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土から忍び寄る破傷風菌、その正体に迫る

看護師国家試験 第115午前4 / 必修問題

国試問題にチャレンジ

115午前4

土壌中に分布し感染を引き起こすのはどれか。

  1. 1.結核菌
  2. 2.コレラ菌
  3. 3.破傷風菌
  4. 4.カンピロバクター

対話形式の解説

博士博士
今日は土の中にひそむ細菌の話じゃ。問題115-4は『土壌中に分布し感染を引き起こすのはどれか』というシンプルな問いじゃが、ここで覚えるべき知識は意外と奥深いぞ。
サクラサクラ
選択肢は結核菌、コレラ菌、破傷風菌、カンピロバクターですね。うーん、どれも有名な菌ですが、土の中というと…結核菌でしょうか?よく『土埃を吸って感染する』みたいなイメージがあって。
博士博士
ふむ、よくある誤解じゃな。結核菌は土壌菌ではないんじゃよ。患者が咳やくしゃみをしたときに飛んだ飛沫の水分が空気中で蒸発し、菌だけが小さな粒子となって長時間漂う。それを吸い込んで感染するのが結核じゃ。これを『飛沫核感染』あるいは『空気感染』と呼ぶ。
サクラサクラ
なるほど、土ではなく人から人に空気を介して感染するんですね。ではコレラ菌は?海外旅行で水に注意、というイメージがあります。
博士博士
その通り、コレラ菌は糞便で汚染された水や食品を介して経口感染する。衛生環境の悪い地域での流行が典型じゃな。海水や河口にはいることもあるが、土壌常在菌ではない。
サクラサクラ
じゃあ残るは破傷風菌とカンピロバクター…カンピロバクターは食中毒で有名ですよね。鶏肉の生焼けとか。
博士博士
ご名答。カンピロバクターは鶏や牛などの腸管に常在しており、加熱不十分な鶏肉や生レバーが感染源になる。日本の細菌性食中毒の発生件数では常に上位じゃ。土壌の常在菌ではない。
サクラサクラ
ということは…正解は破傷風菌ですね!
博士博士
その通り、正解は3じゃ。破傷風菌はClostridium tetaniというグラム陽性の嫌気性桿菌で、芽胞という殻のような構造を作る。この芽胞は乾燥にも熱にも消毒薬にも極めて強く、世界中の土壌や塵の中に普通に存在しておる。
サクラサクラ
芽胞ってよく聞きますが、なぜそんなに強いんですか?
博士博士
芽胞は細菌が過酷な環境を生き延びるための『休眠状態』のようなもので、厚い殻に包まれ、代謝もほぼ停止しておる。じゃが、深い傷の中のように酸素が少ない嫌気的環境に入ると発芽し、増殖を始める。そして強力な神経毒テタノスパスミンを産生するのじゃ。
サクラサクラ
神経毒…どんな症状が出るんですか?
博士博士
最初は傷口近くの違和感や口が開きにくくなる『開口障害(牙関緊急)』が出る。進行すると顔の筋肉がひきつる『痙笑』、背中が反り返る『後弓反張』、全身のけいれん発作が起こる。意識ははっきりしているのに体は動かせない、非常に苦しい病気じゃ。
サクラサクラ
怖いですね…致死率はどのくらいですか?
博士博士
治療をしても10〜20%と高い。だからこそ予防が重要なんじゃ。日本ではDPT-IPVワクチン、いわゆる4種混合に破傷風トキソイドが含まれておって、乳幼児期に定期接種される。じゃが免疫は永久ではなく、10年ほどで弱まるため、汚染された深い創傷を負った場合はトキソイド追加接種や抗破傷風人免疫グロブリン投与を検討する。
サクラサクラ
臨床で創傷の患者さんを見たらワクチン歴を確認するんですね。覚えておきます!
博士博士
うむ。ちなみに土壌由来の感染症はクロストリジウム属が代表で、ガス壊疽のC. perfringensやボツリヌス症のC. botulinumも仲間じゃ。芽胞を作って土の中で長く生き延びるという共通点を押さえておくと整理しやすいぞ。

