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『また発作が起きたら…』その恐怖の正体は予期不安!パニック障害の三本柱を完全理解

看護師国家試験 第115午後115(状況設定問題)

国試問題にチャレンジ

115午後115

状況設定

Aさん(27歳、男性、会社員)は1人で暮らしている。最近、事務部門から営業部門に異動になった。新しい人間関係に慣れない仕事で、夜も気持ちが高ぶって眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ろうとしたとき、息が上がり、動悸がして、その場でパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害と診断された。主治医からは、短時間作用型の睡眠薬と抗うつ薬が処方された。また、職場の協力を得て、当面は毎朝のサポートをしてもらうことになった。受診から2日、Aさんは「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られません」とクリニックに電話があった。

Aさんの状況に対するクリニックの看護師のアセスメントで適切なのはどれか。

  1. 1.予期不安がある。
  2. 2.うつ症状が悪化している。
  3. 3.睡眠薬の持ち越し効果がある。
  4. 4.仕事に対するストレスが増している。

対話形式の解説

博士博士
今日はパニック障害について深く学ぶぞ。事例のAさんは27歳の会社員で、営業部門への異動後にエレベーターで初めてのパニック発作を起こしたのじゃ。
サクラサクラ
それで精神科を受診して、診断がついた2日後に『また発作が起きるんじゃないかと思って家から出られない』って電話してきたんですね。
博士博士
そうじゃ。この『また発作が起きるかも』という持続的な恐怖こそが、パニック障害の中核症状のひとつ、予期不安なのじゃよ。
サクラサクラ
予期不安…発作そのものじゃなくて、『起きるかもしれない』という不安のことなんですね。
博士博士
その通り。パニック障害は三本柱で理解するのが基本でな。第一にパニック発作、第二に予期不安、第三に回避行動。Aさんはすでに家から出られないという回避行動まで出始めておるのじゃ。
サクラサクラ
じゃあ選択肢2の『うつ症状の悪化』はどうですか?不眠もあるし元気もなさそうですけど。
博士博士
良い視点じゃが、うつ病の中核症状は抑うつ気分や興味喜びの喪失、自責感などじゃ。Aさんが語っておるのは『発作への恐怖』であって、抑うつ症状が前景化しているとは読めぬのう。受診からたった2日というのも根拠が弱い。
サクラサクラ
なるほど。じゃあ3の『睡眠薬の持ち越し効果』は?薬を飲み始めたばかりですよね。
博士博士
ここがひっかけポイントじゃ。処方されたのは短時間作用型の睡眠薬。これは半減期が短く、翌朝への持ち越し効果が起きにくいタイプなのじゃ。しかもAさん本人は『眠くてだるい』ではなく『発作が怖い』と訴えておる。
サクラサクラ
そうか、本人の言葉をちゃんと聴くことが大事なんですね。じゃあ4の『仕事のストレス』は?異動が引き金なんですよね。
博士博士
背景要因としては正しい。じゃが今この瞬間に看護師がアセスメントすべきは、電話で訴えられている『予期不安と回避行動』という今ここの症状じゃ。背景と現症は分けて考える必要があるのう。
サクラサクラ
わかりました!では、こういう予期不安にはどう対応していくんですか?
博士博士
まずは心理教育として『発作は怖いが命に関わらないこと』『予期不安は誰にでも起こる症状であること』を伝える。そして回避を強化しないよう、少しずつ怖い場面に取り組む段階的曝露を、認知行動療法の枠組みで支援していくのじゃ。薬物療法ではSSRIが第一選択じゃな。
サクラサクラ
Aさんの家から出られないという状態を放置すると、どうなりますか?
博士博士
回避がどんどん広がって『広場恐怖症』へ進展する危険があるのじゃ。電車、人混み、エレベーター…逃げにくい場所がすべて恐怖の対象になり、生活機能が著しく低下してしまう。だからこそ早期介入が重要なのじゃよ。
サクラサクラ
だからこの問題でも『予期不安がある』とアセスメントすることが、その後の支援につながる第一歩なんですね。
博士博士
その通りじゃ。アセスメントは単なる分類ではなく、次の看護介入への扉なのじゃ。本人の言葉を丁寧に聴き、症状の構造を理解する力こそが精神看護の基本といえるのう。

POINT

パニック障害の患者が『また発作が起きるかもしれない』と恐れて外出できない状況を、どのアセスメント概念で捉えるかを問う問題。発作・予期不安・回避行動という三本柱を理解しているかがカギ。

解答・解説

正解は1です

問題文:Aさんの状況に対するクリニックの看護師のアセスメントで適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。Aさんは初回のパニック発作後、「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られません」と訴えています。これはパニック障害の中核症状の一つである『予期不安』そのものです。予期不安とは、一度経験したパニック発作が再び起こることへの持続的な強い恐怖や心配を指し、発作のない時期でも患者を苦しめます。さらに、その不安によって発作が起こりそうな場所や状況を避ける『回避行動』が連鎖的に生じやすく、Aさんが家から出られないこともこの回避行動の現れと考えられます。パニック障害の臨床像は『パニック発作』『予期不安』『回避行動(広場恐怖を含む)』の三本柱で理解するのが基本であり、本事例はその典型例といえます。

選択肢考察

  1. 1.  予期不安がある。

    Aさんは「また発作が起きるのではないか」と明確に再発作への恐怖を語っており、その結果として外出ができないという回避行動も伴っている。これはパニック障害における予期不安の典型的な表現であり、本事例のアセスメントとして最も妥当である。

  2. ×2.  うつ症状が悪化している。

    抑うつ気分、興味喜びの喪失、自責感、希死念慮などのうつ病の中核症状は語られておらず、Aさんの訴えはあくまで『発作の再来への恐怖』に焦点化されている。受診からわずか2日であり、うつ症状の悪化と判断する根拠は乏しい。

  3. ×3.  睡眠薬の持ち越し効果がある。

    処方されたのは短時間作用型の睡眠薬で、翌朝への持ち越し(眠気・ふらつき・倦怠感)が起こりにくいタイプである。Aさんも眠気ではなく『発作への不安』を理由として家から出られないと述べており、持ち越し効果を主因とするのは不適切。

  4. ×4.  仕事に対するストレスが増している。

    異動や新しい人間関係は発症の背景要因として確かに存在するが、電話時点でAさん自身が訴えているのは仕事のストレスではなく『また発作が起きる恐怖で外出できない』という症状である。現時点で看護師が優先的に把握すべき情報は予期不安と回避行動である。

パニック障害の三大要素は、(1)パニック発作(突然の強い恐怖とともに動悸、息切れ、発汗、めまい、死の恐怖などが10分以内にピークに達する)、(2)予期不安(また発作が起こるのではという持続的不安)、(3)回避行動(発作が起きた場所や逃げにくい状況を避ける行動)である。回避が広がり外出困難になった状態は『広場恐怖症』と呼ばれ、生活機能を大きく損なう。治療はSSRIなどの抗うつ薬による薬物療法と、認知行動療法(特に曝露療法)が中心で、看護師は症状の心理教育、服薬支援、回避行動を強化しない関わり、具体的な対処スキル獲得の支援を行う。

パニック障害の患者が『また発作が起きるかもしれない』と恐れて外出できない状況を、どのアセスメント概念で捉えるかを問う問題。発作・予期不安・回避行動という三本柱を理解しているかがカギ。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。