精神保健医療福祉の法律迷子を卒業!主要法律の目的と対象を一気に整理
看護師国家試験 第106回 午前 第89問 / 精神看護学 / 精神保健医療福祉の変遷と法・施策
国試問題にチャレンジ
精神保健医療福祉に関する法律について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.自殺対策基本法に基づき自殺総合対策大綱が策定されている。
- 2.障害者基本法の対象は身体障害と精神障害の2障害と規定されている。
- 3.発達障害者支援法における発達障害の定義には統合失調症( schizophrenia )が含まれる。
- 4.精神通院医療の公費負担は精神保健福祉法による自立支援医療で規定されている。
- 5.犯罪被害者等基本法は犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目標としている。
対話形式の解説
博士
今回は精神保健医療福祉に関する法律の総合問題じゃ。似たような名前の法律が多くて混乱しやすいから、しっかり整理するのじゃ。
サクラ
自殺対策基本法、障害者基本法、発達障害者支援法、犯罪被害者等基本法…確かに多いですね。
博士
まずは選択肢1の「自殺対策基本法に基づく自殺総合対策大綱」から見ていこう。これは正解じゃ。
サクラ
基本法と大綱の関係って何ですか?
博士
基本法は理念と責務を定める法律じゃ。その理念を実行に移す具体的な指針として政府が大綱を作る。自殺対策基本法は2006年制定、大綱はおおむね5年ごとに見直されておる。
サクラ
なぜ自殺対策の法律が必要になったんですか?
博士
日本の自殺者数が1998年から3万人を超える状態が続き、社会問題となった。それを受けて2006年に制定されたんじゃ。現在は2万人前後に減少したが依然として重大な課題じゃ。
サクラ
選択肢2の「障害者基本法の対象は身体と精神の2障害」は?
博士
×じゃ。障害者基本法の対象は身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)、さらに「その他の心身の機能の障害」として難病等も含まれる。3障害以上じゃよ。
サクラ
知的障害が入るんですね、覚えておきます。選択肢3の「発達障害者支援法に統合失調症が含まれる」は?
博士
×じゃ。発達障害者支援法の定義は、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害じゃ。統合失調症は含まれない。
サクラ
統合失調症は精神保健福祉法の対象ですよね。
博士
その通り。精神保健福祉法の対象には統合失調症、精神作用物質による急性中毒または依存症、知的障害、精神病質、その他の精神疾患が含まれる。
サクラ
選択肢4の「精神通院医療の公費負担は精神保健福祉法の自立支援医療」は?
博士
×じゃ。これは引っかけポイントじゃよ。以前は精神保健福祉法で規定されていたが、2006年の障害者自立支援法の施行で、自立支援医療として障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)に移行したんじゃ。
サクラ
自立支援医療って3種類ありますよね?
博士
よく知っておるな。①精神通院医療、②更生医療(18歳以上の身体障害者の機能回復)、③育成医療(18歳未満の身体障害児の機能回復)、の3つじゃ。
サクラ
選択肢5の「犯罪被害者等基本法」は?
博士
これは正解じゃ。2004年制定で、第1条に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする」と明記されておる。
サクラ
看護師として知っておくべき被害者支援って何がありますか?
博士
犯罪被害者は身体的外傷だけでなく、PTSDやうつ病など精神的影響が大きい。救急外来や精神科で接することがあるから、二次被害を避けた配慮、守秘義務の徹底、専門機関への連携が重要じゃ。
サクラ
心神喪失者等医療観察法って精神科関連ですよね?
博士
その通り。重大な他害行為を行った精神障害者に対して、適切な医療と社会復帰を図る法律じゃ。指定入院医療機関での処遇が規定されておる。精神保健福祉法とは別の制度じゃ。
サクラ
法律ごとに対象と目的が明確に違うんですね。
博士
そうじゃ。看護師は対象者に応じた制度を案内できる力が求められる。特に退院支援や地域連携の場面で法律知識が活きるんじゃよ。
POINT
精神保健医療福祉に関する法律は多岐にわたり、それぞれの目的・対象・規定内容を正確に区別する必要があります。自殺対策基本法に基づき「自殺総合対策大綱」が策定され、犯罪被害者等基本法は被害者の権利利益の保護を目的としています。障害者基本法は身体・知的・精神(発達含む)の3障害以上を対象とし、発達障害者支援法の定義に統合失調症は含まれず、精神通院医療の公費負担は障害者総合支援法の自立支援医療として規定されるなど、細かな違いに注意が必要です。看護師は対象者の状況に応じて適切な法制度を紹介し、地域や臨床の支援につなげる役割を担うため、主要法律の体系を整理して理解しておくことが実践力の基盤となります。
解答・解説
正解は 1 ・ 5 です
問題文:精神保健医療福祉に関する法律について正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 1 と 5 です。自殺対策基本法(2006年制定)は自殺対策の基本理念と国・自治体の責務を定めた法律で、これに基づき政府は「自殺総合対策大綱」を策定し、おおむね5年ごとに見直しを行っている。犯罪被害者等基本法(2004年制定)は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とし、被害者支援のための基本施策を定めている。精神保健医療福祉を支える法律群の正確な理解は、看護師として地域や臨床で対象者を支援する上で不可欠である。
選択肢考察
-
○ 1. 自殺対策基本法に基づき自殺総合対策大綱が策定されている。
自殺対策基本法第12条に基づき、政府は自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱」を定めることとされている。大綱はおおむね5年ごとに見直され、重点施策が更新される。
-
× 2. 障害者基本法の対象は身体障害と精神障害の2障害と規定されている。
障害者基本法第2条における「障害者」は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者と定義され、3障害以上を包括する。
-
× 3. 発達障害者支援法における発達障害の定義には統合失調症( schizophrenia )が含まれる。
発達障害者支援法では、発達障害を自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害と定義している。統合失調症は含まれない。
-
× 4. 精神通院医療の公費負担は精神保健福祉法による自立支援医療で規定されている。
精神通院医療の公費負担は、かつて精神保健福祉法で規定されていたが、2006年以降は障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)の自立支援医療として規定されている。
-
○ 5. 犯罪被害者等基本法は犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目標としている。
犯罪被害者等基本法第1条で「犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする」と明記されている。被害者への情報提供、相談支援、経済的支援などの基本施策が定められている。
精神保健医療福祉関連の主要法律:①精神保健福祉法(精神障害者の医療・保護、入院形態、行動制限)、②障害者総合支援法(障害福祉サービス、自立支援医療)、③障害者基本法(障害者施策の基本理念、3障害+難病等)、④発達障害者支援法(発達障害者への支援)、⑤自殺対策基本法(自殺対策の基本理念)、⑥犯罪被害者等基本法(被害者支援)、⑦心神喪失者等医療観察法(重大な他害行為を行った精神障害者への医療)。それぞれの目的と対象を区別して覚えよう。
精神保健医療福祉に関連する複数の法律について、目的・対象・規定内容を正確に区別できるかを問う総合問題。
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