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統合失調症と家族コミュニケーション

看護師国家試験 第111回 午後 第67問 / 精神看護学 / 精神看護の対象理解と支援

国試問題にチャレンジ

111回 午後 第67問

母親がAさん(27歳、統合失調症(schizophrenia))に対して「親に甘えてはいけない」と言いながら、過度にAさんの世話をすることで、Aさんが混乱していた。 この親子関係を示すのはどれか。

  1. 1.共依存
  2. 2.同一視
  3. 3.ネグレクト
  4. 4.二重拘束〈ダブルバインド〉

対話形式の解説

博士 博士

27歳統合失調症のAさん。母親が『親に甘えてはいけない』と口では言いながら、過度に世話をする。Aさんは混乱しておる。この関係性を示す用語を選ぶ問題じゃ。

サクラ サクラ

言葉と行動が矛盾しているんですよね。

博士 博士

そのとおり。正解は選択肢4の二重拘束、いわゆるダブルバインドじゃ。ベイトソンが統合失調症の家族研究から提唱した概念じゃ。

サクラ サクラ

言葉では拒絶、行動では受容、どちらに従っても否定される状況ですね。

博士 博士

うむ。受け手は逃げ場を失い、混乱や無力感を抱える。これが繰り返されると病理的なコミュニケーションパターンになる。

サクラ サクラ

選択肢1の共依存との違いは?

博士 博士

共依存は互いに必要とし合い、相手に必要とされることで自己価値を確認する関係じゃ。矛盾メッセージの問題とは別物じゃ。

サクラ サクラ

選択肢2の同一視は?

博士 博士

同一視は防衛機制の一つで、他者を自分の一部のように感じること。親が子を自分の分身のように扱う場合などじゃが、今回の矛盾メッセージ状況とは違う。

サクラ サクラ

選択肢3のネグレクトは『過度に世話をする』と正反対ですよね。

博士 博士

そうじゃ。ネグレクトは保護・養育義務の放棄、虐待の一形態。本事例の過保護とは真逆じゃ。

サクラ サクラ

二重拘束は現在では統合失調症の直接原因とはされていないと聞きました。

博士 博士

うむ、病因ではなく家族内コミュニケーションの病理として理解されておる。ただ高EE、つまり批判・敵意・過干渉の強い家族環境は再発率を高めるとされる。

サクラ サクラ

看護師としてできることは何でしょう?

博士 博士

心理教育で家族に病気を理解してもらい、適切な距離感と一貫したコミュニケーションを学んでもらうことじゃ。家族療法や家族会への紹介も有効じゃ。

サクラ サクラ

患者本人へのケアは?

博士 博士

感情の言語化を促し、安全な対人関係を病棟で体験してもらう。SSTで対人スキルを学ぶのも効果的じゃ。

POINT

二重拘束は言語と非言語で矛盾するメッセージが発せられ、受け手がどう反応しても否定される状況です。共依存、同一視、ネグレクトとは概念が異なります。統合失調症では高EEの家族環境が再発率を高めるため、心理教育や家族療法で家族のコミュニケーションパターンを整えることが重要です。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:母親がAさん(27歳、統合失調症(schizophrenia))に対して「親に甘えてはいけない」と言いながら、過度にAさんの世話をすることで、Aさんが混乱していた。 この親子関係を示すのはどれか。

解説:正解は 4 です。母親がAさんに『甘えてはいけない』という言葉のメッセージ(拒絶)と、『過度に世話をする』という行動のメッセージ(受容)という矛盾するシグナルを同時に発しており、受け手のAさんはどちらに従っても否定されるという状況に置かれています。これがベイトソンの提唱した二重拘束〈ダブルバインド〉の典型例です。

選択肢考察

  1. × 1.  共依存

    共依存は相手に必要とされることで自己価値を確認し、互いに依存し合う関係性を指します。矛盾する二つのメッセージの授受とは概念が異なります。

  2. × 2.  同一視

    同一視は自分と他者の境界を曖昧にして他者を自分の一部のように感じる防衛機制で、本設問の矛盾メッセージ状況には当てはまりません。

  3. × 3.  ネグレクト

    ネグレクトは子どもや高齢者への保護・養育義務を放棄する虐待の一形態で、過度に世話をする本事例とは逆の関係性です。

  4. 4.  二重拘束〈ダブルバインド〉

    言語と非言語(行動)で矛盾するメッセージが発せられ、受け手がどう応じても否定される状況を指します。本事例の母親の関わりに合致します。

二重拘束仮説はベイトソンが統合失調症の発症要因として提唱した理論で、現在は直接的な病因とは考えられていないものの、家族内コミュニケーションの病理として重要です。統合失調症では家族の高EE(high expressed emotion、批判・敵意・過干渉)が再発率を高めることが知られており、心理教育や家族療法で家族のコミュニケーションパターンを修正することが再発予防に有効とされています。

統合失調症患者を取り巻く家族内コミュニケーションの病理を理解し、矛盾する言語・行動メッセージ=二重拘束の概念を識別できるかを問う問題です。