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総合機能評価とADL/IADL

老年看護学 / 老年看護総論・その他

解説

今回は高齢者の総合機能評価とADL/IADLについて解説します。 高齢者は単一の疾患だけでなく、複数の身体機能低下、認知機能の変化、気分の落ち込み、栄養障害、家族関係や経済状態など、多様な要因が絡み合って生活の自立度が決まります。これらを包括的に把握し、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士などの多職種で情報を共有して支援に活かす手法が、総合機能評価です。

高齢者総合機能評価(CGA)

高齢者総合機能評価(CGA:Comprehensive Geriatric Assessment)とは、高齢者を身体的側面・精神心理的側面・社会経済的側面から多面的に評価し、その結果を多職種チームで共有して治療・ケア計画に反映させる評価法です。単に病気の有無を診るのではなく、「その人が暮らしていけるかどうか」を総合的に評価することが目的です。

CGAの評価領域

身体機能ではADL(日常生活動作)とIADL(手段的日常生活動作)、精神心理面では認知機能と気分(うつ)、生活面では栄養状態、社会経済面では家族関係・経済状況・介護者負担などが評価対象となります。これらを一度にすべて精査するのは時間を要するため、外来などでは簡易版のCGA7が用いられます。

CGA7の7項目

CGA7とは、CGAを簡略化した7項目の評価です。①意欲(外来での挨拶の様子)、②認知機能(時間の見当識)、③手段的ADL(交通機関を使った外出ができるか)、④基本的ADL(入浴)、⑤基本的ADL(排泄)、⑥認知機能(遅延再生)、⑦情緒(うつ状態)の7項目を簡便にスクリーニングします。

ICF(国際生活機能分類)とADLの位置づけ

ADLを理解するうえで重要な枠組みが、WHOが2001年に採択したICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)です。ICFは人の生活機能を「生きることの全体像」として捉え、以下の構成要素で分類します。 生活機能は、①心身機能・身体構造(身体の生理的機能と解剖学的部位)、②活動(個人による課題や行為の遂行)、③参加(生活・人生場面への関わり)の3つに分けられます。さらに、これらに影響を及ぼす背景因子として、④環境因子(物的・社会的環境や人々の態度)、⑤個人因子(年齢・性別・生活歴など)の2つが位置づけられます。 この枠組みの中で、ADL(日常生活動作)は「活動」に該当します。食事・排泄・入浴・更衣・移動といった日常の課題遂行は、ICFの「活動」レベルで評価される行為であり、ADLの自立度はこの「活動」の評価指標として用いられます。一方、関節可動域や筋力などは「心身機能・身体構造」、職場や地域での役割遂行は「参加」に位置づけられます。

ADLとIADL

ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)とは、人が生活する上で行う基本的な動作の総称です。ADLは大きく**基本的ADL(BADL)手段的ADL(IADL)**の2階層に分けて評価します。

基本的ADL(BADL)

基本的ADLとは、食事・排泄・入浴・更衣・移動など、生命維持と身辺の自立に直結する基本動作を指します。代表的な評価尺度が**バーセル指数(Barthel Index)で、食事、移乗(ベッドから椅子)、整容、トイレ動作、入浴、歩行(平地移動)、階段昇降、更衣、排便コントロール、排尿コントロールの10項目を点数化します。リハビリテーション領域でよく用いられるFIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)**もBADL評価尺度のひとつで、運動項目と認知項目を含めて自立度を細かく採点します。

手段的ADL(IADL)

手段的ADLとは、地域社会で自立した生活を営むために必要な、より複雑で応用的な生活動作を指します。代表的な評価尺度はLawton(ロートン)尺度で、電話の使用、買い物、食事の支度(調理)、家事、洗濯、交通手段の利用、服薬管理、金銭管理の8項目を評価します。 IADLはBADLよりも高次の機能を必要とするため、加齢や認知機能低下の影響をより早期に受けます。すなわちIADLはBADLより先に低下することから、IADL評価は軽度認知障害(MCI)や早期認知症のスクリーニングに有用とされ、国試でも頻出のポイントです。

認知機能評価

高齢者では認知機能低下の早期発見が重要であり、CGAでも必須項目となっています。代表的なスケールがMMSEHDS-Rです。

MMSE

MMSE(Mini-Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)は世界的に用いられる認知機能評価で、30点満点です。評価項目には、見当識(時・場所)、即時再生、計算、遅延再生、物品呼称、文章復唱、3段階の口頭命令、書字命令(「目を閉じてください」を読んで実行)、自発書字、そして**図形模写(交差する五角形)**が含まれます。図形模写が含まれる点はHDS-Rとの大きな違いです。一般に23点以下で認知症が疑われ、27点以下で軽度認知障害(MCI)が疑われます。

HDS-R

HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は日本で開発された認知機能評価で、30点満点、20点以下で認知症が疑われます。年齢、日時の見当識、場所の見当識、3単語の即時記銘と遅延再生、計算(100から7を順に引く)、数字の逆唱、物品記銘、語想起などから構成され、言語性課題が中心で図形模写は含まれません。視覚的な構成課題を行えない高齢者にも実施しやすいのが特徴です。

まとめ

高齢者総合機能評価(CGA)は、身体・精神・社会経済の各側面を多面的に評価し、多職種で共有して支援に活かす手法です。評価領域にはADL、IADL、認知機能、気分、栄養、社会経済状況、介護者負担が含まれます。ICFの枠組みでは、心身機能・身体構造、活動、参加、環境因子、個人因子の5要素で生活機能を捉え、ADLは「活動」に位置づけられます。ADLは基本的ADL(BADL:Barthel指数・FIM)と手段的ADL(IADL:Lawton尺度)に分けられ、IADLはBADLより早期に低下するため早期認知症のスクリーニングに有用です。認知機能評価ではMMSE(30点満点、図形模写を含む、23点以下で認知症疑い)とHDS-R(言語性中心、図形模写なし、20点以下で認知症疑い)の違いを押さえることが国試対策の要点となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    高齢者を身体・精神・社会経済の各側面から多面的に評価し、多職種で共有してケアに活かす評価法をという。

  2. 2.

    日常生活動作のうち、食事・排泄・入浴・更衣・移動など身辺の基本動作を指すものをという。

  3. 3.

    基本的ADL(BADL)の代表的な評価尺度で、食事・移乗・整容・トイレ動作・入浴・歩行・階段昇降・更衣・排便・排尿の10項目を採点するものをという。

  4. 4.

    電話・買い物・調理・家事・洗濯・交通機関の利用・服薬管理・金銭管理など、地域生活に必要な応用的動作を評価する尺度をといい、評価する動作の概念を手段的ADL(IADL)という。

  5. 5.

    BADLとIADLでは、加齢や認知機能低下の影響を早期に受けるのはであり、早期認知症のスクリーニングに有用である。

  6. 6.

    MMSEは30点満点の認知機能評価であり、見当識や遅延再生に加え、HDS-Rには含まれないの課題が含まれる。

  7. 7.

    日本で開発された認知機能評価スケールで、言語性課題が中心で図形模写を含まず、20点以下で認知症が疑われるものをという。

  8. 8.

    CGAの簡易版で、意欲・認知機能(時間見当識)・IADL(交通機関)・BADL(入浴・排泄)・遅延再生・うつの7項目をスクリーニングする評価法をという。

  9. 9.

    ICF(国際生活機能分類)は生活機能を心身機能・身体構造、活動、参加の3要素と、背景因子としての環境因子・で構成する分類体系である。

  10. 10.

    ICFの構成要素のうち、ADL(日常生活動作)はに位置づけられる。

総合機能評価とADL/IADL」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。