StudyNurse

血管とリンパの解剖

人体の構造・機能 / 循環器・呼吸器

解説

今回は血管とリンパの解剖について解説します。血管系は心臓から拍出された血液を全身に運び、再び心臓へ戻すための閉鎖循環路であり、リンパ系は血管系を補完して組織間液の回収・脂肪輸送・免疫を担う重要な脈管系です。看護師国家試験では、動脈と静脈の違い、無対の血管、門脈系、終動脈、冠動脈、リンパの流れる仕組みが繰り返し問われます。基礎から順に整理していきましょう。

動脈・静脈・毛細血管の基本

血管は大きく動脈静脈、毛細血管の3種類に分けられます。動脈は心臓から拍出された血液を末梢へ送る血管で、内圧が高いため壁が厚く弾性線維と平滑筋に富みます。静脈は末梢から心臓へ血液を戻す血管で、壁が薄く内腔が広く、四肢の静脈には逆流を防ぐ静脈弁が発達しています。毛細血管は動脈と静脈をつなぐ微細な血管で、ここで酸素・二酸化炭素・栄養素・老廃物などの物質交換が行われます。

一般に動脈には酸素を多く含む動脈血が、静脈には二酸化炭素を多く含む静脈血が流れますが、肺循環では例外的に肺動脈に静脈血、肺静脈に動脈血が流れる点に注意が必要です。

血液の構成と血漿の役割

血管内を流れる血液は、有形成分である血球(赤血球・白血球・血小板)と、液体成分である血漿から構成されます。血漿は血液から血球を除いた淡黄色の液体で、その約90%は水分ですが、残りにはアルブミンやグロブリンなどの血漿タンパク、電解質、栄養素、ホルモン、老廃物などが溶け込んでおり、物質運搬や膠質浸透圧の維持に関わります。

さらに血漿には、フィブリノゲンをはじめとする凝固因子が含まれており、血管が損傷した際の止血機構を担っています。血管壁が破綻すると、まず血小板が粘着・凝集して一次止血血栓を形成し、続いて凝固因子のカスケード反応によりフィブリノゲンがフィブリンに変換され、強固な二次止血血栓が完成します。なお、血液を試験管内で凝固させて分離した上清は血清と呼ばれ、フィブリノゲンなどの凝固因子を含まない点で血漿と区別されます。

有対の血管と無対の血管

体内の血管の多くは左右1対ずつ存在しますが、体の正中付近を走行する太い血管には1本しかない無対の血管があります。無対の代表は、大動脈、上大静脈、下大静脈、門脈、肺動脈幹、腕頭動脈などです。一方、鎖骨下動脈・静脈、総腸骨動脈・静脈、内頸動脈・静脈、腕頭静脈などは左右1対の有対血管です。国試では「無対の静脈はどれか」という形で門脈が問われやすいので、無対の代表血管はまとめて覚えておきましょう。

門脈系と肝臓の二重血流支配

通常、全身の静脈血は大静脈を経て直接心臓へ戻りますが、消化管と脾臓からの静脈血だけは例外的にいったん肝臓を経由します。これを担うのが門脈です。門脈は、胃・小腸・大腸・膵臓・脾臓・胆嚢などからの静脈血を集めて肝臓に運ぶ静脈で、肝臓内で類洞を介して処理された後、肝静脈から下大静脈に注ぎ、心臓に戻ります。

肝臓は、酸素豊富な動脈血を供給する肝動脈(流入量の約30%)と、栄養豊富な静脈血を供給する門脈(約70%)の両方から血液を受けており、これを肝臓の二重血流支配と呼びます。経口摂取された栄養素や薬物は門脈を通って最初に肝臓で代謝されるため、全身循環に出る前に効果が減弱します。これを**初回通過効果(ファーストパス効果)**といい、経口薬と静注薬で効きが異なる理由になります。

肝硬変などで門脈圧が高くなる門脈圧亢進症では、行き場を失った血液が側副血行路を発達させ、食道静脈瘤、胃静脈瘤、腹壁静脈怒張(メドゥーサの頭)、痔静脈叢の拡張などを生じます。

吻合と終動脈

動脈どうしが互いに連絡している構造を吻合といい、吻合があれば一部の動脈が閉塞しても側副路を通じて血流を保てます。これに対して、他の動脈との吻合をほとんど持たない動脈を終動脈と呼び、閉塞すればその灌流域は速やかに虚血・壊死、すなわち梗塞に陥ります。