POINT

細菌の生息環境と感染経路を結びつける問題であり、土壌中に芽胞として分布し創傷から感染する破傷風菌を選び出せるかが問われている。

解答・解説

正解は3です

問題文:土壌中に分布し感染を引き起こすのはどれか。

解説:正解は3の破傷風菌である。破傷風菌(Clostridium tetani)はグラム陽性の偏性嫌気性桿菌で、芽胞を形成する性質を持つ。芽胞は乾燥・熱・消毒薬に対して非常に強い抵抗性を示し、世界中の土壌や塵埃、動物の腸管内・糞便中に広く分布している。釘を踏む・農作業中の創傷・園芸での擦過傷など、土壌で汚染された傷口から芽胞が体内に侵入すると、嫌気的環境(深い創や壊死組織内)で発芽し、強力な神経毒であるテタノスパスミン(破傷風毒素)を産生する。この毒素が末梢神経から中枢神経に逆行性に運ばれ、抑制性神経伝達物質(GABA・グリシン)の放出を阻害することで、開口障害(牙関緊急)、痙笑、後弓反張、全身性筋けいれんなどを引き起こす。潜伏期は3〜21日(平均8日程度)で、発症後の致死率は治療を行っても10〜20%と高い。日本ではDPT-IPVワクチン(4種混合)に破傷風トキソイドが含まれており、定期接種で予防される。

選択肢考察

  1. ×1.  結核菌

    結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は抗酸菌の一種で、土壌常在菌ではなく主に肺結核患者の咳・くしゃみ・会話などから飛沫核(飛沫の水分が蒸発し、菌だけが空気中を漂う粒子)として空中に拡散し、これを吸入することで感染する空気感染(飛沫核感染)が代表的な感染経路である。

  2. ×2.  コレラ菌

    コレラ菌(Vibrio cholerae)はグラム陰性のコンマ状桿菌で、主に糞便で汚染された水や食品を介した経口感染で広がる。海水や河口の汽水域には存在しうるが、土壌常在菌ではなく、衛生環境の悪い地域での飲料水や生鮮魚介類が代表的な感染源である。

  3. 3.  破傷風菌

    破傷風菌(Clostridium tetani)は土壌中に芽胞として広く分布しており、創傷から侵入することで感染を起こす代表的な土壌由来感染症の原因菌である。芽胞が深い傷の嫌気的環境で発芽し、神経毒テタノスパスミンを産生して全身性のけいれんを引き起こす。

  4. ×4.  カンピロバクター

    カンピロバクター(Campylobacter jejuniなど)は鶏・牛・豚などの腸管に常在する細菌で、加熱不十分な鶏肉や生レバー、汚染された飲料水などを介して経口感染し、細菌性食中毒の最も多い原因菌の一つとなる。土壌に広く分布するわけではない。

土壌由来の感染症としては、破傷風のほかにガス壊疽(Clostridium perfringens)、ボツリヌス症(Clostridium botulinum)など、クロストリジウム属の嫌気性芽胞形成菌が代表的である。これらはいずれも芽胞として土壌中で長期間生存できる点が共通している。破傷風の臨床ポイントとして、創傷を負った患者を見たら必ずワクチン接種歴を確認することが重要で、最終接種から10年以上経過している場合や創が汚染されている場合は、破傷風トキソイド追加接種や抗破傷風人免疫グロブリン(TIG)投与を考慮する。日本では小児の定期接種により発症数は減少しているが、ワクチン未接種・追加接種未実施の高齢者で発症することが多い。

細菌の生息環境と感染経路を結びつける問題であり、土壌中に芽胞として分布し創傷から感染する破傷風菌を選び出せるかが問われている。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。