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貼付剤の代表薬を完全マスター!フェンタニルとニトログリセリンが選ばれる理由

看護師国家試験 第115午前85

国試問題にチャレンジ

115午前85

薬剤の形状として貼付剤があるのはどれか。2つ選べ。

  1. 1.インスリン
  2. 2.アドレナリン
  3. 3.フェンタニル
  4. 4.ニトログリセリン
  5. 5.アセトアミノフェン

対話形式の解説

博士博士
今日は115回午前85問の薬剤の形状の問題を解説するぞ。「貼付剤があるのはどれか、2つ選べ」という問題じゃ。選択肢はインスリン、アドレナリン、フェンタニル、ニトログリセリン、アセトアミノフェンの5つじゃな。
サクラサクラ
博士、貼付剤というのはあのシップみたいなパッチのことですよね。なんとなくフェンタニルとニトログリセリンが貼付剤になっているイメージはあるんですが、なぜその二つだけなのか、ちゃんと理由を説明できないんです。
博士博士
いい問いじゃな。まず大前提として、皮膚から薬を吸収させて全身に効かせるには、薬の分子が皮膚の角質層という強力なバリアを通り抜けなければならん。そのためには分子量がおおむね500ダルトン以下で、脂溶性が高く、しかも少量で効く薬であることが条件になるんじゃ。
サクラサクラ
なるほど、皮膚を通過できる物理化学的な条件があるんですね。じゃあインスリンが貼付剤にならないのは分子量が大きいからですか。
博士博士
その通り。インスリンは分子量約5,800ダルトンもあるペプチドホルモンで、皮膚はおろか消化管でも分解されてしまう。だから皮下注射が標準じゃ。アドレナリンはまた別の理由で、半減期が極めて短くてアナフィラキシーや心停止に「すぐ効かせる」必要があるから、ゆっくり吸収する貼付剤とは目的が真逆なんじゃよ。
サクラサクラ
目的と剤形がマッチしないということですね。アセトアミノフェンはどうですか。経口でも坐剤でも点滴でも使えますよね。
博士博士
アセトアミノフェンは経口吸収が良好で肝代謝経路が確立しているから、わざわざ経皮にする必要がないんじゃ。さて本命のフェンタニルじゃが、これは分子量336ダルトンで脂溶性が高く、しかもマイクログラム単位で効く強オピオイド。経皮吸収の条件を完璧に満たしておる。デュロテップMTパッチやフェントステープとして、がん性疼痛や慢性疼痛の管理に欠かせん存在じゃ。
サクラサクラ
フェンタニル貼付剤で気をつけることはありますか。患者さんに使うとき何を観察すべきでしょう。
博士博士
最重要は呼吸抑制じゃ。発熱や入浴、電気毛布、ホットパックなどで皮膚温が上がると吸収速度が増して血中濃度が跳ね上がり、過量投与状態になることがある。呼吸数や意識レベル、瞳孔(縮瞳)をしっかり観察するんじゃ。あと医療用麻薬なので、使用済みパッチも有効成分が残っておるから、半分に折って粘着面同士を貼り合わせて医療機関に返却するのが原則じゃな。
サクラサクラ
ニトログリセリンの貼付剤についても教えてください。狭心症の薬というと舌下錠のイメージが強いです。
博士博士
ニトログリセリンは経口投与すると肝臓の初回通過効果でほぼ90%が代謝されてしまうから、口から飲んでも効かん。だから舌下錠・スプレー・静注・貼付剤と、経口を避けるルートが基本になる。貼付剤は持続的な血中濃度維持に向いておるが、24時間貼りっぱなしだと「ニトロ耐性」が生じて効きが悪くなるんじゃ。だから夜間は剥がしてニトロフリー期間を設けるのが定番じゃ。
サクラサクラ
耐性を防ぐために計画的に剥がす時間を作るんですね。ほかにも国試で問われやすい貼付剤はありますか。
博士博士
全身作用型では、小児喘息のツロブテロール(ホクナリンテープ)、認知症のリバスチグミン、パーキンソン病のロチゴチン、更年期のエストラジオール、禁煙のニコチンパッチ、術後悪心・乗物酔いのスコポラミン辺りが頻出じゃ。局所作用型ではロキソプロフェンなどのNSAIDsテープと、静脈穿刺前に痛みを和らげるリドカインテープも覚えておくとよい。貼付部位は毎回ずらして皮膚障害を防ぐのが看護のポイントじゃな。
サクラサクラ
貼付剤って思った以上にバリエーションがあるんですね。物理化学的な条件と臨床目的をセットで覚えると応用が利きそうです。

