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心周期と弁の開閉――心房拡張期の途中で房室弁が開く意味を読み解く

看護師国家試験 第115午後76

国試問題にチャレンジ

115午後76

心臓からの血液の拍出について正しいのはどれか。

  1. 1.静脈還流量より多い。
  2. 2.左心系の方が右心系より多い。
  3. 3.左右の動脈弁は同時に閉まる。
  4. 4.心房拡張期の途中で房室弁が開く。
  5. 5.心室収縮期は動脈弁が開いて開始する。

対話形式の解説

博士博士
今日は心周期の問題じゃ。『心臓からの血液の拍出について正しいのはどれか』、君ならどれを選ぶかな?
サクラサクラ
うーん、選択肢3の『左右の動脈弁は同時に閉まる』ですか?II音がそれですよね。
博士博士
惜しい。確かにII音は大動脈弁と肺動脈弁の閉鎖音じゃが、厳密には吸気時に右心系の駆出時間が延長して肺動脈弁の閉鎖がわずかに遅れる『生理的II音分裂』が起こる。だから『同時』とは言い切れず、本問では誤とされる。
サクラサクラ
えっ、そんな細かい話なんですか…じゃあ正解は?
博士博士
正解は4『心房拡張期の途中で房室弁が開く』じゃ。心房と心室の動きを整理しよう。
サクラサクラ
心房拡張期…って、いつのことですか?
博士博士
心房は心室収縮期にも、大静脈や肺静脈からの還流を受けながら充満・拡張しておる。心房自身の収縮は心室拡張末期にちょっとだけ起こるんじゃ。だから心周期の大半は『心房拡張期』と言える。
サクラサクラ
ということは、心室の収縮が終わって拡張に切り替わるタイミングで、心室内圧が心房内圧より下がって房室弁が開く…そのとき心房はまだ拡張中なんですね。
博士博士
見事じゃ。房室弁(僧帽弁・三尖弁)の開放は心房がまだ拡張・充満状態のうちに起こるから『心房拡張期の途中で房室弁が開く』と表現できるんじゃ。
サクラサクラ
I音とII音の対応も復習しておきたいです。
博士博士
I音は房室弁の閉鎖音で心室収縮の開始を示す。II音は動脈弁の閉鎖音で心室拡張の開始を示すんじゃ。『I音=房室弁=収縮開始、II音=動脈弁=拡張開始』と覚えるとよい。
サクラサクラ
選択肢1の『静脈還流量より多い』はなぜ間違いか分かります。心臓に戻ってくる血液量より出る量が多かったら、いずれ血液がなくなっちゃいますもんね。
博士博士
その通り。Frank-Starlingの法則とも関連するが、循環は閉じた回路だから入った分しか出せん。
サクラサクラ
選択肢2の左心系のほうが多いというのも、肺循環と体循環は直列だから同じ量になるはずですよね。左室壁が厚いのは圧力を出すためで、量の話じゃない。
博士博士
完璧な理解じゃ!もし左右の拍出量がズレ続ければ、肺うっ血や体うっ血になってしまうからのう。
サクラサクラ
選択肢5の『心室収縮期は動脈弁が開いて開始する』はどうですか?
博士博士
これも引っかけじゃ。収縮が始まっても、心室内圧が大動脈圧を超えるまでは大動脈弁は開かない。この間を等容収縮期と呼び、4つの弁すべてが閉じておる。心室内圧が動脈圧を超えてはじめて駆出期に入るんじゃ。
サクラサクラ
だから収縮開始=動脈弁が開く、ではないんですね。同じように心室が拡張しても心房圧を下回るまでは房室弁は開かず、それを等容弛緩期というんですね。
博士博士
見事に整理できたのう!心周期は『等容収縮期→駆出期→等容弛緩期→充満期(急速流入+緩徐流入+心房収縮)』の4つの相で覚えると、どの時相で何が起きているか迷わなくなるぞ。
サクラサクラ
臨床ではこの知識ってどう使うんですか?
博士博士
例えば心不全患者でII音の亢進があれば肺高血圧症が疑われるし、II音の固定性分裂は心房中隔欠損症で典型的じゃ。心音を聴く意味は、まさにこの弁の動きと血行動態を耳で評価することにあるんじゃよ。
サクラサクラ
心周期の理解が聴診や心エコーの解釈に全部つながるんですね。

