集団精神療法のリーダーは何をする?沈黙も非言語も味方につける
看護師国家試験 第106回 午前 第88問 / 精神看護学 / 精神疾患・障害がある者への看護
国試問題にチャレンジ
入院集団精神療法において、看護師が担うリーダーの役割で正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1.患者間の発言量を均等にする。
- 2.沈黙も意味があると受け止める。
- 3.メンバーの座る位置を固定する。
- 4.患者の非言語的サインに注目する。
- 5.話題が変わった場合はすぐに戻す。
対話形式の解説
博士
今日は入院集団精神療法における看護師のリーダー役割についてじゃ。グループをどう運営するかの基本を学ぶぞ。
アユム
集団精神療法って具体的に何をするんですか?
博士
精神科の入院患者を対象に、グループの中で言葉や表現を通して対人関係技術や自己洞察を深める治療法じゃ。他の患者との交流で「自分だけじゃない」と気づけるのも大きな意味があるんじゃよ。
アユム
なるほど、仲間との相互作用が治療になるんですね。Yalomという人の治療的因子を聞いたことがあります。
博士
よく知っておるな。Yalomは希望の注入、普遍性、情報の提供、愛他主義、対人学習など11の治療的因子を挙げておる。
アユム
リーダーとして看護師は何に気をつけるんですか?
博士
基本姿勢は、①安全な場の保障、②自発性の尊重、③受容と傾聴、④非言語的サインへの注目、⑤グループダイナミクスの観察、の5つじゃ。
アユム
選択肢1の「発言量を均等にする」は良さそうに見えますけど…
博士
実は×じゃ。発言量を均等化しようとすると、話したくない人に無理に話させることになって自発性を損ねる。リーダーの役割は「話しやすい雰囲気を作る」ことで「発言量を調整する」ことではない。
アユム
選択肢2の「沈黙も意味があると受け止める」は?
博士
これは〇じゃ。沈黙は考えを整理する時間だったり、感情の揺れや関係性の変化を反映することもある。沈黙を恐れず意味あるものとして受け止めるのがリーダーの大切な姿勢じゃ。
アユム
沈黙ってつい埋めたくなっちゃいます…。
博士
初心者にありがちじゃな。じゃが沈黙を埋めようと焦ると、メンバーの思考や感情の流れを遮断してしまうんじゃよ。
アユム
選択肢3の「座る位置を固定する」は?
博士
×じゃ。座る場所を強制すると参加者にストレスがかかる。自由に座れることで安心感が生まれ、自然な対人関係が形成されやすい。ただし円形に配置するなど、全員の顔が見える配置は大切じゃ。
アユム
選択肢4の「非言語的サインに注目する」は〇ですね。
博士
その通り。表情、視線、姿勢、呼吸、身振りは言語化されない内面の手がかりじゃ。例えばうつむき加減で呼吸が浅い参加者は不安を抱えているかもしれん。こうした観察が次の介入につながる。
アユム
選択肢5の「話題が変わったらすぐ戻す」は?
博士
×じゃ。話題の転換はメンバーの関心の変化や、話しにくい話題からの無意識的回避を反映することがある。すぐ戻すより、なぜ変わったのか、その流れに意味があるのかを観察するほうが治療的じゃ。
アユム
グループダイナミクスって何ですか?
博士
グループ内に自然に発生する相互作用のことじゃ。リーダー役、サブリーダー役、スケープゴート役など、メンバー間の役割や力動を観察することで介入の糸口が見えるぞ。
アユム
難しそうですけど、言語より非言語を観察するのが鍵ですね。
博士
うむ。精神科看護ではSST(社会生活技能訓練)やデイケアでも同じ視点が使える。集団の力を治療に生かす視点を身につけておくのじゃ。
アユム
看護師が集団の中で個々を見る力、大事ですね。
POINT
入院集団精神療法において看護師がリーダーを担う際は、参加者の自発性を尊重し、安全で受容的な場を提供することが基本姿勢となります。沈黙も非言語的コミュニケーションとして意味を持つため受け止め、表情・視線・姿勢などの非言語的サインから内面を理解することが、効果的な介入につながります。発言量を無理に均等化したり、座る位置を固定したり、話題の転換を強制的に戻したりすることは、かえって自発性や治療的雰囲気を損なうため避けるべきです。Yalomの治療的因子やグループダイナミクスの視点を持ちながら、集団の力を治療に生かす姿勢は、SST・デイケア・作業療法など精神科看護の多様な場面で応用できる重要なスキルです。
解答・解説
正解は 2 ・ 4 です
問題文:入院集団精神療法において、看護師が担うリーダーの役割で正しいのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 2 と 4 です。入院集団精神療法は、精神科入院患者を対象に、言語的・非言語的な対人交流を通して自己洞察や対人関係技術の向上、不安や葛藤の緩和を図る治療法である。看護師などがリーダーとしてグループを運営する際は、参加者の自発性を尊重し、安全で受容的な場を提供することが基本姿勢となる。沈黙もコミュニケーションの一形態として意味を持つため受け止める姿勢が重要であり、表情・視線・姿勢といった非言語的サインにも注目してメンバーの内面を理解することが求められる。
選択肢考察
-
× 1. 患者間の発言量を均等にする。
発言量を無理に均等化しようとするとかえって自発性を損ね、参加者にストレスを与える。リーダーは発言しやすい雰囲気を作ることが大切で、発言の量を調整することではない。
-
○ 2. 沈黙も意味があると受け止める。
沈黙は考えを整理する時間、感情の揺れ、関係性の変化など、さまざまな意味を持つ非言語的コミュニケーション。リーダーは沈黙を恐れず、意味あるものとして受容する姿勢が必要である。
-
× 3. メンバーの座る位置を固定する。
座る位置を強制すると参加者のストレスを高める。自由に座ってもらうことでリラックスして安心感を持って参加でき、自然な対人関係が形成されやすい。
-
○ 4. 患者の非言語的サインに注目する。
表情・視線・姿勢・呼吸・身振りなどの非言語的サインは、言語化されない内面を示す重要な手がかり。リーダーはそれらを丁寧に観察し、メンバーの状態理解と適切な介入につなげる。
-
× 5. 話題が変わった場合はすぐに戻す。
話題の転換はメンバーの関心や無意識の回避を反映することがある。すぐ戻すのではなく、その流れに意味を見出し、必要に応じて適切に扱うのが望ましい。
集団精神療法にはYalomが提唱した治療的因子(希望の注入、普遍性、情報の提供、愛他主義、対人学習、模倣行動、感情の解放など)が働くとされる。看護師がリーダーを務める際の基本姿勢は、①安全な場の保障、②自発性の尊重、③受容と傾聴、④非言語的サインへの注目、⑤グループダイナミクスの観察、である。SST(社会生活技能訓練)や作業療法、デイケアなどでも同様の視点が求められる。
集団精神療法におけるリーダーシップの基本原則を問う問題。自発性の尊重と非言語的サインへの注目がポイント。
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