眠れないときこそベッドから出よう!刺激制御法で取り戻す自然な眠り
看護師国家試験 第115回 午後 第117問(状況設定問題)
国試問題にチャレンジ
状況設定
Aさん(27歳、男性、会社員)は1人で暮らしている。最近、事務部門から営業部門に異動になった。新しい人間関係に慣れない仕事で、夜も気持ちが高ぶって眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ろうとしたとき、息が上がり、動悸がして、その場でパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害と診断された。主治医からは、短時間作用型の睡眠薬と抗うつ薬が処方された。また、職場の協力を得て、当面は毎朝のサポートをしてもらうことになった。受診から2日、Aさんは「また発作が起きるのではないかと考えてしまい、家から出られません」とクリニックに電話があった。
Aさんのパニック発作は消失し、不眠も改善したため、睡眠薬の服用は終了となった。Aさんは「もともと手足が冷えて寝つきが悪かったから、睡眠薬がなくなることが心配です。自分で工夫できることはあるでしょうか」と看護師に尋ねた。看護師が以前の睡眠状況を尋ねると、睡眠時間は23時から6時までの7時間であった。 Aさんの睡眠へのセルフケアに対する看護師の指導で適切なのはどれか。
- 1.「休日は昼まで寝るようにしましょう」
- 2.「帰宅後に短時間の睡眠をとりましょう」
- 3.「寝る前に熱めの入浴に入ると良いですよ」
- 4.「眠くなってからベッドに横になると良いですよ」
対話形式の解説
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラ
博士
サクラPOINT
睡眠薬の中止後に、不眠の再燃を心配する患者へのセルフケア指導として、睡眠衛生のどの原則を伝えるかを問う問題。Aさんの睡眠時間は十分(7時間)であり、量ではなく入眠の質を整える刺激制御法の考え方(眠気が来てから就床する)が選択のカギとなる。
解答・解説
正解は4です
問題文:Aさんのパニック発作は消失し、不眠も改善したため、睡眠薬の服用は終了となった。Aさんは「もともと手足が冷えて寝つきが悪かったから、睡眠薬がなくなることが心配です。自分で工夫できることはあるでしょうか」と看護師に尋ねた。看護師が以前の睡眠状況を尋ねると、睡眠時間は23時から6時までの7時間であった。 Aさんの睡眠へのセルフケアに対する看護師の指導で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんはパニック発作と不眠がともに改善し、睡眠薬を中止したばかりの段階にあります。もともと寝つきが悪かったという背景もあり、本人は再び眠れなくなることを心配しています。この場面では、薬に頼らずに眠るための行動的な工夫、すなわち睡眠衛生指導を行うことが看護師の役割となります。なかでも「眠くなってからベッドに横になる」という助言は、認知行動療法の中で用いられる刺激制御法(stimulus control therapy)の中心的な原則です。眠れないままベッドの中で時間を過ごすと、脳が「ベッド=眠れない場所」「ベッド=考えごとをする場所」と学習してしまい、慢性不眠を強化することが知られています。眠気を感じてから床に就くようにすることで、寝床と眠りの結びつきを再学習させ、入眠潜時の短縮が期待できます。Aさんの睡眠時間は7時間確保されており、量的な不足はないため、入眠の質を整える助言が最も適切です。
選択肢考察
- ×1. 「休日は昼まで寝るようにしましょう」
休日の長時間睡眠(寝だめ)は、起床時刻のずれを生み、体内時計(概日リズム)を後ろにずらしてしまいます。月曜の朝に強い眠気や入眠困難が生じる「ソーシャル・ジェットラグ」の原因となり、平日の不眠を悪化させる可能性があります。睡眠衛生では、休日も起床時刻を平日と大きく変えないことが基本原則です。
- ×2. 「帰宅後に短時間の睡眠をとりましょう」
夕方以降の仮眠は、夜間の睡眠圧(眠気を生み出すアデノシンの蓄積)を低下させ、本来の就寝時刻に眠れなくなる原因となります。とくに寝つきの悪さを訴えている人には不向きです。仮眠を取り入れる場合でも、午後3時までに20〜30分以内に留めるのが原則とされています。
- ×3. 「寝る前に熱めの入浴に入ると良いですよ」
42℃以上の熱い湯は交感神経を刺激し、深部体温を上げすぎて覚醒を高めてしまうため、就寝直前の入浴としては適切ではありません。眠りに入るときは深部体温が下がる必要があり、就寝の1〜2時間前に38〜40℃程度のぬるめの湯に浸かることで、入浴後の体温低下に合わせてスムーズに入眠できるとされています。
- ○4. 「眠くなってからベッドに横になると良いですよ」
刺激制御法の基本原則であり、不眠に対する非薬物療法として有効性が確立されています。眠くないのに早く床に就くと、ベッドの上で考えごとをしたり時計を気にしたりして、かえって覚醒度が上がります。眠気を感じてから就床することで、寝床=眠る場所という条件づけを取り戻すことができ、Aさんのように寝つきの悪さに不安を持つ人に適した助言です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、(1)毎日同じ時刻に起きる、(2)寝床に入るのは眠くなってから、(3)就寝前のカフェイン・アルコール・喫煙を避ける、(4)就寝1〜2時間前のぬるめの入浴、(5)朝の光を浴びる、(6)日中の適度な運動、(7)寝室を暗く静かに保つ、などが推奨されています。手足の冷えで寝つきが悪い人には、就寝前に足を温める(足浴・靴下ではなくレッグウォーマー)と末梢血流が増えて熱放散が進み、深部体温が下がりやすくなるため入眠が促されます。また、パニック障害の患者では、夜間に「また発作が起きたら」という不安が覚醒を高めることがあるため、呼吸法やリラクセーションを併用するのも有効です。
睡眠薬の中止後に、不眠の再燃を心配する患者へのセルフケア指導として、睡眠衛生のどの原則を伝えるかを問う問題。Aさんの睡眠時間は十分(7時間)であり、量ではなく入眠の質を整える刺激制御法の考え方(眠気が来てから就床する)が選択のカギとなる。
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