パニック障害の看護
精神看護学 / 神経症・パーソナリティ障害・その他
解説
パニック障害とは、突然理由もなく激しい不安発作に襲われ、それが繰り返し起こる不安症の一つです。今回はパニック障害の症状の特徴と治療、看護のポイントについて解説します。
パニック障害とは
パニック障害は、予期しないパニック発作を繰り返し起こす疾患です。発作では強い動悸、息苦しさ、胸痛、冷汗、手足の震え、めまい、そして「このまま死んでしまうのではないか」という強烈な恐怖感(死の恐怖)が突然出現します。発作自体は通常10分以内にピークに達し、30分ほどで自然に治まりますが、身体的な異常がないにもかかわらず本人にとっては非常につらい体験となります。
この発作を一度経験すると、「また発作が起きたらどうしよう」という強い不安が日常的に続くようになります。これを予期不安といいます。さらに、発作が起こったときに逃げられない、助けを求めにくい場所(電車、エレベーター、人混みなど)を避けるようになる回避行動も現れます。回避が広がると外出そのものが困難になる広場恐怖症を合併しやすく、生活範囲が大きく狭まる原因となります。
治療の二本柱
パニック障害の治療は、薬物療法と心理療法を組み合わせて行うのが基本です。
薬物療法
薬物療法の第一選択は、**選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)**です。SSRIは脳内のセロトニン濃度を高めることで不安症状を和らげ、発作の予防に効果を発揮します。ただし効果が安定して現れるまでに数週間かかるため、発作が頻発している急性期には、即効性のある短時間型の抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)を併用することがあります。ベンゾジアゼピン系は依存性に注意が必要で、症状が安定したら漸減していきます。
心理療法
心理療法では**認知行動療法(CBT)**が中心となります。動悸を「心臓発作だ」と破局的に解釈してしまう認知の歪みを修正する認知再構成と、避けていた場所や状況に少しずつ慣れていく段階的曝露療法(エクスポージャー)を組み合わせ、回避行動の改善を目指します。
SSRIの副作用と看護
SSRIで最も多いのは、服用開始から1〜2週間以内に出現する消化器症状(悪心、嘔吐、下痢)です。これはセロトニン5-HT3受容体への刺激によるもので、多くは一過性です。患者が「薬が合わない」と自己判断で中断しないよう、副作用が一時的であることをあらかじめ説明することが大切です。
そのほか、若年者では不安や焦燥、衝動性が一時的に強まる賦活症候群、急な中断による中止後症候群、複数のセロトニン作用薬の併用で起こるセロトニン症候群(高体温、発汗、振戦、反射亢進)にも注意が必要です。
看護のポイント
発作時は、看護師が静かに付き添い「大丈夫ですよ」と安心感を伝え、ゆっくりとした深呼吸を促します。慌てた対応は患者の不安をかえって強めるため避けます。日常の予期不安や回避行動には認知行動療法への取り組みを勧め、生活範囲を少しずつ広げていけるよう支援します。
睡眠衛生指導も重要です。入眠の1〜2時間前に38〜40℃のぬるめの湯に入浴すると、いったん上昇した深部体温が下がる過程で自然な眠気が誘発されます。規則的な起床時間、カフェインの制限、就寝前のスマートフォンなどスクリーン光の回避もあわせて指導します。
まとめ
パニック障害は、突然の身体症状と強い死の恐怖を伴う発作の反復、予期不安、回避行動を特徴とし、広場恐怖症の合併が多い疾患です。治療の中心は第一選択であるSSRIによる薬物療法と認知行動療法であり、看護では発作時の安心感の提供、SSRIの副作用に関する事前説明と継続支援、生活リズムを整える睡眠衛生指導が重要となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
パニック障害の発作では、動悸や息苦しさとともに「このまま死ぬのではないか」という強いが出現する。
- 2.
また発作が起きるのではないかという持続的な不安をという。
- 3.
パニック障害では、逃れにくい場所を避けるを合併しやすい。
- 4.
パニック障害の薬物療法の第一選択は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬であり、略称はである。
- 5.
発作が頻発する急性期には、即効性のある短時間型の系抗不安薬を併用することがある。
- 6.
認知の歪みを修正し、段階的曝露療法を組み合わせる心理療法を(CBT)という。
- 7.
SSRIの服用開始1〜2週間以内に多くみられる副作用は、悪心や下痢などのである。
- 8.
複数のセロトニン作用薬の併用で、高体温・発汗・振戦・反射亢進などが出現する状態をという。
- 9.
発作時には看護師が静かに付き添い、ゆっくりとしたを促し安心感を与える。
- 10.
入眠の1〜2時間前に38〜40℃のぬるめの湯に入浴すると、が低下する過程で自然な眠気が誘発される。
