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薬剤の副作用と禁忌

疾病の成り立ちと回復の促進 / 腫瘍・薬理・その他

解説

薬剤の副作用とは、治療目的とは異なる、患者にとって望ましくない作用のことをいいます。今回は看護師国家試験で頻出となる主要な薬剤について、その作用機序、代表的な副作用、そして投与してはならない禁忌について解説します。薬剤の効果と裏表の関係にある副作用を理解することは、安全な与薬と異常の早期発見につながります。

抗コリン薬

抗コリン薬とは、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンの受容体への結合を遮断する薬剤の総称です。アトロピン、ブチルスコポラミン(ブスコパン)、抗ヒスタミン薬の一部、三環系抗うつ薬などが該当します。副交感神経が抑えられるため、相対的に交感神経が優位となり、口渇、便秘、頻脈、瞳孔散大、霧視、尿閉、発汗減少といった副作用が現れます。

禁忌として特に重要なのが、緑内障前立腺肥大症、麻痺性イレウスです。緑内障では瞳孔散大により隅角が狭くなり眼圧がさらに上昇するため、急性発作の危険があります。前立腺肥大症では膀胱排尿筋が弛緩することで尿閉が悪化します。麻痺性イレウスでは腸蠕動がさらに低下するため病態が増悪します。高齢者では認知機能低下も招くため、処方の適正化が求められます。

スタチンと脂質異常症治療薬

スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、肝臓でのコレステロール合成を阻害してLDLコレステロールを低下させる脂質異常症治療薬です。アトルバスタチンやシンバスタチンなどが代表的です。最も重大な副作用は横紋筋融解症で、骨格筋細胞が破壊されてミオグロビンが血中に流出し、筋痛、脱力、褐色尿、CK(クレアチンキナーゼ)の著明上昇を呈します。フィブラート系薬との併用や腎機能低下患者でリスクが高まり、放置すると急性腎不全に至るため、症状出現時は直ちに投与中止します。

抗甲状腺薬

抗甲状腺薬は、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の治療に用いられ、甲状腺内でのヨウ素の有機化を阻害して甲状腺ホルモン合成を抑制します。チアマゾール(メルカゾール)とプロピルチオウラシル(PTU、プロパジール)が代表薬です。最も重篤な副作用は無顆粒球症で、好中球が著明に減少し、発熱や咽頭痛で発症します。服薬中にこれらの症状が出た際は直ちに受診し血算を確認するよう患者教育が必要です。そのほか、肝障害、皮疹、関節痛、ANCA関連血管炎(PTUに多い)にも注意します。妊娠初期はチアマゾールに催奇形性があるため、PTUが推奨されます。

インスリン

インスリンは血糖を下げる唯一のホルモンで、過剰投与により低血糖を引き起こします。低血糖症状は2段階で進行します。血糖値が約70mg/dL未満になると、まず交感神経(自律神経)刺激症状として動悸、冷汗、手のふるえ、顔面蒼白、空腹感、生あくびが出現します。さらに約50mg/dL以下になると中枢神経症状として集中力低下、頭痛、異常行動、けいれん、意識障害へと進行します。意識があれば経口でブドウ糖を摂取させ、意識障害があればブドウ糖静注やグルカゴン筋注で対応します。β遮断薬服用中は交感神経症状がマスクされるため注意が必要です。

その他の重要薬剤

NSAIDsは消化性潰瘍、腎機能障害、アスピリン喘息を起こし、妊娠後期は禁忌です。ワルファリンはビタミンKを多く含む納豆、クロレラ、青汁の摂取で効果が減弱するため摂取を避けます。ヘパリンではHIT(ヘパリン起因性血小板減少症)に注意します。抗がん薬は骨髄抑制、悪心嘔吐、脱毛、口内炎、間質性肺炎を起こします。オピオイドは便秘がほぼ必発で、悪心嘔吐、眠気、呼吸抑制を起こし、呼吸抑制にはナロキソンを用います。アミノグリコシド系抗菌薬は第8脳神経障害による聴力障害と腎障害が特徴です。ステロイドは感染症増悪、骨粗鬆症、糖尿病、満月様顔貌、消化性潰瘍を起こし、急な中止は副腎不全を招くため漸減が原則です。抗てんかん薬、NSAIDs、抗菌薬などではStevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症が発症することがあります。

