StudyNurse

バソプレシンはどこで働く?集合管とアクアポリン2で読み解く尿濃縮

看護師国家試験 第115午前76

国試問題にチャレンジ

115午前76

バソプレシンが作用する腎臓の部位はどれか。

  1. 1.糸球体
  2. 2.集合管
  3. 3.遠位尿細管
  4. 4.近位尿細管
  5. 5.Henle〈ヘンレ〉のループ(係蹄)

対話形式の解説

博士博士
今日はね、バソプレシンというホルモンが腎臓のどこで働くかを一緒に整理しよう。第115回午前76問でも出ているテーマだよ。
サクラサクラ
バソプレシンって、よく抗利尿ホルモンとかADHって呼ばれるやつですよね。名前はよく聞くけど、作用部位までちゃんと言えるか不安です…。
博士博士
いい着眼点だね。結論から言うと、主作用部位は集合管だ。選択肢でいうと2番が正解になるね。
サクラサクラ
集合管!ヘンレループや遠位尿細管じゃないんですね。なんとなく「尿を濃くする=ループのところ?」みたいなイメージがありました。
博士博士
ヘンレループは確かに尿濃縮に深く関わっているんだけど、あそこは「髄質に浸透圧勾配を作る土台」を担当しているんだ。対向流増幅系っていう仕組みだね。最後の水の量を細かく調節する蛇口の役割をしているのが集合管なんだよ。
サクラサクラ
なるほど、土台作りと最終調整で役割分担しているんですね。じゃあ、バソプレシンは集合管の何に作用しているんですか?
博士博士
集合管の主細胞という細胞の基底側にあるV2受容体に結合する。そこからGsタンパク→アデニル酸シクラーゼ→cAMP→PKAというシグナルが流れて、細胞の中にしまわれていた水チャネル「アクアポリン2」が管腔側の細胞膜に移動して挿入されるんだ。
サクラサクラ
アクアポリン2が水の通り道として顔を出してくる、というイメージですね。だから水だけが選択的に通って再吸収される。
博士博士
その通り。だから抗利尿ホルモンの名のとおり「尿が減って濃くなる」。逆にバソプレシンが効かなかったり分泌されなかったりすると、薄い尿が大量に出る尿崩症になる。
サクラサクラ
中枢性尿崩症と腎性尿崩症って分けて習った気がします。
博士博士
いいね。中枢性は下垂体後葉からのADH分泌そのものが低下するタイプで、デスモプレシン(DDAVP)で補充する。腎性はADHは出ているのに集合管の受容体やAQP2側に問題があって効かないタイプだよ。
サクラサクラ
逆に出すぎてしまう病気もあるんですよね。
博士博士
そう、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)だね。水が体に溜まりすぎて希釈性の低Na血症をきたす。肺小細胞癌や中枢神経疾患、薬剤などが原因になり、治療にはV2受容体拮抗薬のトルバプタンや水制限が用いられる。
サクラサクラ
臨床ではADHの「効かせる」「効かせない」を薬で操作することもあるんですね。覚えるべきポイントが見えてきました。
博士博士
最後に他の選択肢も整理しておこう。糸球体は濾過、近位尿細管は大量の等張再吸収、ヘンレループは浸透圧勾配作りとループ利尿薬の場、遠位尿細管はサイアザイドが効くNa再吸収の場、そして集合管がADHとアルドステロンの最終調整の場、と並べると国試対策としても強くなるよ。
サクラサクラ
部位ごとに「何をしているか」「どの薬・どのホルモンが効くか」をセットで覚えるのが大事ですね!

POINT

バソプレシン(抗利尿ホルモン)の主作用部位を問う問題で、集合管においてアクアポリン2を介し水を再吸収して尿を濃縮するというメカニズムを理解しているかが鍵となります。

解答・解説

正解は2です

問題文:バソプレシンが作用する腎臓の部位はどれか。

解説:正解は2の「集合管」です。バソプレシン(抗利尿ホルモン:ADH)は視床下部の視索上核・室傍核で合成され、下垂体後葉から分泌されるペプチドホルモンで、血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少に応じて放出されます。腎臓では主に集合管の主細胞の基底側にあるV2受容体に結合し、Gsタンパクを介してアデニル酸シクラーゼを活性化、cAMPを増加させてプロテインキナーゼA(PKA)を介し、細胞内に貯蔵されている水チャネル「アクアポリン2(AQP2)」を管腔側細胞膜へと移動・挿入させます。これにより集合管の水透過性が高まり、髄質の浸透圧勾配にしたがって尿中の水が再吸収され、結果として尿が濃縮され尿量が減少します。「抗利尿(尿を減らす)」という名前の由来でもあり、ADHの主作用部位として最も問われやすいのが集合管です。

選択肢考察

  1. ×1.  糸球体

    糸球体は血液を濾過して原尿を作る部位で、輸入細動脈・輸出細動脈の血管抵抗の調節を受けます。バソプレシンによる水再吸収の主作用部位ではありません。

  2. 2.  集合管

    バソプレシン(ADH)は集合管の主細胞のV2受容体に結合し、アクアポリン2を管腔側膜に挿入させて水の再吸収を促進します。尿濃縮の最終調節を担う最も重要な作用部位です。

  3. ×3.  遠位尿細管

    遠位尿細管はNa+やCa2+の再吸収、酸塩基平衡の調節に関与する部位で、サイアザイド系利尿薬の作用点でもあります。バソプレシンの主作用部位ではありません。

  4. ×4.  近位尿細管

    近位尿細管は糸球体で濾過された原尿の約2/3を等張的に再吸収する大量再吸収の場ですが、ここでの水再吸収はバソプレシン非依存性で行われます。

  5. ×5.  Henle〈ヘンレ〉のループ(係蹄)

    ヘンレループは対向流増幅系として髄質の浸透圧勾配を作り出し尿濃縮の前提条件を整える部位で、ループ利尿薬の作用点でもあります。バソプレシンが直接水透過性を変える主作用部位ではありません。

バソプレシンの受容体にはV1a(血管平滑筋収縮)、V1b(下垂体前葉でACTH分泌促進)、V2(集合管で水再吸収)があり、腎作用はV2受容体を介します。分泌が低下する病態が中枢性尿崩症で、薄い尿が大量に出る多尿・口渇が特徴。逆に分泌過剰は抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)で、水貯留により低Na血症をきたします。治療薬としてはデスモプレシン(DDAVP)が尿崩症や夜尿症に、V2受容体拮抗薬トルバプタンが心不全や肝硬変の体液貯留・SIADHに用いられます。「ADH=集合管=水を再吸収=尿濃縮」とセットで覚えるのが王道です。

バソプレシン(抗利尿ホルモン)の主作用部位を問う問題で、集合管においてアクアポリン2を介し水を再吸収して尿を濃縮するというメカニズムを理解しているかが鍵となります。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。