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老視の原因を解剖生理から押さえる

看護師国家試験 第115午前88

国試問題にチャレンジ

115午前88

老視の原因はどれか。2つ選べ。

  1. 1.房水の循環障害
  2. 2.毛様体筋の萎縮
  3. 3.虹彩の弾力性の低下
  4. 4.網膜神経細胞の減少
  5. 5.水晶体の弾力性の低下

対話形式の解説

博士博士
今日は115回午前88問、老視の原因について見ていこう。2つ選ぶ問題だよ。
サクラサクラ
博士、老視ってつまり老眼のことですよね。年をとると近くが見えづらくなるあれ。
博士博士
その通り。医学的にはpresbyopiaと呼ばれ、近方視のためのピント合わせ、つまり『調節』ができなくなる状態を指すんだ。
サクラサクラ
ピント合わせって、カメラのレンズが厚くなったり薄くなったりするみたいなことですか。
博士博士
まさにその通りだ。眼ではレンズに相当するのが水晶体で、近くを見るときは毛様体筋が収縮してチン小帯が緩み、水晶体が自身の弾力でぐっと厚くなる。これで屈折力を上げてピントを合わせているんだよ。
サクラサクラ
なるほど、ということは…水晶体が硬くなったら厚くなれない、毛様体筋が弱ったら水晶体を厚くする力が出ない、ということですね。
博士博士
素晴らしい考察だ。だから正解は選択肢2の毛様体筋の萎縮と、選択肢5の水晶体の弾力性の低下になる。特に水晶体内部のクリスタリンというタンパク質が加齢で変性し硬くなるのが最大の原因と言われている。
サクラサクラ
選択肢1の房水の循環障害は違うんですね。
博士博士
それは緑内障の機序だね。房水が排出されにくくなると眼圧が上がって視神経が障害される。老視の調節とは別の話だ。選択肢3の虹彩は瞳孔の大きさを変えて光量を調節するだけで、ピント合わせには関与しない。選択肢4の網膜神経細胞の減少は加齢黄斑変性などに関与するが、これも調節とは別系統だ。
サクラサクラ
整理すると、『調節』に関わる構造を選べばいいわけですね。水晶体と毛様体筋。
博士博士
その理解で完璧だ。臨床的には40歳前後から自覚され、手元の新聞を遠ざけて読む動作が典型サインだよ。矯正には凸レンズの老眼鏡や累進屈折力レンズを使う。
サクラサクラ
近視の人は老眼にならないって聞いたことがあるんですけど本当ですか。
博士博士
半分本当で半分嘘だね。近視の人も水晶体は同じように硬くなるから老視は起きている。ただ裸眼ではもともと近くにピントが合うので自覚しにくいだけなんだ。コンタクトで矯正していると老視がはっきり出てくるよ。
サクラサクラ
眼の疾患を部位別に整理しておくと混乱しなさそうですね。
博士博士
その通り。『水晶体の硬化なら老視・白内障』『房水循環障害なら緑内障』『網膜障害なら黄斑変性』と分けて覚えると国試対策に強くなるよ。

POINT

老視は加齢により近方への調節力が低下する状態であり、その本質は『水晶体の弾力性低下』と『毛様体筋の機能低下(萎縮)』である。

解答・解説

正解は2です

問題文:老視の原因はどれか。2つ選べ。

解説:正解は2(毛様体筋の萎縮)と5(水晶体の弾力性の低下)である。老視(presbyopia)とは、加齢に伴い近くの物にピントを合わせる「調節力」が低下し、近方視がぼやけて見えづらくなる生理的現象を指す。一般に40歳代から自覚され始め、新聞や手元の細かい字を遠ざけて見ようとする動作が典型的なサインとなる。眼が近くの物を見る際は、毛様体筋が収縮することでチン小帯(毛様小帯)が緩み、水晶体が自身の弾性によって厚みを増し屈折力を高めることでピントを合わせている(調節)。この調節機構が成り立つためには、(1)水晶体自体に弾力性があり厚くなれること、(2)毛様体筋がしっかり収縮して水晶体を厚くさせる環境を作れることの両方が不可欠である。老視ではまず水晶体実質の蛋白(クリスタリン)が加齢で硬化・乾燥し弾性を失うため、毛様体筋が収縮しても水晶体が十分に厚くならない。さらに毛様体筋自体も加齢により萎縮・筋力低下を起こすため調節力低下に拍車をかける。したがって2と5が老視の主因として正しい。

選択肢考察

  1. ×1.  房水の循環障害

    房水は毛様体で産生されシュレム管から排出される眼内液で、その循環障害は眼圧上昇を招き緑内障の原因となる。老視は調節障害であって眼圧や房水動態とは直接関係しないため誤り。

  2. 2.  毛様体筋の萎縮

    毛様体筋は水晶体の厚みを変えて調節を行う平滑筋様の筋肉である。加齢により萎縮・収縮力低下が生じると、近くを見るときの水晶体の膨らみが不十分となり老視を引き起こす。

  3. ×3.  虹彩の弾力性の低下

    虹彩は瞳孔の大きさを調整し眼内に入る光量を調節する組織で、ピント調節そのものには関与しない。老視の本質である調節力低下とは無関係なので誤り。なお高齢で縮瞳傾向はあるが、これは別現象(老人性縮瞳)である。

  4. ×4.  網膜神経細胞の減少

    網膜神経細胞の減少は視力低下や視野障害(加齢黄斑変性など)に関与するが、ピント合わせの仕組みである調節とは別経路である。老視の直接的な原因にはあたらない。

  5. 5.  水晶体の弾力性の低下

    水晶体は加齢でクリスタリン蛋白の変性などにより硬化し、弾性を失う。これにより毛様体筋が収縮しチン小帯が緩んでも水晶体が十分に膨らめず、近方視力が低下する。老視の最大の原因である。

老視の自覚は一般に40歳前後から始まり、矯正には凸レンズ(老眼鏡)や累進屈折力レンズが用いられる。近視の人は裸眼であれば近くにピントが合っているため老視を自覚しにくいが、コンタクトレンズ使用時には老視が顕在化する。鑑別すべき疾患として、白内障(水晶体の混濁)、緑内障(房水循環障害による眼圧上昇)、加齢黄斑変性(網膜中心部の変性)などがある。それぞれ障害部位が異なるので「水晶体の硬化=老視・白内障」「房水循環=緑内障」「網膜=黄斑変性」と区別して覚えるとよい。

老視は加齢により近方への調節力が低下する状態であり、その本質は『水晶体の弾力性低下』と『毛様体筋の機能低下(萎縮)』である。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。