経皮吸収型製剤(貼付剤)

薬剤は内服薬や注射薬だけでなく、皮膚から薬物を吸収させる**経皮吸収型製剤(貼付剤)**として用いられるものもあります。貼付剤は、皮膚に貼付することで薬物が持続的に全身循環へ移行するため、安定した血中濃度が維持しやすく、内服が困難な患者にも使用できる利点があります。

代表的な経皮吸収型製剤として、強オピオイドであるフェンタニルの貼付剤(デュロテップMTパッチ、フェントステープなど)があり、がん疼痛や慢性疼痛のコントロールに用いられます。フェンタニル貼付剤も他のオピオイドと同様に呼吸抑制・便秘・悪心・眠気などの副作用に注意が必要です。また、狭心症の発作予防に用いられるニトログリセリンにも貼付剤(経皮吸収剤)があり、皮膚から持続的にニトログリセリンが吸収されることで冠動脈の拡張作用を維持します。なお、ニトログリセリンの舌下錠やスプレーは発作時の頓用に用いられ、貼付剤は予防目的という使い分けも押さえておきましょう。そのほか、ニコチン、エストラジオール、スコポラミン、ツロブテロールなども貼付剤として臨床で広く使用されています。

前立腺癌の治療薬

前立腺癌はアンドロゲン依存性に増殖する腫瘍であり、男性ホルモンの作用を遮断する内分泌療法(ホルモン療法)が標準治療の柱となります。抗アンドロゲン薬はアンドロゲン受容体への結合を阻害して腫瘍増殖を抑えます。LH-RHアゴニスト(リュープロレリン、ゴセレリン)と併用するMAB(最大アンドロゲン遮断療法)が一般的で、LH-RHアゴニスト開始時のフレアアップ予防にも抗アンドロゲン薬が用いられます。

看護のポイント

薬剤投与中は、副作用の早期発見のため定期的な観察と検査値の確認を行い、患者には自覚症状の出現時には自己判断で中止せず医療者に連絡するよう教育します。高熱・咽頭痛、筋痛・褐色尿、皮疹、出血傾向などの危険な徴候を具体的に伝え、安全な薬物療法を支えることが重要です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    抗コリン薬の副作用として瞳孔散大により眼圧が上昇するため、の患者には禁忌である。

  2. 2.

    抗コリン薬は膀胱排尿筋を弛緩させ尿閉を悪化させるため、の患者には禁忌である。

  3. 3.

    スタチンの最も重大な副作用は、筋痛・褐色尿・CK著明上昇を呈するである。

  4. 4.

    抗甲状腺薬の最も重篤な副作用は、発熱や咽頭痛で発症するである。

  5. 5.

    インスリンの過剰投与により生じる、動悸・冷汗・手のふるえなどを呈する状態をという。

  6. 6.

    前立腺癌はアンドロゲン依存性に増殖するため、治療には薬が用いられる。

  7. 7.

    オピオイドの代表的副作用で、呼吸抑制に対する拮抗薬はである。

  8. 8.

    ワルファリン服用中は、ビタミンKを多く含むの摂取を避ける必要がある。

  9. 9.

    アミノグリコシド系抗菌薬の代表的副作用は、第8脳神経障害によると腎障害である。

  10. 10.

    抗てんかん薬やNSAIDsなどで生じる皮膚粘膜の重篤な薬剤性副作用をという。

  11. 11.

    がん疼痛や慢性疼痛のコントロールに用いられる、強オピオイドの経皮吸収型貼付剤の薬剤名はである。

  12. 12.

    狭心症発作の予防として皮膚から持続的に吸収させる経皮吸収型貼付剤として用いられる薬剤はである。

薬剤の副作用と禁忌」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。