代表的な終動脈は冠動脈であり、閉塞すると心筋梗塞を引き起こします。そのほか、網膜中心動脈(網膜動脈閉塞症)、腎動脈(腎梗塞)、脾動脈(脾梗塞)、脳の穿通枝(ラクナ梗塞)なども終動脈に分類されます。一方で、ウィリス動脈輪、腸間膜辺縁動脈弓、肩甲骨周囲の動脈網などは豊富な吻合をもち、閉塞しても側副路で代償されやすい部位です。

冠動脈の解剖

冠動脈は大動脈起始部から左右に分かれて出る心臓自身を栄養する動脈で、左冠動脈と右冠動脈に分けられます。左冠動脈は主幹部から左前下行枝と回旋枝に分岐し、心臓を取り囲むように走行するのが造影画像での特徴です。冠動脈造影は虚血性心疾患の診断・治療に不可欠で、看護では穿刺部の止血状態、出血や血腫、造影剤腎症、ヨードアレルギーの観察が重要となります。

リンパ系の構造と流れ

リンパ系は、毛細血管から漏れ出た組織間液(リンパ液)を回収するリンパ管と、その途中に存在し免疫応答の場となるリンパ節からなります。リンパ管は毛細リンパ管から集合リンパ管へとつながり、最終的に胸管と右リンパ本幹の2本の主幹に集まります。胸管は下半身と左上半身のリンパを集めて左静脈角に注ぎ、右リンパ本幹は右上半身のリンパを集めて右静脈角に注いで静脈系へ合流します。腸管から吸収された脂肪を含む乳びは、腸リンパ本幹から乳び槽を経て胸管に入ります。

リンパ系の役割は、組織間液の回収、脂肪(特に長鎖脂肪酸)の吸収・輸送、免疫機能の3つです。リンパ管には心臓のような強力なポンプがなく、骨格筋の収縮による筋ポンプ作用、呼吸による胸腔内圧の変動、リンパ管自体のわずかな自発収縮、そして弁による逆流防止によって末梢から中枢へとゆっくり流れます。したがって筋運動を行うとリンパ流量は増加します。乳がん術後の腋窩リンパ節郭清後の上肢リンパ浮腫では、弾性着衣・マッサージ・運動による筋ポンプ作用の活用がケアの柱です。

まとめ

血管系では、動脈と静脈の構造の違い、肺循環における例外、血漿に含まれる凝固因子による止血機構、無対血管としての門脈、消化管・脾臓から肝臓を経由する門脈系の流れ、初回通過効果、終動脈と吻合の概念、冠動脈の走行が重要ポイントです。リンパ系では、組織間液の回収・脂肪輸送・免疫の3つの役割、胸管と右リンパ本幹の合流先、そしてポンプを持たないリンパが筋運動・呼吸・弁によって流れる仕組みを押さえておきましょう。これらの解剖知識は、心筋梗塞・肝硬変・リンパ浮腫など多くの疾患を理解する土台になります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    無対の静脈の代表で、消化管や脾臓からの静脈血を肝臓に運ぶ血管をという。

  2. 2.

    門脈は消化管で吸収された栄養素や薬物を最初に肝臓で代謝するため、全身循環に出る前に効果が減弱する。これを(ファーストパス効果)という。

  3. 3.

    肝臓は酸素豊富な動脈血を運ぶと、栄養豊富な静脈血を運ぶ門脈の二重血流支配を受ける。

  4. 4.

    門脈圧亢進症では側副血行路が発達し、食道静脈瘤や腹壁静脈怒張()などが出現する。

  5. 5.

    他の動脈との吻合をほとんど持たず、閉塞すると灌流域が梗塞に陥る動脈をという。

  6. 6.

    心筋を栄養する代表的な終動脈で、閉塞により心筋梗塞を引き起こすのはである。

  7. 7.

    リンパ系は組織間液の回収、脂肪の吸収・輸送、機能の3つの役割を持つ。

  8. 8.

    下半身と左上半身のリンパを集めて左静脈角に注ぐリンパの主幹はである。

  9. 9.

    リンパには強力なポンプがないため、骨格筋の収縮による作用や呼吸運動、弁の働きによって末梢から中枢へ流れる。

  10. 10.

    肺循環では例外的に、肺動脈にはが、肺静脈には動脈血が流れる。

  11. 11.

    血液の液体成分であるにはフィブリノゲンなどの凝固因子が含まれ、止血機構を担っている。

血管とリンパの解剖」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。