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ICFの「活動」を見抜く――ADL自立の意味を再確認

看護師国家試験 第115午前80

国試問題にチャレンジ

115午前80

Aさん(91歳、男性)は市営団地の2階に1人で暮らしている。高血圧症で内服治療しているが、他に既往歴はない。日常生活動作〈ADL〉は自立している。トイレや浴室の段差でつまずくことがあり、手すりを設置した。最近は家でテレビを観て過ごすことが多くなった。 Aさんの生活状況で、国際生活機能分類〈ICF〉の「活動」に該当するのはどれか。

  1. 1.1人暮らし
  2. 2.手すりの設置
  3. 3.段差でのつまずき
  4. 4.テレビを観て過ごす
  5. 5.日常生活動作〈ADL〉は自立

対話形式の解説

博士博士
今日は91歳のAさんを題材にしたICFの問題じゃ。ICFって何の略か言えるかの?
サクラサクラ
はい、国際生活機能分類です。WHOが2001年に採択した分類ですよね。
博士博士
その通り。International Classification of Functioning, Disability and Healthの頭文字じゃ。ではICFを構成する3つの生活機能要素は?
サクラサクラ
「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つです。それに「環境因子」と「個人因子」が背景因子として加わるんですよね。
博士博士
完璧じゃな。今回の問題では「活動」に該当するものを選ぶ。選択肢を一つずつ見ていこうか。まず「1人暮らし」はどう分類する?
サクラサクラ
生活背景なので、個人因子か環境因子に近いと思います。本人の動作能力を示しているわけではないですね。
博士博士
そうじゃ。「手すりの設置」はどうじゃ?
サクラサクラ
これは物的環境ですから、明らかに環境因子ですね。住宅改修などはまさにICFの環境因子に働きかける介入です。
博士博士
いいぞ。「段差でのつまずき」はどうとらえる?
サクラサクラ
これは現象というか結果ですよね。環境因子である段差と、バランス機能低下という心身機能の問題が組み合わさって起きた出来事、と読めます。
博士博士
鋭い分析じゃ。「テレビを観て過ごす」は?
サクラサクラ
趣味や生活様式なので、社会的な関わりという意味では「参加」に近い気がします。少なくとも個人課題の遂行能力を表す「活動」とは違うように思います。
博士博士
その通り。そして残るは「ADLは自立」じゃ。これが正解になるわけじゃが、なぜ「活動」と言えるかを言葉で説明できるか?
サクラサクラ
ADLは食事・排泄・入浴・更衣・移動といった日常生活の基本動作で、これらを個人レベルで遂行できているということは、ICFが定義する「課題や行為を個人によって遂行すること」つまり「活動」そのものに該当します。
博士博士
見事じゃ。ちなみにICFの前身であるICIDHとの違いは知っておるか?
サクラサクラ
ICIDHは「機能障害・能力障害・社会的不利」と障害をマイナス面で捉えていましたが、ICFは生活機能というプラスの側面に焦点を当て、要素間の相互作用を双方向に捉えるのが特徴ですよね。
博士博士
素晴らしい。臨床でも、看護計画を立てるときにICFで整理すると、患者さんの強みと支援の方向性が見えやすくなる。Aさんなら「ADL自立」という活動の強みを、どんな「参加」につなげられるか考えるのが看護じゃな。
サクラサクラ
なるほど、単に分類するだけでなく、強みを生活の質向上につなげる視点が大切なんですね。

POINT

ICFの構成要素のうち、ADLや具体的動作の遂行は「活動」に分類されることを問う基本問題です。

解答・解説

正解は5です

問題文:Aさん(91歳、男性)は市営団地の2階に1人で暮らしている。高血圧症で内服治療しているが、他に既往歴はない。日常生活動作〈ADL〉は自立している。トイレや浴室の段差でつまずくことがあり、手すりを設置した。最近は家でテレビを観て過ごすことが多くなった。 Aさんの生活状況で、国際生活機能分類〈ICF〉の「活動」に該当するのはどれか。

解説:正解は5「日常生活動作〈ADL〉は自立」です。ICF(国際生活機能分類、International Classification of Functioning, Disability and Health)は、2001年にWHOが採択した健康と生活機能を包括的にとらえる分類体系で、人間の生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3要素で捉え、それらに「環境因子」と「個人因子」という背景因子が相互作用するというモデルです。このうち「活動」とは、課題や行為を個人によって遂行することを指し、歩行・食事・更衣・入浴などのADL(日常生活動作)や、調理・買い物・金銭管理などのIADL(手段的日常生活動作)が典型的に該当します。「ADLは自立」という記述は、Aさん個人が日常生活上の動作を遂行できている状態を示しており、まさにICFの「活動」に分類されます。

選択肢考察

  1. ×1.  1人暮らし

    1人暮らしという生活形態は、住居や家族構成といった生活背景を表しており、ICFでは個人因子または環境因子に近い項目として整理されます。個人の課題遂行そのものを示す「活動」とは異なります。

  2. ×2.  手すりの設置

    手すりは住環境を構成する物的環境であり、ICFの「環境因子」に分類されます。本人の動作能力ではなく、本人を取り巻く物理的条件を表しているため「活動」には該当しません。

  3. ×3.  段差でのつまずき

    つまずきは活動制限の現れと解釈できますが、これ自体は出来事・現象であり、ICFの大項目としての「活動」を端的に示すものではありません。むしろ環境因子(段差)と心身機能(バランス機能の低下)の相互作用の結果として現れた状態と読みとれます。

  4. ×4.  テレビを観て過ごす

    テレビ視聴は趣味活動や生活様式の表現で、社会生活への関わりという観点からは「参加」に近い側面をもちます。少なくとも個人課題の遂行能力としての「活動」を最も端的に示す選択肢ではありません。

  5. 5.  日常生活動作〈ADL〉は自立

    ADLは食事・排泄・入浴・更衣・移動など、生活する上で必要な基本動作を指し、ICFの「活動」の代表例です。「自立している」という記述は、課題遂行が個人レベルで可能であることを示し、「活動」に最も合致します。

ICFの覚え方として、「心身機能・身体構造」は体の働きや構造そのもの(例:筋力、関節可動域、呼吸機能)、「活動」は個人レベルでの動作遂行(例:ADL、歩行、移乗)、「参加」は社会的な役割や関与(例:就労、地域活動、家族役割)と区別すると理解しやすいです。さらに「環境因子」は物的・人的・社会的環境(例:手すり、家族の支援、制度)、「個人因子」は年齢・性別・性格・生活歴などです。前身のICIDHが障害をマイナス面でとらえていたのに対し、ICFはプラスの生活機能に焦点を当て、双方向の相互作用を強調する点が特徴です。

ICFの構成要素のうち、ADLや具体的動作の遂行は「活動」に分類されることを問う基本問題です。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。