してアドレナリンをドバッと出す。これが交感神経症状の原因じゃ。動悸、冷汗、手のふるえ、顔面蒼白、空腹感、生あくび、これらは「体からの警告サイン」じゃ。
アユム
手のふるえ!これが選択肢5の「手足のふるえ」ですね!
博士
その通り、正解じゃ。アドレナリンによる振戦で、低血糖の典型症状の一つじゃ。
アユム
もう血糖が下がり続けるとどうなるんですか?
博士
血糖50mg/dL以下になると脳のブドウ糖供給が足らなくなり、中枢神経症状が出る。頭痛、集中力低下、異常行動、意識障害、けいれん、最終的には昏睡じゃ。この段階は危険じゃぞ。
アユム
じゃあ選択肢3の「口渇感」はどうですか?
博士
口渇はむしろ逆で、高血糖のサインじゃ。血糖が上がると浸透圧利尿で脱水傾向になり、多尿・多飲・口渇が起こる。これは糖尿病の3大症状、「3多」のひとつじゃな。
アユム
なるほど、低血糖と高血糖でまったく違う症状が出るんですね。
博士
選択肢4の「顔面紅潮」も間違えやすい。低血糖では交感神経緊張で末梢血管が収縮するから、顔面は「蒼白」になる。紅潮は発熱や更年期のホットフラッシュ、アルコールで起こる。
アユム
選択肢1の発熱と選択肢2の浮腫は、低血糖とは関係なさそうですね。
博士
その通り。低血糖の症状パターンをきっちり覚えておけば迷わん。
アユム
低血糖が起きたときの対処法も教えてください!
博士
意識があればブドウ糖10〜20gを経口摂取じゃ。甘い飴より吸収の速いブドウ糖タブレットやジュースがよい。意識障害があれば50%ブドウ糖20〜40mLを静注、家族対応ならグルカゴン筋注という選択肢もある。
アユム
インスリン治療中の患者さんには常にブドウ糖を携帯するよう指導するんですね。
博士
うむ。また注意したいのが「無自覚性低血糖」じゃ。長期糖尿病患者や頻回の低血糖経験者は交感神経症状が鈍くなり、警告なしに中枢症状がいきなり出ることがある。
アユム
β遮断薬を飲んでいる人でも症状が出にくいんですよね?
博士
鋭い!動悸や振戦が抑えられて警告症状が隠れてしまう。心疾患合併例では特に注意が必要じゃ。
アユム
スルホニル尿素薬やインスリンを使う患者さんの退院指導で、低血糖対応は絶対に外せないんですね。
博士
その通り。糖尿病看護の最重要ポイントじゃ。
POINT
インスリン過剰投与では低血糖が起こり、血糖値70mg/dL前後で交感神経症状(動悸・冷汗・手足のふるえ・顔面蒼白・空腹感・生あくび)、50mg/dL以下で中枢神経症状(意識障害・けいれん・昏睡)が出現します。選択肢5の手足のふるえはアドレナリン分泌による典型的な警告症状で、これを見逃さないことが重篤化の予防に直結します。口渇や多尿は逆に高血糖の症状であり、低血糖と高血糖の症状群を明確に区別して理解することが重要です。対応は経口ブドウ糖、重症時はブドウ糖静注やグルカゴン筋注で、患者指導ではブドウ糖携帯と無自覚性低血糖への警戒が欠かせません。糖尿病治療の普及により看護師が低血糖に遭遇する場面は増えており、症状の早期認識と迅速対応は臨床の最重要スキルです。
解答・解説
正解は 5 です
問題文:インスリンを過剰に投与したときに現れる症候で正しいのはどれか。
解説:正解は 5 です。インスリンは血糖値を下げるホルモンで、過剰投与すると低血糖を引き起こします。血糖値がおよそ70mg/dL未満になると交感神経刺激症状(動悸、冷汗、手のふるえ、顔面蒼白、空腹感、生あくびなど)が出現し、さらに50mg/dL前後まで下がると中枢神経症状(集中力低下、意識障害、けいれん、昏睡)へと進行します。選択肢5の「手足のふるえ」は低血糖の典型的な交感神経症状に該当します。
選択肢考察
-
× 1. 発熱
低血糖では発熱はむしろ起こりにくく、末梢血管収縮により皮膚温は低下する。発熱は感染症や炎症、甲状腺機能亢進症などで見られる症候。
-
× 2. 浮腫
低血糖に伴う典型症状ではない。浮腫は心不全、腎不全、低アルブミン血症、リンパ浮腫などで生じる。
-
× 3. 口渇感
口渇は高血糖で浸透圧利尿が起こり、脱水傾向になる際に出現する症状。低血糖の症候ではない。
-
× 4. 顔面紅潮
低血糖では交感神経緊張により末梢血管が収縮するため、顔面は紅潮ではなく蒼白になる。紅潮は発熱、更年期のホットフラッシュ、アルコール摂取などで起こる。
-
○ 5. 手足のふるえ
低血糖による交感神経刺激でアドレナリンが分泌され、手指や四肢の振戦(ふるえ)が出現する。動悸・冷汗・空腹感・顔面蒼白と並ぶ低血糖の警告症状の一つ。
低血糖症状は大きく2段階に分けられる。第1段階(血糖値70mg/dL前後)は交感神経症状で、動悸、冷汗、手のふるえ、顔面蒼白、空腹感、生あくびが出現し、これは警告症状として重要。第2段階(血糖値50mg/dL以下)は中枢神経症状で、頭痛、集中力低下、眠気、異常行動、意識障害、けいれん、昏睡へと進行する。対応は、意識があれば経口でブドウ糖10〜20g摂取、意識障害があればブドウ糖静注(50%ブドウ糖20〜40mL)またはグルカゴン筋注を行う。β遮断薬服用中は交感神経症状がマスクされ、中枢神経症状がいきなり出現することもあるため注意が必要。インスリン治療中の患者には、低血糖時の対処法(ブドウ糖常備)と無自覚性低血糖への警戒を指導する。
インスリン過剰による低血糖の典型症状、特に交感神経刺激症状を識別できるかを問う問題。高血糖症状(口渇・多尿)との混同を避けることがポイント。
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