POINT

経皮吸収型貼付剤の代表薬を識別できるかを問う問題で、低分子・脂溶性・低用量・初回通過効果回避という製剤設計の原則を理解しているかがポイントです。

解答・解説

正解は3です

問題文:薬剤の形状として貼付剤があるのはどれか。2つ選べ。

解説:正解は3(フェンタニル)と4(ニトログリセリン)です。貼付剤(パッチ製剤・経皮吸収型製剤、transdermal therapeutic system: TTS)とは、皮膚に貼付して薬物を経皮的に吸収させ、全身循環または局所に作用させる剤形を指します。経皮吸収が成立するためには、薬物が脂溶性で分子量が小さく(おおむね500Da以下)、皮膚刺激が少なく、低用量で効果を発揮することが条件となります。フェンタニル(強オピオイド系鎮痛薬)とニトログリセリン(硝酸薬・血管拡張薬)はこれらの条件を満たし、世界的に貼付剤として広く臨床応用されています。経皮投与の最大の利点は、初回通過効果(肝代謝による有効成分の減弱)を回避できること、血中濃度を持続的かつ安定的に維持できること、内服困難な患者でも投与可能なこと、そして剥がせば投与中止できる安全性です。

選択肢考察

  1. ×1.  インスリン

    インスリンは分子量約5,800Daのペプチドホルモンで、消化管内で分解されるため経口投与ができず、また分子量が大きく親水性であるため皮膚バリアを通過できません。したがって主に皮下注射(ペン型注入器・シリンジ・インスリンポンプ)で投与します。経口剤・吸入剤などの開発も進められていますが、現在の日本の臨床で標準的な貼付剤は存在しません。

  2. ×2.  アドレナリン

    アドレナリン(エピネフリン)は半減期が極めて短いカテコールアミンで、アナフィラキシーや心停止時に即効性を要するため、筋肉内注射(エピペン等)や静脈内投与で用いられます。緩徐かつ持続的に吸収させる貼付剤の特性は救急用途と相反するため、貼付剤としては製品化されていません。

  3. 3.  フェンタニル

    フェンタニルは強オピオイド系鎮痛薬で、分子量336Daと小さく脂溶性が高いため経皮吸収に適しています。フェントス®テープ・デュロテップMTパッチ®などの貼付剤があり、主にがん性疼痛や慢性疼痛の管理に用いられます。1日1回または3日に1回の貼り替えで持続的な鎮痛が得られ、嚥下困難な患者にも有用です。発熱や入浴で吸収が亢進し、過量投与(呼吸抑制)のリスクが上がる点に注意が必要で、医療用麻薬として厳重管理されます。

  4. 4.  ニトログリセリン

    ニトログリセリンは血管平滑筋を弛緩させる硝酸薬で、狭心症の発作予防や慢性管理に貼付剤(ニトロダーム®TTS、ミリステープ®など)が用いられます。経口投与では肝臓での初回通過効果により約90%が代謝されてしまうため、舌下錠・スプレー・貼付剤・静注など経口を回避するルートが標準です。貼付剤は持続的な血中濃度維持に有用ですが、24時間連続使用では耐性が生じやすいため、夜間に剥がすなど休薬時間(ニトロフリー期間)を設けるのが原則です。

  5. ×5.  アセトアミノフェン

    アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として広く使われ、剤形は錠剤・散剤・シロップ・坐剤・点滴静注用製剤(アセリオ®)と多彩ですが、貼付剤は実用化されていません。経口投与でも吸収が良好で、肝での代謝経路が確立しているため、わざわざ経皮吸収型にする臨床的メリットが乏しいことが背景にあります。

代表的な貼付剤を覚えておくと国試・臨床ともに有用です。【全身作用型】フェンタニル(がん疼痛)、ニトログリセリン・硝酸イソソルビド(狭心症)、ツロブテロール(気管支拡張薬、小児喘息に多用)、エストラジオール(更年期障害のホルモン補充療法)、スコポラミン(乗物酔い・術後悪心)、リバスチグミン(アルツハイマー型認知症)、クロニジン(高血圧)、ニコチン(禁煙補助)、ビソプロロール(高血圧・心不全)、ロチゴチン(パーキンソン病)。【局所作用型】ロキソプロフェン・ジクロフェナク・インドメタシン・フェルビナク等のNSAIDsテープ、リドカインテープ(静脈穿刺前の局所麻酔)など。貼付部位は発赤・かぶれ予防のため毎回ローテーションし、発熱時や温罨法併用時は吸収亢進に注意します。剥がした貼付剤にも有効成分が残るため、特に医療用麻薬パッチは廃棄方法を厳守する必要があります。

経皮吸収型貼付剤の代表薬を識別できるかを問う問題で、低分子・脂溶性・低用量・初回通過効果回避という製剤設計の原則を理解しているかがポイントです。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。