POINT

心周期における4つの弁の開閉タイミングと、左右拍出量・静脈還流量の関係を圧変化と循環の連続性から理解できているかを問う問題。

解答・解説

正解は4です

問題文:心臓からの血液の拍出について正しいのはどれか。

解説:正解は4。心周期は心房・心室の収縮と弛緩、そして4つの弁の開閉によって精緻に制御されている。心室駆出期(心室収縮期)の間も、心房は大静脈・肺静脈からの還流を受けて充満・拡張している。心室の駆出が終わり等容弛緩期を経て心室内圧が心房内圧を下回ると、心房がまだ拡張・充満状態のうちに房室弁(左:僧帽弁、右:三尖弁)が開放して急速流入が始まる。心房自身の収縮は心室拡張末期に起こり、最後の充満を担う。したがって『心房拡張期の途中で房室弁が開く』は心周期の関係を正しく示している。なお定常状態では心拍出量と静脈還流量は等しく、肺循環と体循環は直列回路のため左右拍出量も同量となる。動脈弁の閉鎖は吸気時に生理的分裂を呈し厳密には同時ではなく、心室収縮の開始時は全弁閉鎖の等容収縮期があり動脈弁の開放はその後である。

選択肢考察

  1. ×1.  静脈還流量より多い。

    定常状態では心拍出量と静脈還流量は等しい。もし拍出量が還流量を上回り続ければ心臓に戻る血液が枯渇し、循環が破綻するため成立しない。

  2. ×2.  左心系の方が右心系より多い。

    体循環と肺循環は直列回路なので、長期的には左室拍出量と右室拍出量は等しい。左室壁が厚いのは高い圧力を発生させるためで、拍出量の差を意味するものではない。

  3. ×3.  左右の動脈弁は同時に閉まる。

    大動脈弁と肺動脈弁は心室拡張開始時にほぼ同時に閉鎖してII音を形成するが、吸気時には右心系の駆出時間が延長し肺動脈弁の閉鎖がわずかに遅れる『生理的II音分裂』が生じる。厳密には『同時』とは言えない点で誤り。

  4. 4.  心房拡張期の途中で房室弁が開く。

    心室駆出中も心房は静脈還流を受けて充満・拡張している。心室拡張が始まり心室内圧が心房内圧を下回ると、心房がまだ拡張・充満状態のうちに房室弁が開いて急速流入が始まる。したがって心房拡張期の途中で房室弁が開くと表現でき、これが正解。

  5. ×5.  心室収縮期は動脈弁が開いて開始する。

    心室収縮はまず全弁閉鎖の等容収縮期から始まる。心室内圧が動脈圧を上回って初めて動脈弁が開放し、駆出期へ移行する。

心音と弁の対応は国試頻出。I音は房室弁(僧帽弁+三尖弁)の閉鎖音で心室収縮の開始を、II音は動脈弁(大動脈弁+肺動脈弁)の閉鎖音で心室拡張の開始を示す。II音は吸気時に右心系の駆出時間が延長することで生理的分裂を呈する。心周期の順序は『等容収縮期→駆出期→等容弛緩期→充満期(急速流入+緩徐流入+心房収縮)』と整理しておくと、どの時相でどの弁が開閉するかを迷わず答えられる。

心周期における4つの弁の開閉タイミングと、左右拍出量・静脈還流量の関係を圧変化と循環の連続性から理解できているかを問う問題。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。