差出人不明の手紙が閉鎖病棟に届いたら?看護師が守るべき「通信の秘密」
看護師国家試験 第106回 午前 第81問 / 精神看護学 / 精神疾患・障害がある者への看護
国試問題にチャレンジ
精神科病院の閉鎖病棟に入院中の患者宛てに厚みのある封筒が届いた。差出人は記載されていなかった。 当日の看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1.患者に渡さず破棄する。
- 2.患者による開封に立ち会う。
- 3.開封せず患者の家族に転送する。
- 4.看護師が開封して内容を確認してから患者に渡す。
- 5.退院まで開封せずにナースステーションで保管する。
対話形式の解説
博士
今日は精神科閉鎖病棟の患者さんに、差出人不明の厚みのある封筒が届いたという状況じゃ。さて看護師としてどう対応するのがよいかの。
サクラ
厚みがあって差出人不明…ちょっと怖いですね。中身が危険物だったらと思うと、看護師が先に開けて確認した方が安全じゃないですか?
博士
ふむ、その気持ちは分かる。じゃが、日本国憲法第21条を思い出してほしい。ここには「検閲の禁止」と「通信の秘密」が明記されておるんじゃ。
サクラ
通信の秘密…つまり手紙を勝手に読んじゃいけないってことですよね。でも閉鎖病棟の患者さんでも同じなんですか?
博士
その通りじゃ。精神科病院に入院していても、基本的人権は当然守られる。むしろ精神保健福祉法第36条では、信書の発受は「絶対に制限してはならない行為」として明確に規定されておる。
サクラ
絶対に!それは強いですね。じゃあ中身が危険でも開けちゃダメなんですか?
博士
そこが今回のポイントじゃ。信書そのものを「取り上げる」「開封する」「破棄する」は看護師の判断でやってはいかん。ただし差出人不明で危険物が疑われる場合には、患者本人に説明して同意を得たうえで、一緒に開封する場面に立ち会うことは可能なんじゃ。
サクラ
なるほど!本人の権利を守りながら、安全も確認するバランスなんですね。
博士
その通り。選択肢1の破棄、3の家族への転送、4の看護師が先に開封、5の長期保管はすべて人権侵害にあたる。正解は2の「患者による開封に立ち会う」じゃ。
サクラ
家族に転送するのもダメなんですね。親切心でやりそうですけど…。
博士
家族であっても本人の同意なく郵便物を渡すのは個人情報漏洩じゃ。精神科看護では「善意のつもり」が人権侵害になる場面が多いから注意が必要じゃな。
サクラ
精神保健福祉法で「絶対に制限できないもの」は他にもあるんですか?
博士
ある。信書の発受のほか、①人権擁護機関の職員との電話・面会、②本人または家族などが依頼した弁護士との電話・面会、これらも絶対に制限できん。行動制限最小化の原則と合わせて国試で頻出じゃよ。
サクラ
処遇の三大原則とも関わってきそうですね。
博士
うむ。任意入院の原則、書面による告知義務、そして行動制限の最小化。この3つは精神科看護の柱じゃから、必ず覚えておくのじゃ。
サクラ
患者さんの尊厳と安全を両立させる視点、すごく大切だと感じました。
POINT
精神科閉鎖病棟に入院中の患者への信書は、憲法第21条の「通信の秘密」と精神保健福祉法第36条により、原則として制限してはならない基本的人権として保障されています。差出人不明で内容物の安全性に懸念がある場合でも、看護師が勝手に開封・破棄・転送することは人権侵害にあたり、患者本人の同意を得たうえで開封に立ち会うという対応が最も適切です。精神科看護では「善意のつもりの行動」が患者の権利を侵害してしまう場面が多く、処遇の三大原則(任意入院の原則・告知義務・行動制限の最小化)を踏まえた判断が求められます。この問題は、閉鎖処遇下であっても人権尊重を貫くという精神科看護の根幹を確認する重要な出題といえるでしょう。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:精神科病院の閉鎖病棟に入院中の患者宛てに厚みのある封筒が届いた。差出人は記載されていなかった。 当日の看護師の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。日本国憲法第21条で「検閲の禁止」「通信の秘密」が保障されており、これは精神科の閉鎖病棟に入院中の患者であっても同様に守られる基本的人権である。また、精神保健福祉法第36条では、信書の発受の制限は原則禁止されており、行動制限の中でも「絶対に制限してはならない行為」に位置付けられている。ただし差出人不明で厚みのある封筒の場合、危険物や患者の病状を悪化させる内容物が入っている可能性もあるため、看護師が勝手に扱うのではなく、患者本人が開封する場面に立ち会い、安全を確認しつつ本人の権利を尊重する対応が最も適切である。
選択肢考察
-
× 1. 患者に渡さず破棄する。
患者宛の郵便物を本人の同意なく破棄することは、信書を受け取る権利を奪う重大な人権侵害にあたる。閉鎖病棟入院中であっても同様である。
-
○ 2. 患者による開封に立ち会う。
信書は患者本人が開封するのが原則。差出人不明で内容物が不明なことから、危険物や不穏を誘発するものが入っていないかを確認するため、患者の同意を得て開封に立ち会うのが最も適切な対応である。
-
× 3. 開封せず患者の家族に転送する。
患者宛の郵便物を本人の同意なく家族に転送することは、通信の秘密を侵害し、個人情報の漏洩にもつながる。信書の発受を制限することにもあたり不適切。
-
× 4. 看護師が開封して内容を確認してから患者に渡す。
看護師が本人の同意なく開封する行為は、憲法21条で禁じられる検閲にあたり、重大な人権侵害である。精神保健福祉法上も信書の開封は認められない。
-
× 5. 退院まで開封せずにナースステーションで保管する。
患者の同意なく長期間保管することは、信書を受け取る権利の制限にあたる。信書の発受は精神保健福祉法で原則制限してはならない行為とされている。
精神保健福祉法第36条では、入院患者への行動制限の中でも、①信書の発受、②人権擁護機関の職員や弁護士との電話・面会、などは「絶対に制限してはならない行為」と定められている。一方で、刃物・凶器など危険物の同封が疑われる場合には、患者本人の立ち会いのもとで開封し、医療上必要最小限の範囲で対応することが認められている。処遇の三大原則(任意入院の原則、告知義務、行動制限の最小化)とあわせて押さえておくとよい。
精神科閉鎖病棟における信書の取り扱いを通して、患者の基本的人権(通信の秘密)をいかに守るかを問う問題。
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