「治る」を超えて「生き直す」へ。精神看護のキーワード、リカバリーとは
看護師国家試験 第114回 午後 第68問 / 精神看護学 / 精神看護の対象理解と支援
国試問題にチャレンジ
精神障害のある人のリカバリーで正しいのはどれか。
- 1.症状の回復がゴールである。
- 2.直線的なプロセスをたどる。
- 3.主体的に人生を新たに生き直すことである。
- 4.ストレス脆弱性に焦点を当てた支援である。
対話形式の解説
博士
今日は精神看護の中核概念、リカバリーじゃ。実は近年の国試頻出テーマじゃぞ。
アユム
リカバリーって「回復」って意味ですよね。症状が良くなることだと思ってました。
博士
そこが落とし穴じゃ。医学的に症状が消えることはクリニカル・リカバリーと呼ばれる。一方、精神看護で重要視されるのはパーソナル・リカバリーじゃ。
アユム
パーソナル・リカバリーですか?
博士
Anthonyというアメリカの研究者が定義したもので、「病気や障害によって失ったものを取り戻し、新しい意味と目的をもって生き直していく深く個人的なプロセス」と表現されるのじゃ。
アユム
症状が残っていてもリカバリーは可能なんですか?
博士
その通り。幻聴や不安が残っていても、自分の人生に希望や意味を見出して主体的に生きていれば、それは確かにリカバリーじゃ。
アユム
選択肢1「症状の回復がゴール」は違うんですね。
博士
症状改善は手段や中間目標ではあるがゴールではない。むしろ症状をコントロールしながら自分らしい生活を取り戻すことが本質じゃ。
アユム
選択肢2の「直線的なプロセス」はどうですか?
博士
これも違う。リカバリーは行きつ戻りつ揺れ動く。再発、挫折、そこからの再出発を繰り返しながら螺旋的に進む非直線的プロセスじゃ。
アユム
CHIMEというキーワードを聞いたことがあります。
博士
お、よく知っておるな。Leamyらが整理したリカバリーの5要素じゃ。Connectedness(つながり)、Hope(希望)、Identity(アイデンティティ)、Meaning(意味)、Empowerment(エンパワメント)の頭文字を取ったものじゃ。
アユム
選択肢4の「ストレス脆弱性に焦点を当てた支援」はどうですか?
博士
これは医学モデルの考え方で、弱さや欠点に注目する。一方、リカバリーで重視されるのはストレングス(強み)モデルじゃ。本人が持つ力、好きなこと、得意なこと、希望、人とのつながりを掘り起こして活かす支援じゃ。
アユム
具体的な支援方法にはどんなものがありますか?
博士
WRAP(元気回復行動プラン)、ピアサポート、IPS就労支援、ACT(包括型地域生活支援)、ストレングスケースマネジメントなどじゃ。当事者自身が支援者になるピアサポートはリカバリー志向の象徴じゃな。
アユム
看護師の関わり方も変わりそうですね。
博士
そうじゃな。指示する人から伴走者へ。本人の希望を中心に置き、選択と決定を支える役割じゃ。次の問題で出てくる「共同創造(コプロダクション)」とも深くつながっておるぞ。
アユム
精神看護はやはり奥が深いですね。
POINT
パーソナル・リカバリーは、症状の消失ではなく障害を抱えながらも自分らしく主体的に人生を生き直していくプロセスを指す概念です。Anthonyの定義に基づき、希望、責任、自己決定、つながり、アイデンティティを核に展開し、Leamyらは構成要素をCHIME(つながり・希望・アイデンティティ・意味・エンパワメント)として整理しました。リカバリーは行きつ戻りつする非直線的プロセスで、本人の弱さではなくストレングス(強み)に焦点を当てる点で従来の医学モデルと一線を画します。WRAPやピアサポート、IPS就労支援などがリカバリー志向の代表的な支援であり、看護師は伴走者として本人の希望を中心に据えた関わりが求められます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:精神障害のある人のリカバリーで正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。精神障害領域における「リカバリー」とは、症状の消失や機能の完全回復を意味する医学的回復(クリニカル・リカバリー)にとどまらず、障害や症状を抱えながらも自分らしく主体的に人生を生き直していくプロセス(パーソナル・リカバリー)を指す。Anthonyによる定義「人が病気や障害によって失ったものを取り戻し、新たな意味と目的を持って生き直していく深く個人的なプロセス」が代表的で、希望、責任、自己決定、つながり、アイデンティティが鍵となる。
選択肢考察
-
× 1. 症状の回復がゴールである。
症状の改善は目標の一つではあるが、リカバリーのゴールではない。症状が残っていても自分らしい生き方を取り戻すこと自体がリカバリーである。
-
× 2. 直線的なプロセスをたどる。
リカバリーは行きつ戻りつ揺れ動く非直線的なプロセスで、再発や挫折を経験しながら螺旋的に進んでいく。
-
○ 3. 主体的に人生を新たに生き直すことである。
本人が希望と自己決定を持ち、自分らしい人生を主体的に生き直していく過程こそパーソナル・リカバリーの本質である。
-
× 4. ストレス脆弱性に焦点を当てた支援である。
リカバリー志向の支援は弱さや脆弱性ではなく、本人の強み(ストレングス)と希望に焦点を当てるストレングスモデルに基づく。
Leamyらが整理したパーソナル・リカバリーの構成要素「CHIME」は、Connectedness(つながり)、Hope(希望)、Identity(アイデンティティ)、Meaning(意味)、Empowerment(エンパワメント)の頭文字である。支援方法としてはストレングスモデル、WRAP(元気回復行動プラン)、ピアサポート、IPS就労支援、ACTなどがあり、地域生活への移行を支える基盤となる。リカバリーは「治る」より「生き直す」概念であり、看護師は本人の希望を中心に置く姿勢が求められる。
精神看護におけるリカバリーの本質(パーソナル・リカバリー)と、症状軽減中心の医学モデルとの違いを問う問題である。
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